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なでしこジャパンを支える “継続”と“革新”の取り組み
2023年08月09日
なでしこジャパンの快進撃
FIFA 女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド 2023でのなでしこジャパン(日本女子代表)の快進撃が続いている。7月22日(土)のグループステージ初戦ではザンビアを相手に5-0で快勝。続くコスタリカ戦も2-0で勝利すると、グループ首位通過を懸けたスペイン戦でも4-0で3連勝を収め、見事に4大会連続のノックアウトステージ進出を決めた。グループステージ3連勝は準優勝した2015年大会以来2度目、さらに3試合で無失点は初の快挙だ。
ここまで前線から連動したプレッシング、さらには切れ味鋭いカウンターが炸裂し、世界の強豪相手から白星を重ねている。8月5日(土)に行われたノルウェーとのラウンド16もオウンゴールで先制した後、体格で勝る相手に一時は同点とされるも、清水梨紗と宮澤ひなたのゴールで3-1とし、2大会ぶり4度目のベスト8に進出した。
2011年大会で初優勝を成し遂げた日本だが、12年のロンドンオリンピックでの銀メダル、15年のワールドカップ準優勝以降、世界大会の表彰台から遠ざかる時期に差し掛かった。2016年のリオデジャネイロオリンピックではアジア予選で敗退。19年のワールドカップはラウンド16敗退、21年に行われた東京オリンピックもグループ3位で何とかノックアウトステージに進出するも、準々決勝でスウェーデンに1-3で敗れるなど、満足のいく結果は出せなかった。
世界の女子サッカーの急速な成長に取り残されるのか。なでしこジャパンがそんな苦しい時期を過ごす中でも光明が差していた。2014年、コスタリカで行われたFIFA U-17女子ワールドカップでU-17日本女子代表が初優勝。メンバーには杉田妃和、長野風花、長谷川唯、南萌華が名を連ね、杉田は大会MVPを獲得した。さらに2018年のFIFA U-20女子ワールドカップフランス2018では南、長野に加え、高橋はな、林穂之香、宮澤、遠藤純、植木理子を擁してこの年代で初の世界一に輝いた。これによりフル代表、U-20代表、U-17代表の3世代で優勝という世界初の快挙を成し遂げた。
レベルアップのためにさまざまな施策
この快挙の裏で、JFAは選手の発掘・育成・強化、また指導者の養成を進めるなど、さまざまな取り組みを行ってきた。
まずは継続的に行ってきた施策の中で特筆すべきものとして、06年に開校したJFAアカデミーが挙げられる。女子を対象としたアカデミーは、06年の福島に続き、12年に堺、15年に今治が開校。エリート選手の育成を目的としたこの機関からはこれまでも多くのトップ選手を輩出してきた。今大会には、平尾知佳、三宅史織、守屋都弥、遠藤、石川璃音の過去最多5人のアカデミー出身者が出場している。
05年から実施しているナショナルトレセン女子U-14も女子選手のレベルアップを図る上で大きな役割を担っている。実施初年度には当時中学3年生の熊谷紗希が選出されており、直近でもFIFA U-20女子ワールドカップコスタリカ2022に出場した石川、藤野あおば、浜野まいかの3人もナショナルトレセンの活動を経ている。なお、ナショナルトレセンは15年まではU-15以下で行われていたが、以降はU-14の選手を対象に実施されている。
また、将来の代表選手を育成する場としてエリートプログラム女子U-13・U-14も実施。国内でのトレーニングキャンプや海外遠征を通じて、個の育成や世界基準の共有などを図っている。同時に、U-15の選手に対しては年2回、女子U-15トレーニングキャンプを開催。多くの選手がこうした活動を経て、代表チームが初めて編成されるU-15日本女子代表へと階段を登っている。
山下杏也加の安定感や好セーブが光るGKについても、2004年にスーパー少女プロジェクトを立ち上げ、現在は女子GKキャンプに名称を変えて活動を行っている。前述した山下、平尾、田中桃子の今大会出場GKの全員がこの活動を経るなど、着実に成果が上がっている。
そのほか、JFA ガールズ・エイトU-12といった女子限定の施策、また22年に初めて開催されたJFA U-18女子サッカーファイナルズなど、各年代の女子の全国大会の整備も進めてきた。13年からは年齢や経験を問わず全ての女性にサッカーを楽しんでほしいという思いで「JFAなでしこひろば」を展開。普及面でも女子サッカーの底上げを図っている。
女子サッカー全体の底上げを
日本女子サッカーが置かれた状況を鑑みて“軌道修正”も行ってきた。07年に発表した「なでしこビジョン」では、代表選手につながるタレントの発掘やU-20/U-17日本女子代表の強化、指導者や審判員の養成など包括的に取り組むことが盛り込まれた。それらの達成度を踏まえて15年に改定された「なでしこビジョン」では2030年までに登録女子プレーヤーを20万人にすることと並んで2020年東京オリンピックと23年のFIFA女子ワールドカップ優勝ですることを掲げた。
16年5月には、「普及」「代表強化」「育成」「指導者養成」の4つの柱からなる「女子サッカー発展のためのマスタープラン」を発表。その一環として国民体育大会の少年女子(U-16)の部の創設に動き出し、22年度に初開催となった。加えて、2024年度・第33回大会から全日本高等学校女子サッカー選手権が現行の9地域代表制から各都道府県1代表制となることが決まり、2種年代のチーム創出機運の高まりにも期待がかかる。これらの効果が表れるのはもう少し先になるが、各都道府県で女子のトレセン活動がさらに活発化するなど、女子サッカーの底上げに一役買っている。
21年9月には女子のプロリーグ「WEリーグ」が創設された。海外移籍を選択する選手が増加傾向にある中でも、ここまで一大会で日本人最多タイとなる5得点を挙げている宮澤(マイナビ仙台レディース)、FWのポジションで献身的な働きをしている田中美南(INAC神戸)と植木(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)を筆頭に、登録選手23人中、WEリーグ所属選手が14人を占めている。彼女たちの活躍ぶりはプロリーグで強度の高いリーグ戦が行われている証左になるだろう。
以上はJFAがこれまで行ってきた“継続”と“革新”の取り組みの一部に過ぎず、一概にこれだという要因はないが、さまざまな活動やサッカーファミリーのたゆまぬ努力によって日本女子サッカーは再び世界の舞台で輝きを放っている。11年に大輪の花を咲かせたなでしこジャパン。再び“世界のなでしこ”となれるのか。女子サッカーに関わる全ての人の思いを乗せて、頂点を目指す戦いは続く。
FIFA 女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド 2023
大会期間:2023年7月20日(木)~2023年8月20日(日)
グループステージ
第1戦 7月22日(土) ◯ 5-0 vs ザンビア女子代表
第2戦 7月26日(水) ◯ 2-0 vs コスタリカ女子代表
第3戦 7月31日(月) ◯ 4-0 vs スペイン女子代表
ノックアウトステージ
ラウンド16 8月5日(土) ◯ 3-1 vs ノルウェー女子代表
準々決勝 8月11日(金) 16:30(日本時間)vs スウェーデン女子代表 [放送予定:16:10~ NHK総合 ※2/FIFA+]
※1 放送スケジュールは変更になる場合があります。|※2 NHK+での同時配信・見逃し配信
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