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【心をひとつに~能登半島復興へ】第1回「僕たちは能登の人々と共に戦う」ツエーゲン金沢・廣井友信クラブキャプテン
2024年12月26日
ツエーゲン金沢で2015年から2022年までプレーし、2023年から「クラブキャプテン」を務めている廣井友信さん。ファン・サポーターやパートナー企業、行政などをはじめ、クラブや選手の間に入って関わりながらクラブ内外での円滑なコミュニケーションと関係づくりに尽力されています。ホームタウンである能登半島への思い、クラブの復興支援活動について聞きました。
※このインタビューは2024年12月3日に実施しました。
「ONE HEART!石川」を合言葉に今できることを
――1月1日に能登半島地震が発生したときのことをお聞かせください。
廣井 僕は実家のある関東にいました。SAMURAI BLUE(日本代表)の試合をテレビで見た後に地震があり、石川では震度7と知ってとても心配していました。クラブとも連絡を取りながらこのタイミングで石川に帰ることが正しいのかどうか、情報を集めながら検討し、2日後くらいに家族と一緒に石川に帰りました。
――ツエーゲン金沢は「ONE HEART!石川」を合言葉に復興支援活動をされています。
廣井 当初はクラブとして何をどう動けばいいのか、少し途方に暮れていたというのが正直なところです。それでも、できることからやろうと合言葉を作り、1月13日と14日には白山市のショッピングモールで選手全員が参加して募金活動とチャリティータオルの販売を行いました。その他にもチャリティークラウドファンディングをしたり、サポーターからも支援物資を募って現地に届けたり、2024シーズンは開幕戦から選手が着用するユニフォームにも「ONE HEART!石川」のロゴをプリントしてその思いを胸に戦ってきました。
2024シーズンは選手のユニフォーム左袖に「ONE HEART!石川」をプリント。この言葉を背負って戦ってきた
――被災地にも行かれたのですか。
廣井 2月19日に初めて行くことできました。クラブのウェアサプライヤーであるエスエスケイ(hummel)さんと共に輪島市を訪問し、防寒着などの義援物資を寄贈し、株式会社コーシンさんからもキリンビバレッジさんの製品をご提供いただいて一緒に寄贈しました。2月からはJFAと日本財団HEROsが中心となってアスリート訪問なども行っていましたので、僕もそこに参加させてもらっています。
――現地の状況は?
廣井 輪島市に行くまでの主要道路や里山街道はぐちゃぐちゃになっていて、まずその光景に衝撃を受けましたし、火災のあった朝市通りを見たときには「これは本当に現実なのか」と。この被害の中で自分たちにできることなんてあるだろうかと無力感を覚えるほどでした。被災地の人たちを助けたい、でもどうしたらいいんだろうとずっと頭の中がぐるぐるしていましたね。
――アスリート訪問やサッカー教室など現地の人々と触れ合う中でどのような思いを抱かれていますか。
廣井 怖くて苦しくて悲しい思いをたくさんした子どもたちに、一瞬でも笑顔になってもらいたいと思っています。サッカーやスポーツを通して、少しでも前向きになれる時間を持ってもらいたい。ですから、僕自身も強い気持ちで、全力で子どもたちと向き合っています。
あとは、僕たちが現地に訪問して活動ができるのは、学校の先生や自治体の皆さんなど調整してくださる方がいるおかげです。自分たちも大変な思いをしているのに子どもたちのために動いている皆さんの気持ちを思うと、誠実に接しなければならないと感じます。
5月13日にはクラブ全員で被災地へ。
4グル-プに分かれて避難所や老人ホーム、小・中学校を訪問し、被災地の人々と交流を図った
――大人もきっといろいろな思いを抱えているはずです。
廣井 皆さん、それを表に出さないんですよね。謙虚で奥ゆかしい方が多くて…。だから先生や周りにいる大人の皆さんにも声を掛けて子どもたちと一緒に体を動かしてもらって、笑顔になってもらえる時間を意図的につくるようにしています。
トップチームの選手もアカデミーの選手も被災地で支援活動
