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チェンジメーカー 第2回 松本悟(まつもと・さとる) 京都府立久御山高等学校サッカー部監督
2011年07月28日
Profile
松本 悟 / MATSUMOTO Satoru さん
京都府立久御山高等学校サッカー部監督
2008年度SMCサテライト講座(京都)修了
1959年(昭和34年)3月京都府生まれ。
京都商業高より国士舘大学。卒業後3年間高校で時間教師を務めた後、久御山中学に配属され、12年間勤務。同校を全国中学校サッカー大会3位に。その後、久御山高校に異動し今年16年目。2011年1月、高い個人技をベースにした魅力的なパスサッカーで、2010年度第89回高校サッカー選手権準優勝。
JFA公認A級コーチ。
その1 担任は、一番やりたい
坂口:では、よろしくお願いいたします。今のお仕事についてうかがいます。
まず、教員としてのお話、そのあと部活動の顧問としてのお話にいきたいと思います。では、教員としてのお仕事についてお願いします。
松本:1年1組の担任をしています。はい、もうありがたい話。ずっと担任なんですよ、ここに来てから。先生っていう職業に憧れてなって、もともとサッカー部をこんなにやれると思ってなかったから、毎日楽しませてもらってるってね。担任はねぇ、やっぱりもう、教師としては一番やりたい・・・
まぁ、教師としてこれほど楽しいものはないですね、はい。子どもと和気あいあいやってるのが楽しいですし。新しく、3年周期でこう、子どもたちが替わっていくので、歳もとらずに流れに乗っていけるというか。
坂口:ご担当されてる授業は?
松本:保健体育ですね。週17時間です、体育の実技が15時間で保健が2時間。
坂口:部活動の話にいきたいと思います。今、久御山高校サッカー部の部員は、何人ですか?
松本:マネジャー入れて126名です。1年生が49で、2年生が44いて、3年生が25、マネジャー8人です。
坂口:大きい所帯ですね。
松本:そうですねぇ。おおきいですね。
坂口:いつ頃から増えたんですか?
松本:ここ、4、5年ですかね。はい。特に今年は選手権出たあとですから、どばっと入ってきましたね。
坂口:今、その126名をどういった体制で指導してますか?
松本:学校と別の離れたところに、城南の丘っていうグランドがあるので、そこをお借りして2つに分かれてやってます、平日は。この近くに府立学校の統合になった廃校がありまして、そのグランドの処分に困っていたので、ウチの前の校長が手を挙げてくれはって。で、使えるようになりました。
平日とか、土日も結構、やらせてもらえます。縦が短いんですけど、それでも2つに分かれないと、どうにも・・・。
坂口:こちら(久御山高校)はナイター照明はあるんですか?
松本:ナイターというとほんとうにもう・・・
坂口:ナイターというほどのものでもない・・・?
松本:ものでもないです・・・
向こう(城南の丘)は、もちろんナイターないですから、3月、4月位から、11月、12月位までですね、使えるのは。12月入って2月位までは使えないですね。4時くらいでもう暗くなるんで。休み中は使えますけどね。城南の丘には今日、1年生の50人が行ってますよ。トップと2年生は、こっちという感じで分かれてやってます。
坂口:それでも50~60人くらいですよね。練習や選手の管理もたいへんですよね。
松本:そうですねぇ。なかなか回らないですよ、ほんとうに。前にも大所帯になった時に低迷のきっかけになってしまったので、気をつけないと。
その2 わかってくれる子たちが来てくれる
坂口:指導スタッフは何人くらいですか?
松本:顧問はあと、中村先生と上田先生の二人。上田先生は前の学校でサッカー部顧問を少しされた経験があって、中村先生はもともとゴールキーパー出身で紫光クラブ(京都の教員チーム)でも一緒にやってました。
それとは別に常時ほとんど見てくれる外部コーチがいますね。毎日のように。卒業生で山中ってのがこの近くに勤めてまして。久御山中時代の教え子の会社なので、こちらに来れるように4時くらいに仕事からあげてくれるんです。
坂口:ありがたいですね。
松本:はい、すごく助かってますね。
坂口:人数が増えましたが、選手の質はどうですか?
松本:そうですねえ、サッカーやったことないって子がほとんどいないっていうことと、上手さのレベルが高い子が、非常に多く入ってきましたね。
坂口:それはなぜだと?
松本:選手権出て、映像として放送されたこと、それがひとつと、(選手権に)出た彼らが、別に皆が皆、有名だったり中学の時に上手かったってわけじゃなかったり。上手かったんですけど、たまたまトレセンとか選抜に縁が無かった子たちだったこともあって、自分も出来るんだって自信持って入ってきてくれてる子たちが多いですね。はい。
坂口:久御山高校のサッカーのスタイル、松本先生のやりたいサッカーのスタイルっていうのを、ここに入ってくる子たちは見て入ってきますか?
