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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第19回 山﨑茂雄 東ティモールU-21, U-19代表監督
2016年08月12日
アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第19回は、東ティモールサッカー連盟(FFTL)でU-19代表監督を務める山﨑茂雄氏のレポートです。
東ティモールでの暮らし
私の自宅があるエリアはポルトガル人や日本人が住んでいる静かなところです。近くには職場であるFFTL、スーパーマーケットやカフェなどもあり、少し足を延ばせば日本食も食べられます。ある日海沿いの小さな青果屋でトマトを買った時、10歳くらいの子供が「コーチ!」と、ミニバナナをプレゼントしてくれました。FFTLのサッカースクールで私の顔を覚えていたようで、とても暖かい気持ちになりました。
国民の代表チームへの関心は非常に高いです。A代表やU-19代表のトレーニングは一般の方々が毎日見に来ます。一昨年首都ディリで行われたワールドカップ予選では、観客がスタンドのみならずフェンスや照明塔に登って観戦していたそうです。先月欧州選手権(ユーロ)が開催されている間、ポルトガル※が試合に勝った翌朝は必ず街中が歓喜で大騒ぎとなり、決勝前日には在東ティモール日本国大使館から在留邦人宛に注意喚起のメールが配信されたほどです。
※東ティモールはかつてポルトガル領だった
東ティモールのサッカーについて
ストロングポイントは、フィジカル的なスピードや俊敏性、ボールコントロールの柔らかさです。そして時間がかかりますが、こちらの要求に全力で答えようとしてくれます。選手達はみんな楽天的で、トレーニングの後はいつも笑顔です。一方、課題は基本的な技術や判断の習熟度が低いこと、そして自分たちのストロングポイントをゲームで活かしきれていないこと。これには、食生活・居住・教育など、周りの環境がサッカーに影響を及ぼしているのかもしれません。
自分が指導を初めてから、周囲を見てプレーをする意識が育ち、選手たちのポジショニングに変化が出てきました。攻撃では相手ディフェンダーとの間にポジションをとり有効なスペースでタイミングよくボールを受けること、守備では、カバーリングポジションから狙ってボールを奪いに行く、といったプレーが見られるようになりました。今では、ボールを置く位置や、サポートの角度、危険なスペースを埋めるなど、細かな部分の理解者も増えています。
「Liga Futebol Amadora」開幕の影響
今年、東ティモール初のリーグ「Liga Futebol Amadora」が開幕しました。アマチュアながらも、クラブは毎日トレーニングを行い、報酬を受け取る選手もいます。リーガは7月末で終了しましたがすでに選手の移籍報道もあり、来シーズンに向けて選手達のモチベーションも高まるなど、サッカー界に大きな変化を与えています。観客も多い時には一試合1000人を優に超え、かなり激しい応援をしています。
リーガ開幕により、年間スケジュールが昨年までとは大きく変わりました。直面した問題は、代表活動との調整を行う組織がないこと。そして、ほとんどのクラブにはオフィスが存在せずFFTLからの招集レターが確実にクラブに届かないこと。この影響により選手が集まらず、今年の代表活動がなかなか開始できませんでした。対策として、FFTLより各クラブへ選手派遣の再要請、更に、私が自らクラブへ出向き、関係者に直接活動内容とスケジュールを説明して同意と協力を要請しました。また、リーガのアレックス社長が、急遽スタジアム内で各クラブの社長達を集めて代表活動の内容について周知を図ってくれたこともあり、関係者の皆さんは代表の活動に協力的です。
実際に代表選手は数名しか集まらない日も多くありましたが、クラブの社長やコーチ陣が「代表から戻ってきた時の選手のパフォーマンスが向上している」という認識を持つようになると、リーガでのパフォーマンスとチーム順位が連動して上がり、代表チームの練習参加者が徐々に増加しています。
AFF U-19選手権に向けて
ASEAN諸国が参加するAFF U-19選手権が9月にベトナムで開催されます。東ティモールは、ベトナム・マレーシア・シンガポール・フィリピンと同組で、目標はグループステージを突破して決勝トーナメントへ進出することです。相手そして自分たちの力を把握し落ち着いてプレーをすること、攻守の関わりを大切にし、戦い方と質を追求して勝利を目指します。
この大会の初戦は9月11日ですが、A代表が参加するAFCアジアカップ2019予選プレーオフの第一戦も直前の9月6日に行われます。U-19代表からは現在6名の中心選手がA代表にも選ばれているため、A代表のファビオ監督と連携して両代表チームの活動計画を決めています。私はU-19代表チームの精神的なまとまりをいかに作っていくかがとても重要と考えているので、ファビオ監督とほぼ毎日顔を合わせて練習内容や選手起用まで多くのコミュニケーションをとっています。
日本人指導者達によるレガシー
東ティモールでは何年も継続して日本人指導者が赴任しています。彼らがこの国で築いてきたものは「信頼」です。ロジカルで良い指導を行うこと、サッカーに対して規律があり真面目であるパーソナリティー。この二つが大きな実績でありレガシーであると感じます。手を抜かず誠実に向き合い、今までの指導者の方が築いてこられた個に対する基礎的な部分を礎に、グループやチームなどの「関わるプレー」のボリュームを積み上げていればと考えています。
今では、東ティモールの多くの方々とコミュニケーションをとることができるようになってきました。物事の進むスピードが日本とは違うので、FFTL事務局の方々とは常にコミュニケーションをとることを心掛けています。現状を踏まえてアドバイスをくれたり、前任の古賀琢磨氏から継続してサポートして下さっている人達がいるのも心強い「レガシー」です。
JFA公認海外派遣指導者
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