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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第10回 乗松隆史 ベトナム女子代表監督
2015年10月16日
アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第10回は、ベトナムで女子代表監督を務める乗松隆史氏のレポートです。
リオ五輪女子アジア最終予選進出までの道のり
2016年のリオ五輪を目指す女子アジア2次予選が先月ミャンマーで行われ、チャイニーズ・タイペイ、ヨルダン、ミャンマー、タイ、そしてベトナムの計5カ国で争った結果、1位となったベトナムが最終予選への進出を決めました。今年最大の目標を成し遂げることができ、今は充実感でいっぱいです。赴任以来、この目標達成に向けてあらゆる準備を行ってきました。私と同じくJFAから派遣されている柳楽正幸チャイニーズ・タイペイ女子代表監督に代表を率いてベトナム遠征に来ていただいたこと、また日本での合宿を実現するため各所との調整に奔走し、JFAの協力も得て実現にこぎつけたのもその一部です。チーム作りとしては、ハードな日程の予選でもバテないフィジカル強化、そして「効果的」をキーワードに、ベトナム選手の特色を活かした攻守の戦術徹底を目指しました。
自分自身初めての「代表監督」就任でしたので、最初は強い責任感を感じながら仕事を行っていましたが、選手一人一人に焦点を当てて指導していくうちに、今まで日本で行ってきた指導内容と重なることが多いことに気づきました。もちろん、国の代表チームを率いる責任や選手たちのキャリアを左右する立場であることは常に意識しています。重要な舞台で結果を残すために必要な準備をタイムリーに進めるため、細かい調整を数多く積み重ねてきました。関係者全員にその意図を理解してもらう事は重要なポイントですが、海外では日本と同様には行きません。それ故に今回は予選突破という使命を果たせて感無量です。来年2月に大阪で開催される最終予選への参戦はベトナムの女子サッカーにとっては大きなチャンスとなります。可能性を信じ出来る限りの準備をして臨みたいと思っていますし、限られた派遣期間でベトナムのサッカー発展に自分が最大限貢献できる方法を絶えず考えています。
ベトナムでの生活、女子サッカーについて
ベトナムに赴任して間もない頃は、バイクの多さや信号の無い大通りの横断など戸惑うことも多かったのですが、半年が過ぎ大抵のことには慣れました。異国で仕事をする上で、現地の方々の特性や考え方を理解するにはある種のエネルギーが必要です。息子が現地の日本人学校に通っているのですが、そこでベトナム国歌を習っているおかげで、私自身も早い段階で国歌を覚えることが出来ました。代表戦で選手・スタッフ、そして観客の皆様と一緒にベトナム国歌を歌って戦えたことは忘れがたいエピソードの一つです。
ベトナムの国内女子トップリーグは、1カ月の集中開催を前期と後期の2回に分けて行っています。7チームで編成されていますが、上位3チームは実力が抜きん出ています。リーグ開催期間は出来るだけ多くの試合を視察し、その合間をぬって代表チームのスケジュールを組んで強化合宿を行います。
最初の合宿の頃から比べると、選手のパフォーマンスはフィジカル面を含めかなり進歩しています。言葉の壁はありますが、出来るだけコミュニケーションを密に取り、考えながらプレーすることを一貫して指導しています。数々の試行錯誤と今までの経験を駆使してトレーニングを積み重ねてきた結果、前述のアジア2次予選のピッチ上で選手たちはその成果を証明してくれました。更なる改善に取り組むと同時に選手層を厚くし、継続的に技術面の向上を目指すことが必要です。長期的育成への取り組みの一環として、数年前にベトナムサッカー連盟のトレーニングセンターにアカデミーが設立され、U-14からU-16を中心に活動が行われています。
海外を目指す指導者達へのメッセージ
海外での仕事は職場以外の生活面でも想定外のことの連続ですが、日本では得がたい達成感や経験を積むことが出来ます。私自身は、選手時代から海外に出る機会に恵まれてきましたが、日本で指導を行っていた時は、このような立場になるとは想像もしていませんでした。新たな挑戦に失敗は付きものですが、数えきれない「初体験」のひとつひとつが自分の経験値を上げてくれます。サッカーはワールドワイドなスポーツですし、海外での方が評価の高くなる人もいるかもしれません。チャンスは誰にでも来るものではないので、その機会が巡ってきたら前向きにチャレンジしてみてください。
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