――5月13日には、トップチームの全選手とスタッフ、アカデミースタッフ、フロントスタッフで被災地を訪問されました(詳細はこちら)。全員で行く、という背景にはどのような思いがあったのですか。
廣井 ツエーゲン金沢は石川県全体をホームタウンとするJクラブです。能登のためにみんなで戦うという意味でも、自分たちのホームタウンに何が起こっているのか自分の目でしっかり見て、体感する必要があると思っていました。それによって、口先だけではなく心から「この町のために戦う」という強い気持ちを持てるんだと。訪問後も選手ミーティングを実施して、クラブや個人として何ができるのかを話し合いました。
5月13日に被災地を訪問後は選手ミーティングを行い、
それぞれが感じたことやクラブや個人にできることを話し合った
――9月には記録的豪雨によってさらなる被害が…。
廣井 土砂撤去作業の手伝いに現地へ行きましたが、水害はひどいものでした。1月の震災からようやく顔が上がってきた中での出来事でしたから、被災地の皆さんのダメージは本当に大きくて「心が折れた」という方が多くいらっしゃいました。サポーターの有志も募って土砂や流木などの撤去作業を行っていますが、果てしない作業です。
――アカデミーの選手たちも輪島市の土砂撤去ボランティアに参加しています(詳細はこちら)。
廣井 僕はアカデミーの選手たちと一緒に行けなかったのですが、全身泥まみれになりながらとても前向きに取り組んでいたと聞いています。彼らの若いエネルギーは、被災地にもポジティブな力をもたらしてくれると思います。
――アカデミーの選手にとっても大切な経験になるでしょうか。
廣井 そうですね。何かしたことへの対価を求めるのではなく、人の心に寄り添って、人のために動くという経験は、サッカー選手の前に一人の人間として成長する上でとても大切なものです。これから彼らが生きていく上でも、いま経験していることから何か大切なものを感じて学び取ってくれていたらいいなと思います。
ツエーゲン金沢U-18の選手たちも輪島市内の土砂撤去ボランティアに参加。
外だけでなく、住宅の中で流れ込んだ土を撤去した
大切な場所を守るため、風化させないよう取り組んでいく
――廣井さんは東京都のご出身です。石川県はご自身にとってどんな場所ですか。
廣井 30歳で戦力外通告を受けたとき、必要としてくれたのがツエーゲン金沢でした。キャプテンを6年間させてもらい、在籍した8年間で人間的にも大きく成長させていただきました。キャプテンとして人前で話すことも多かったですし、僕自身はサポーターの皆さんと心を通わせ、最後は一緒にプレーできたと思っています。ここまでの強い繋がりを感じてプレーできたことは選手冥利に尽きます。
ツエーゲン金沢も、ホームタウンの皆さんも、そしてこの町も、僕にとってはかけがえのない存在です。食は美味しいですし、歴史もあって、海や川も近くて、空気もきれいで、最高の場所です。
――能登にも行かれていたのですか。
廣井 家族とキャンプに行ったり、珠洲市には奥能登国際芸術祭の開催に合わせて遊びに行ったりもしていました。本当に素晴らしい場所なんです。だからこそ、今の状況がつらいですね。
――復興支援活動は続いていきます。クラブとして大切にしていきたいことをお聞かせください。
廣井 5年、10年スパンで継続的に取り組むことが大事です。風化させないためにも、特に“発信”は力を入れなければならないと感じます。そして、毎シーズン、新しい選手が入ってきますので、クラブ内でも風化させないよう新加入選手にも伝えていかなければなりません。既存の選手を含めて、定期的にクラブの姿勢を確認すること、選手が被災地を訪問する機会も継続してつくっていく考えです。
――全国のサッカーファミリーに伝えたいことはありますか。
廣井 水害もあって被災地は人手が足りていません。まだまだ土砂や泥が被った状態の所はたくさんあります。きれいにしなければ、作物も育てられない。能登は厳しい状況にあることを知っていただき、ゆとりのある方には、物資の支援やボランティア活動など心を寄せてくださったらうれしいです。
ツエーゲン金沢でプレーした8年間でサポーターやホームタウンの人々との強い心のつながりができた。
「大切な場所であり、大切な人々」と廣井さん
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