松本:でしょうね。だから、1年生でもすごいです。この前初めてゲームしたんですけど、いきなりから、なんか久御山らしいな、みたいな。これ、2年生より上手いんじゃないかなっていう感じ。より上手い子たちが入ってきましたねぇ。今の2年生去年こんなに上手かったかなっていうぐらい。年々、卒業した子たちより今年の3年生のほうがやっぱり上手いし、3年より2年生。質のいい、レベルの高い、細かいところまで気遣えるような子たちが入ってきました、はい。
いいサッカーすれば、いずれはわかってくれる子たちが来てくれるだろうって考えでやっていたので。声掛けはしますけど、やっぱり、私学さんの環境の良いところにはかないませんので、こんなんサッカーやろうよ!ってこちらがアピールしてこそなので。
来た子たちはここのサッカーをよく見てるから、やっぱり上手い子がきますよね。
坂口:先生としても楽しみですね。
松本:楽しみですね。反対にプレッシャーもありますけどね。今回の一回こっきりで終わってしまったら、はい・・・
また低迷するかもしれないですし。
坂口:さっき出た話で、以前、人数が増えて低迷につながったそうですが。
松本:そうですね。気をつけないと。
前も3年連続選手権出たあとに、100人越えてしまってですね、練習場所とか、目が行き届かないとか、自分の限界もあるので。前は、全部自分でやらないと気が済まなかったのでなにもかも見にいって疲れたことがありました。今回は、学校の先生方の協力も得て、あと、外部のコーチですが、教え子が教えるので彼にも十分任せて。練習の時間とか、質は落とさないようにやりたいですね。
坂口:その経験があって、マネジメントを工夫するようになられたってことですね。
松本:そうですね。あの経験のお陰で、やり方を変えることが出来ました。ノートにまとめて、一人一人をちゃんと見て、最高にはできないかもしれないですけど、以前よりは、選手をよく見れるかなって。
以前だったらその子の悪いところまで見てしまってね、自分でアホみたいに落ち込んだりしたんですけど。ちょっと離れるといいとこばっかり見れるかなって。もちろん悪いところも目に付くんですが、先ほども言いましたけど、感じ方変わりましたね。こいつこんなことで味方に怒ったりっていうのは、逆に、こいつは勝ちたいんだなとか、あっ、細かいとこまでプレーが丁寧だなとかって、そういう風に捉えられて選手に対する見方が変わってきた。それでグループ全体が良くなった。
子どもたちに育ててもらってるなって感じます。
その3 準優勝の発端ですね
坂口:2008年にSMCのサテライト講座を京都で受けられました。受講しているとき、いかがでしたか?
松本:最初はちょっと、照れましたね。自分のことしゃべったり、なんだかんだ話すことは、恥ずかしいんですけど、実は結構好きだったのでSMCへ行って勉強する意欲っていうんですかね、勉強っていうと小さい頃からあんまり好きじゃなかったんですけど、学ぶことに積極的になれました。
行ってよかったなって思いが、初回行って、あっ、また次もよかったって感じで、すごく意欲的になりました。あと、行動力、積極性がついたかな、はい。
坂口:SMCで考えたこと、その後のチーム作りとか、生徒の育て方に影響しました?
松本:はい。影響しましたね。
まずは、指導者として色んなもの取り入れて勉強しないといけないなっていうことと、こういうの楽しいなって。周りにいる色んな受講生から刺激を受けて、行動力とか僕よりすごい人がいっぱいおられたので、勉強になったり、お互いに、刺激し合ってね。
ノートの取り方(マインドマップ)も、自分で書いて、書いて、だんだん頭で描けるようになったりすると、大事なものがこれだなとか、今はこれだなっていう、ちょっと整理がついた。
一番は、サッカーに対する、指導に対するモチベーションがものすごく上がりましたよね。やれるなっていう自信がちょっとついたんじゃないかなって思いますね。整理がつきましたよね、自分としての。
だから、あれは、今回の準優勝の発端ですね。あれをきっかけにしてできたんじゃないかな、って。
坂口:それは嬉しいです。
松本:あのことによって自分のマネジメントの重要性を感じましたね。ちゃんと教師の仕事もやっておかないと次のことが思い切ってできないというか、先日の新人戦のときも、仕事きっちりやれてない、今もやれてない状態なので、それはもうサッカーに影響しますよね。
こんなん何十年とやってきてるのにまたそんな失敗してしまう。整理つかないくらい忙しかったり、あっちやこっちだいうて。だからもっとああいう勉強を活かして整理しないといけないなぁと思うんですよね。
坂口:他の指導者の方たちにもSMCはお勧めしたいですか?
