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【決勝展望】片野坂知宏監督の“最終戦”で狙うのは大分トリニータ2度目のタイトル奪取 天皇杯 JFA 第101回全日本サッカー選手権大会
2021年12月17日
天皇杯 JFA 第101回全日本サッカー選手権大会の決勝が12月19日(日)、国立競技場で開催されます。ここでは決勝に向けたマッチレビューを、大分トリニータを取材するスポーツライターの柚野真也さんにご寄稿いただきました。
「カタさん(片野坂知宏監督)の6年間の集大成。優勝して男にしたい」
声の主はチーム在籍9年目の最古参であり、片野坂監督が大分に就任した1年目から主力としてチームを引っ張った松本怜である。J3からJ2、J1と各カテゴリーでの戦いを経て、苦楽を共にした。J1昇格から3年目の今季は勝てない時期が続き、J2降格の憂き目に遭った。全責任を負った片野坂監督の退任が決まり、やるせない思いをしているのは松本だけではない。片野坂監督の最後の花道を飾らせたいとの思いは多くの選手の思いだ。
最終戦を待たずしてJ2降格が決まった今季を振り返ると、主力の流出が相次ぎ、その穴埋めができなかったことが大きな要因だ。J3から一つ一つ積み上げてきた組織力、攻守で個々の力に頼らない戦術が浸透するまでに時間もかかった。チームの規律や約束事を遂行すれば個の色を失い、個の色を出そうとすると組織として成り立たない。対戦相手をち密に分析し、戦術や選手起用などを変更して試行錯誤を繰り返したが、大きく戦況が変わることはなかった。
片野坂監督は「自分の要求や選手の力を引き出すアプローチが足りなかった。自分の力不足だった」と肩を落としたが、「大分のサポーターのために頑張ろう」と就任当初から何度も選手に言ってきた言葉が頭から離れることはなかった。降格が決まってからのリーグ戦2試合は吹っ切れた。「自分たちらしいサッカーをしてサポーターを喜ばせたい」、そのためには「最大値を出すこと。最後までパワーを出して躍動すること」。目の前の試合に対して集中することに専念した。
2連勝でリーグ戦を終えたことは、天皇杯のクライマックスに向けて、明るい材料をもたらすと共に、チームの結束をさらに強めることになった。「走り切る」「球際で身体を張る」「攻守の切り替えを速くする」というサッカーでは当たり前のことを徹底する。サブに回ったメンバーもタイムアップの笛が鳴るまでピッチ内の選手に声を送り続け、チーム一丸となって戦う。最終節で決勝点を奪った増山朝陽は「ベンチのみんなが総立ちで声を出していた。ピッチにいる選手は、もっとやらなければいけない気持ちになる。相手チームからいいサッカーをしていると言われるし、自信を持ってプレーできている」と、チームに宿る熱い空気を感じ取っている。
天皇杯準決勝は片野坂監督の今までのチームづくり、そして采配が光った試合だった。今季のリーグ王者・川崎フロンターレに対し、組織力と浸透した戦術で対抗した。中盤をダイヤモンドにした4-4-2の“秘策”もハマった。J1の最優秀選手賞(MVP)のレアンドロ・ダミアンを筆頭にベストイレブンに7人も選出された強烈な「個」に対し、球際の寄せの手綱を緩めず、丹念に11人で網を整えた。「選手は疲労している中、戦う姿勢を持ってくれた。相手の方が、上手さがあり、個で打開されることもあったが、高木を中心に粘り強く守ってくれた」と片野坂監督。最後はPK戦で勝利をたぐり寄せることになったが、大一番で「個」対「組織」のバトルを制して決勝に挑む。
対戦相手となる浦和に対し、片野坂監督は「リカルド(・ロドリゲス)監督はボールをつないで攻撃を構築する。攻撃のポジショニングも相手を見て可変する。“変幻自在同士”の対戦となる」と予測。片野坂監督は以前から「試合状況によって柔軟に戦うことが大事。引き出しを増やしたい」と語っており、対戦相手によってシステムや戦術、選手起用を明確に使い分けている。相手がシステムを変え、戦い方を変えても戸惑うことはない。「ピッチに出ている選手が共有する必要はあるが、相手が3枚、4枚であろうともボールの動かし方や守備の仕方も準備してきた。今季のベストゲームができるようにしたい」と強い意志を示した。クラブに2つ目のタイトルをもたらし、最高の置き土産を残して去るつもりだ。
【1回戦】5月22日(土)、23日(日)[予備日:5月24日(月)]
【2回戦】6月9日(水)、16日(水)
【3回戦】7月7日(水)[予備日:7月14日(水)]
【ラウンド16(4回戦)】8月18日(水)[予備日:10月13日(水)]
【準々決勝】10月27日(水)[予備日:11月17日(水)]
【準決勝】2021年12月12日(日)
【決勝】2021年12月19日(日)
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