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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第73回 平田礼次 フィリピンユース育成ダイレクター
2022年11月30日
パンデミック後のフィリピンサッカー
新型コロナウイルスの影響で2020年7月からフィリピンを離れていましたが、2022年2月にようやく戻ることができ、現地での活動も戻りつつあります。
実際に戻ってみると予想以上にパンデミックの影響が大きく、それによって苦戦が続いています。特に、少女サッカー、グラスルーツ、ユース年代、TADプログラム(フィリピン版トレセン制度)はマイナスからのスタートになってしまいました。
この2年間でプレーする機会を失っていた選手たち、コーチたちを想うと胸が痛みます。
各地域のコーチたちとの連携はWebミーティングなどを通して取れていますが、これまでサッカーコーチとして生計を立てていたコーチたちも別の仕事に就いてしまうなど今後の各地域での活動に支障がきたすことも予想されます。
しかしフィリピン女子代表がFIFA 女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド 2023への出場権を史上初めて獲得するなど嬉しいニュースもあり、これから徐々にサッカーが戻ってくることに期待しています。
アジアから見た日本のサッカー
そういったフィリピン国内での状況下でも10月にヨルダンで行われたAFC U17アジアカップ 2023予選にU16フィリピン代表監督として参加、10月3日に森山佳郎監督率いるU-16日本代表と対戦しました。(●0-3)
今回、私たちU16フィリピン代表チームには市立船橋高校サッカー部(1年生)で活躍するGuimaraes兄弟(GabrielとNicholasの双子)を初招集したこともあり、日本のサッカーをチーム内外から感じるとても貴重な機会でもありました。もちろん日本代表とフィリピン代表は全ての面で大きな差を感じました。あまりにも差が大きく詳細は割愛させていただきますが、特に強く感じたのは、日本サッカー界の育成の土壌の大きさと情熱です。U-16日本代表選手たちの良い習慣(心構え、食事、練習、試合環境、行為・態度)を肌で感じることができ、Guimaraes兄弟のフィリピンチーム内での振る舞いは全てが見本となりフィリピン代表選手たちとフィリピン人コーチたちに大きな影響を与え、チームの成長の助けとなってくれました。
海外(アジア)から見た日本サッカーは、昔から日本国内で言われ続けている日頃の練習の重要性、夢や目標から逆算された日常生活の重要性が徹底され、さらにそこに満足せず成長、発展を継続していく情熱を感じました。それは選手たちが育成年代でそれぞれのカテゴリーで出会い指導を受けてきたコーチたちの想いが選手たちに反映されているようにも感じました。そのサッカーに対する情熱と行動はアジア(特にASEAN)の国々は見習うべき態度であると確信しました。
日本人サッカーコーチとしてのDNA
最後にフィリピンサッカー界で活躍する日本人指導者2人を紹介させてください。
まず一人目は星出悠さん(フィリピンフットボールリーグ1部 KAYA FC監督/写真右)です。色々な国でプレーした後フィリピンでもプロとしてプレー、そのままフィリピンで指導者の道に。フィリピンのトップリーグであるPFLで結果を残し、ACLやAFCカップなど経験も豊富です。
そして二人目は鈴木丈智さん(トロイ財団 トロイFC総監督/写真左)です。マニラ首都圏近郊アラバンにある孤児院のサッカークラブの総監督。トロイFCはこの数年間で多くのフィリピンユース代表選手(男女とも)を輩出してフィリピン国内で一番注目のサッカーアカデミーとなっています。鈴木コーチは先日のAFC U17アジアカップ2023予選の時にコーチングスタッフとしてユース代表チームにも一緒に関わってくれました。
彼らはフィリピンで結果を出し、フィリピンのコーチや選手たちからの信頼も厚く、同じ日本人としてとても誇らしいです。彼らの背中を見てフィリピン人コーチたちがコーチとしての夢を持つようにもなっています。私自身も彼ら二人の経験や感性から多くを学び、彼らも私の活動のサポートもしてくれています。
私の個人的な感覚かもしれませんが、日本人のDNAは世界でも珍しいかもしれません。外国での難しい局面でも勤勉かつバランスがとれる適応型リーダーシップを発揮できるのが強みだと思います。このような振る舞いが必要な環境や時間はこれからの日本の指導者養成のヒントの一つになるかもしれません。これからも日本人がアジア諸国や世界でサッカーの発展に関わることや必要とされることは多いだろうと思います。
これからも日本サッカー界の人間として恥じないように、フィリピンサッカーに少しでも貢献できるように前進を続けたいです。
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