松本:そうですね。あの期間を経験するってことは非常に大きいことだなぁと思いますね。より多くの方に行っていただきたいと思います。もちろん、最近どこも強くなってきてるから、内心困るんですけど。笑
でもその中で強くなって出て行きたいなって思います。
(選手権の)決勝戦を後から何度もビデオ見たらもっとこの辺りはこうするべきだったなぁ、ってところいっぱいあって、決勝戦も本当にまるっきり大失敗したんで。もっとこちらが、子どもを上手く指導できたらなぁっていう感じはしましたねぇ。
坂口:決勝戦って、どこら辺りが、あの、松本先生としては・・・。
松本:いや、まず大きくいくと、決勝戦だけ違うゲームになった。私も選手も、これ、いけるぞ!っみたいなね。
実はほんと、僕、スケベ心が出て、これ優勝できるやん、みたいなね。そんな風なってしまって、選手のそれまでの良さをちょっと固くしてしまった。立ち上がりよかったんですけど・・・。
坂口:最初ものすごい勢いでつないでましたよね・・・。
松本:(うなずいて)
だから、それまでと同じ感じで、いいゲームしようってことで入ったらよかったのに、多分、僕、ことばの端々に、勝ちを意識させるようなことを言ったんだと思うんですよ。だから、いい形で入れて、もう、これいけるぞ!みたいな、ほんと、スケベ心出てしまって。こちらが点を取れないうちに反対に取られてしまって、そこでやっと我に返った。
だから、勝てる気で後半臨んだし、いつもだったら言える、「勝つか負けるかそらわからへん。だから、もう一回楽しんでおいで」っていうことばは後半の途中まで言えなかったのでね。
あれは指導者として、なんとこう、ホンマにこんなことあんのやなぁみたいな。
多分これまでの指導だったら、あそこまでは行けるけど、また準優勝だろうなぁって。
あそこで、もう一回、「最後だからいつもどおりに」って彼らに言えるか。要は、この仲間で、こういうサッカーでって思いでずーっとやってきたから。
坂口:チームマネジメントの難しさですね。
その4 100何番目かの子たちにも楽しんでもらう
坂口:最後の質問です。今後について。
今後、先生がやっていきたいこと、していきたいことはなんでしょう?
松本:高校サッカーなので、エリートの何人かだけじゃなくて、100何番目かの選手たちにもサッカーを楽しんでもらえるようなサッカーを目指したい。サッカーの質という点でね。
高い所に目標を置いてね。いいゲーム、いいサッカーをするっていう、自分たちでもできる、止めて蹴って走ってっていう、単純なことですけど、それをより上手くして、上手くすることによって攻撃も守備もあるいは問題解決能力も全部、養えていくと思うので。そのことをね。
もちろん、選手権優勝だとかインターハイ勝つとかそういうのもあるんですけど、それ以上になんでしょうね・・・
勝てなかったらその学年はよくなかったのかというとそうなんじゃなくて。サッカーの質、レベルの目標を高い所に置いて、モチベーション燃やしてずっとやっていきたいなって。終わりはないですね。
坂口:私が見てる感じだと、勝ちたいってよりは、いいサッカーがしたい、っていうか楽しいサッカーがしたい、それは先生もそうですし、ついてきてる子どもたちもそう。だから、あれができるんだろうなぁって印象は受けます。
松本:でもまぁ、勝ちたいやつもいるしね。私も負けるのは絶対に嫌ですけどね、上手さとかいい内容で勝ちたいってことですね。
野洲とやったらものすごいゲームになるんですよ、いつも。あと10年間の内で夢が欲しいじゃないですけど、僕らとしては、野洲と決勝をやりたいですよね、はい。
野洲とか、静学とか、上手いとこにチャレンジしたいですね。うちらのこの近所の子たち、この京都の南部を中心としたこの辺の子たちで、上手くなっていきたいですね。
そんときに決勝だからといってスケベ心出さないで、今日もいいサッカーするんだ、と。
自分の質も、選手のプレーの質も、更に上げてたいなぁと思いますね。
許されるなら、ずっとサッカーの指導者としてやっていきたいですね。もちろん教員としてね。最後まで担任もずっとしていきたいなって。
サッカーは、もちろん全国優勝は、必ずします。するつもりでいます。
私も選手たちもモチベーションを持って、よりいいサッカー、より自分たちの理想とするサッカーを求めていって、去年の先輩たちとか、昨日の自分とか、今日の自分を乗り越えていきたいって思いでサッカーをやると、ずっと続けられるんじゃないかなって思いますね。
たぶん、去年、もし勝ってたら、あのまま進歩しないで終わってたかもしれないなって。サッカーの質のレベルアップを永遠にしていきたいなって思いますね。
坂口:応援します。優勝しても、進化し続けてほしいなって思います。
松本:ありがとうございます。
坂口:長い時間、どうもありがとうございました。
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