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オランダへの感謝 ~いつも心にリスペクト Vol.159~

2026年08月25日

オランダへの感謝 ~いつも心にリスペクト Vol.159~

日本のサッカーが代表監督に森保一という人を得たことは大きな幸運でした。

2018年に就任してから8年間、森保監督は「日本代表」という一つのチームの成長、そして勝利を何よりも第一に考えながら、サッカー人として大切な「リスペクト」とは何かを、あらゆる機会を通じて示してくれたからです。

昨年12月、FIFAワールドカップ2026のグループステージ初戦でオランダと当たると決まったとき、森保監督の胸にはある思いが浮かび上がったに違いありません。「オランダへの感謝」です。

1980年代の後半、まだ十代だった森保監督の選手としての才能を引き出したのは、オランダから日本サッカーリーグのマツダサッカークラブ(現在のサンフレッチェ広島)にやってきたハンス・オフトコーチでした。当時の日本サッカーではまだ明確なイメージのなかった「守備的MF(Jリーグ時代以降の表現で言えばボランチ)」という役割を森保監督に与え、チームの中心的存在にしました。

そして1992年に日本代表監督に就任すると、マツダのファン以外にはほとんど知られていなかった森保監督を抜てきします。

「モリ・ホイチ?」

サッカー記者でさえ、彼の名前を正確に読めない人もいた時代でした。しかし基本戦術を徹底したオフト監督のサッカーの中で、森保監督は急成長する日本代表に欠くことのできない存在として知られるようになります。

1995年には、サンフレッチェ広島でMFをしていた森保監督の「ボス」に、やはりオランダ人のビム・ヤンセン監督が就任します。ヤンセン監督は現役時代にオランダ代表の守備的MFとして鳴らし、1974年と78年のワールドカップでは2大会連続の決勝進出の支え役となったオランダサッカーの「レジェンド」です。

日本代表とオランダ代表の対戦は、もちろん、初めてではありませんでした。ワールドカップにおいても、2010年南アフリカ大会での対戦があり、0-1で敗れています。しかし森保監督になってからは初対戦。初戦の相手が「オランダ」と聞いて、森保監督の胸に二人の人柄や指導ぶりが去来したのは想像に難くありません。

6月14日のダラスでの試合、日本は粘り強く戦い、この優勝候補の一角と2-2の引き分けに持ち込みました。当然、試合後の森保監督の記者会見では、選手起用から試合プラン、そして選手交代の狙いなど、質問が相次ぎました。全ての質問にいつも通り、丁寧に答えた後、会見の司会を務めていた国際サッカー連盟(FIFA)の女性の広報担当が「それではこれで森保監督の会見を終わります」と言うと、森保監督は「一つだけ言わせてほしい」と、話し始めたのです。

「オランダ人の記者の方もいらっしゃると思うので、ここであらためてオランダの方々に感謝申し上げたいと思っています」

「というのも、私自身、日本代表になったとき、当時日本にはプロはまだない時代でしたけど、ハンス・オフトさんというオランダ人のコーチに育てていただきました。私だけではなくて、オフトさんには、日本の指導者が大きな大きな影響を受け、今の日本のサッカーの発展につながっています」

「また、ビム・ヤンセン監督というオランダのレジェンドの監督も、Jリーグで広島をはじめクラブの監督をやっていただき、日本サッカーに大きく貢献してくださったと思っています。ヤンセンさんは残念ながら4年前に亡くなられましたが、昨年、彼が現役選手時代の大半を過ごしたフェイエノールト・クラブを訪れ、彼が眠っているお墓をご家族に聞いてお参りをさせていただきました」

「そのお二人だけではなく、たくさんの指導者が日本のレベルアップに貢献していただきました。感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました」

席を立とうとしていた日本とオランダ、そして地元アメリカの記者たちはあらためて着席してその話に聞き入り、話が終わると大きな拍手を送りました。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会機関誌『JFAnews』2026年7月号より転載しています。

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