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日本代表監督リレーインタビュー 第6回 U-17日本女子代表 狩野倫久監督「人生は一度きり。思ったことを全力でトライ」
2020年05月04日
日本代表チームは新型コロナウイルスの感染拡大防止のために多くのサッカーやスポーツの現場同様に活動の自粛を余儀なくされています。選手の皆さんと同様にStay homeを続ける各カテゴリーの代表監督に今回はサッカーに対する思いや、苦難を乗り切ってきた経験、夢の大切さなど、話を聞きました。
第6回はU-17日本女子代表 狩野倫久監督です。
いつも身近に憧れる存在がいた
小学校に入った頃に何かスポーツがやりたいと思っていて、ある週末に父親と野球の体験練習を見に行こうという話になりました。その道中で友達に遭遇し、その友達がサッカーをやっていて、それじゃ自分も体験してみようと足を運んだのがサッカーを始めたきっかけです。
中学、高校で所属していた枚方FCの先輩には、元日本代表の佐々木博和さん、モンテディオ山形の石丸清隆監督、ヴェルディ川崎などでプレーしていた廣長優志さんがいて、身近に憧れとなる上手な先輩たちがいました。その先輩たちが入り口となり、自分ももっとうまくなりたい、プロサッカー選手になりたい、という思いが強くなりました。
「人生は一度きり」ブラジル行きを後押ししてくれた先生
所属していた枚方FCは、選手の発想力やパーソナリティを尊重してくれる自由なスタイルのクラブで、多感な中学・高校という時期に自分が考えていることをトライさせてくれる環境でした。やらされている、という感覚はなく、例えば雨が降ってグラウンドが使えなくなった時、その時の監督が自分の車のライトを照らして、公園でチームが練習したこともありました。練習するぞ、と行くのではなく、自然とみんながそこに行きたがるような雰囲気だったと思います。自分で考えて、何でもトライする環境を作ってくれたこと、サッカーを大好きにさせてくれたことを、当時の指導者の方々、枚方FCには感謝しています。
高校2年の時にJリーグが開幕し、高校3年の秋に清水エスパルスの練習に参加しましたが、残念ながら加入するまでには至りませんでした。そこで、自分自身本当に何がやりたいのか、何に挑戦したいのか改めて考える機会となり、自問自答しました。その中で、もっと世界でもチャレンジしたい、という思いが強くなり、高校卒業後はブラジルでプレーすることを考えました。自分がブラジルに渡るときに、甘くはないぞという周りの反対意見も多くあった中で、中学3年のときの担任の先生が「人生は一度きり。自分の思ったことを全力でトライしてみなさい」「今を生きなさい」と、自分の考えていることを力強く後押ししてくれました。
「ブラジル人より、全面に闘志を出すプレー」で認められる
1年の間に選手契約が出来なければやめて違う道に進もうと考え、高校を卒業して覚悟を決めてブラジルに渡りました。最初はお金がなくて、毎日練習場まで50分の道のりを歩いて往復。次第に練習の行き帰りを共にする仲間もでき、元ブラジル代表のロッキ・ジュニオールなどと一緒にプレーするようになりました。ブラジルに行って半年で、パルメイラスのU-20チームに加入し、試合に出場することができました。当時、トップチームには元ブラジル代表のカフー、リバウドが在籍し、彼らと一緒にトレーニングすることができたのは自分にとっての財産です。パルメイラスのU-20加入が正式に決まった日の紅白戦では同じチームの右サイドバックにカフー、自分は左のウイングでプレー(FWは小学生以来で、いつもはボランチかサイドバックとしてプレー)し、慣れないポジションでのプレーでしたがとにかくがむしゃらにプレーしていたこと、そして調子が良かったことを覚えています。
ポルトガル語を習得することは簡単ではありませんでしたが、中学、高校と英語の成績はよかったのと、渡航する前から準備をしていたので、語学の習得が得意であったことは生活に役に立ちました。渡航して半年で試合に出られるようになって、上手いプレーヤーではありませんでしたし、常に雑草魂で、ブラジル人よりも闘志を全面に出して、練習・試合ともに常に全力を出す姿勢が認められたり、チームの中で持久力が一番あって走ることが出来たことで、試合に出られるようになりました。パルメイラスのU-20チームから、オザスコFCでプロ契約を結びサンパウロ州選手権に出場するなど、トータル4年近くブラジルでプレーしました。
選手兼コーチから指導者の道に
自分自身、日本でプレーしたいという思いがあったので、当時JFLの佐川急便に加入しました。日々、Jリーグを目指してやっていくなかで、年齢を重ねるごとに次の道を考えだしたときに、現役の最後の年は選手でありながらコーチとしてベンチに入ることがありました。その時の監督を務めていたのが現在ナショナルトレセンコーチの遠藤善主さん、コーチはJ3ヴァンラーレ八戸で監督の中口雅史さんで、そういった方々の後押しもあり、指導者の道に進むことになりました。
男子の育成年代を見ていたときに、男女関係なくベースを上げていくために、女子の指導にも力を貸してほしいということでお話をいただき、女子の指導者を始めることになりました。
情熱と野心を持ってU-17女子ワールドカップへ
育成年代は、すぐに結果が出るわけではありませんが、変化や成長を間近に感じながら、一緒になって作っていくというところに指導する魅力を感じています。選手個々のストロングポイントを引き出し、能力を最大限にのばして、次のカテゴリーに送るということをいつも考えています。そして特に、「チームを勝たせることのできる指導者になりたい」と思っています。勝つことで選手たちの自信にも繋がり、成長します。細かく言えば、どんな大会でも決勝(ファイナル)に進むことを常に考えています。どんな小さな大会でも決勝という舞台は特別で緊張感があり、プレッシャーのかかる試合。そういった試合を経験することによって、選手たちの成長は一気に加速していくと思います。U-17の女子ワールドカップでは、情熱と野心を持って臨んでいきたいです。
フィジカルを伸ばすことで、日本の女子サッカーはさらに発展する
日本の女子サッカーが再び世界の頂点に立つためには、世界でも通用する個の能力を引き出していくことが必要だと考えています。その中でもフィジカルに関してはポテンシャルが高く伸びしろがあると思っています。個人競技のマラソン、パワーを要する柔道やレスリング、俊敏性が求められる卓球やバトミントンなどの競技においても、日本の女性アスリートは世界において活躍しています。フィジカルを伸ばすことで、日本の女子サッカーの幅、プレースタイルの幅も広がっていく。育成年代からフィジカルの部分を積み上げていきたいと思います。
多くの出会いが多くの学びになり、成長につながる
自分自身にとってはサッカーを通じて、色んな人と出会うことができました。多くの人との出会いが多くの学びになり、成長につながった。今の育成年代の選手たちには、自分で考えて、どんどんトライして、失敗を恐れずにチャレンジし、うまくいかないことがあっても何度もまたチャレンジしてほしいと思います。今はぐっと我慢しながらも、次、みんなでサッカーを楽しく、喜びを持ってできるような日を待って、思いを爆発させて、力に変えていきましょう。
明日は、男子で同じアンダーカテゴリー代表を率いるU-16日本代表の森山佳郎監督の登場です。
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