レポート:2024年5月12日
サッカーを通して被災地の子どもたちに笑顔と夢を届けたい
日本サッカー協会(JFA)とパートナー企業は6月1日、高円宮記念JFA夢フィールドに能登半島地震で被災した地域の小学生チームを招待し、「夢キャンプ 2024 with SAMURAI BLUE」を開催した。イベントには70人の子どもたちとSAMURAI BLUE(日本代表)の選手6人も参加し、青空の下、サッカーで楽しく汗を流した。
被災地に寄り添った継続したサポートを
能登半島地震で被災した人々を支援するため、JFAは4月、JFA Partnership Project for DREAMの参画企業と共に「JFA Partnership Project for NOTO」をスタートさせた。
夢キャンプに参加したSAMURAI BLUEの選手たち。「全力で一緒に楽しみましょう」「僕も本気でいくのでみんなも本気できてください」と意気込み
5月12日には石川県能登町で、初の取り組みとなる「JFA・キリン ビッグスマイルフィールド in 能登町」を開催。これはJFAオフィシャルトップパートナーのキリンホールディングス株式会社との協働によるもので、地元の子どもから高齢者まで多くの人々が参加し、ウォーキングフットボールで汗を流した。そして、5月24日には、高円宮記念JFA夢フィールド(千葉県千葉市)に被災地の小学生チームを招待し、「夢キャンプ 2024 with SAMURAI BLUE」を開催することも決まった。
声を掛けて子どもたちを盛り上げる橋岡選手。子どもたちとの時間を楽しんだ
能登半島地震の被災地では、これまでサッカー活動に使われていたグラウンドやフットボール施設の多くが、隆起したり、陥没したりするほか、仮設住宅が設置されるなどして使うことができない状態になっている。また、避難や転居に伴ってチームからメンバーが離れてしまったり、練習をするために遠くまで足を運ばなければならなかったりとサッカー活動に大きな支障が出ている。
鈴木選手は「子どもたちとプレーできて自分自身もリフレッシュできた。楽しんでいる姿を見られてよかった」とコメント
そういった状況でも、サッカーへの情熱や意欲を絶やさず、「サッカーの力で前向きな気持ちになってほしい」「SAMURAI BLUEの選手たちと一緒に思いっきりサッカーを楽しんでもらいたい」というJFAとパートナー企業の思いから今回の招待イベントを企画。そして、その思いにSAMURAI BLUEの選手たちも応え、このイベントが実現した。
子どもたちと声を掛け合い、協力してゲームに臨む町田選手
開催に伴う費用をはじめ、備品の手配、移動や宿泊、当日の運営・情報発信など、さまざまな形でJFAとパートナー企業が連携し、参加者のサポートに当たった。
本気でサッカーを楽しむ特別な時間を忘れない
晴天に恵まれたイベント当日、夢フィールドには70人の子どもたちが集まった。チームの関係者や保護者もピッチサイドで子どもたちを見守る。
進行役は、元サッカー日本代表で、能登で復興支援に取り組んでいる巻誠一郎さん(JFA防災・復興支援委員会前委員長)とフリーアナウンサーの日々野真理さんが務め、JFAコーチの仲野浩さんと四方菜穂さんがイベントをサポートした。子どもたちの前に立った巻さんは「このきれいなピッチで、SAMURAI BLUEの選手と一緒に、目いっぱい楽しく、元気にプレーしてください。そして、選手にいろいろなことを質問してみましょう。何よりもまずは楽しんでください」と投げかけた。
森保監督もサプライズで登場。参加チームのスタッフや保護者と歓談するシーンも見られた
宮本恒靖JFA会長もあいさつに立ち、「代表選手とプレーする中で何かを感じてほしい。代表選手をいろいろと観察して、自分の力やプレーに変えてほしい」とエールを送った。この日、クラブハウスにSAMURAI BLUEの森保一監督が来ており、呼び掛けに応じて森保監督がサプライズで登場。その後、ゲストとして6人のSAMURAI BLUEの選手が入場すると、子どもたちはさらにヒートアップし、大きな歓声と拍手が沸き起こった。
「簡単に負けちゃいけないという思いはあった」と谷口選手。夢を与える存在として“魅せる”プレーも要所で発揮
最初は緊張の面持ちだった子どもたちも、アイスブレイクとウオーミングアップを通して選手らと心を通わせ距離を縮めていく。その後、1・2年生、3・4年生、5・6年生と学年に分かれて試合を実施。代表選手たちも子どもたちに交じって、真剣モードでプレーし、子どもたちも真剣な眼差しでサッカーを楽しんだ。イベントの最後には、選手と会話する時間が設けられ、子どもたちは用意した質問を代表選手にぶつけ、選手たちも一つ一つに丁寧に応えた。
代表チームもトレーニングをする天然芝のピッチで思い切りサッカーを楽しむ子どもたち(写真奥は橋岡選手)
約2時間のイベントではあったが、代表選手と濃密な時間を過ごした子どもたち。輪島サッカークラブの舩板優愛さん(小学6年生)は「代表選手といろいろなことを話した。久しぶりにみんなと練習や試合をすることができて、とても楽しかった」と笑顔で話してくれた。
イベントの最後には選手への質問タイムも。和気あいあいとした雰囲気の中でたくさんの笑顔が見られた(写真は相馬選手)
それぞれに充実した表情をのぞかせ、特別な思い出を得たようだった。
苦しいとき困ったとき、今日のことを思い出して
サッカーで汗を流した後は“日本代表カレー”で運動後の空腹を満たし、クロージング。「今日経験したことは必ず子どもたちの心に刻まれると思う」と巻さん。最後のあいさつで巻さんは子どもたちにこう伝えた。
「代表の試合もそうだけど、サッカーは同じシーンがない。対戦相手も会場も、味方の選手も、来るパスもいろいろなことが毎回違う。でもみんな一生懸命に練習する。それは自分が苦しいとき、困ったときに普段練習したことが出るから。今日、ここでみんなはたくさんのことを学んだと思う。ここに来て得た経験を忘れないでいてほしい。自分が苦しいとき、困ったときに生かしてほしい。僕が熊本で地震に遭ったとき、石川や能登の人たち、そして全国のいろいろな人が助けに来てくれた。だから僕はみんなが苦しいとき、困っているとき、一緒に何かをしたいと思っている。今度からはみんなも困っている人や苦しんでいる人、泣いている人がいたら手を差し伸べてあげてほしい」
巻さんは最後に「みんなも楽しかったと思うけど、みんなの笑顔を見て僕たち大人も幸せな気持ちになった。
だから今日はみんなにありがとうと伝えたい」と子どもたちに言葉を送った
この言葉に子どもたちは力強く返事をしていた。復興への道のりはまだ道半ばだ。JFAとパートナー企業は、今後も子どもたちの夢を育むため、少しでも被災地の人々に笑顔と元気を届けるため活動を続けていく。