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「何かを始めるきっかけになればうれしい」JFA Magical Field Inspired by Disney ファミリーサッカーフェスティバル“First Touch” 澤穂希キャプテンインタビュー

2023年03月08日

「何かを始めるきっかけになればうれしい」JFA Magical Field Inspired by Disney ファミリーサッカーフェスティバル“First Touch” 澤穂希キャプテンインタビュー

日本サッカー協会(JFA)は2022年から小学1年生~3年生のサッカー未経験者を対象としたJFA Magical Field Inspired by Disney ファミリーサッカーフェスティバル“First Touch”を日本全国で開催しています。ここでは当プロジェクトのキャプテンに就任した澤穂希さんに、ご自身の幼少期や子どもたちへの思いを聞きました。

○取材日:2023年2月25日

ディズニーは子どもも大人もハッピーになれる夢の世界

――澤さんが初めてサッカーと出合ったときのことを教えてください。

 父の転勤で大阪にいた6歳のときに、一つ年上の兄のサッカーの練習について行って、教えていたコーチに「妹さんも蹴ってみないか」と誘っていただきました。そこで蹴ったボールがたまたまゴールに入ったことがうれしくて、「サッカーをやりたい!」と思ったのがきっかけです。当時はスイミングにも通っていましたが、父の転勤で東京に戻ってきて地元の府ロクサッカークラブに入団してから本格的にサッカー漬けの日々が始まりました。

――入団するときに大変なことや、ご両親のサポートで印象的だったことはありますか。

 当時はまだ女子チームがほとんどなく、府ロクサッカークラブも少年団だったので、最初は「これまでに女の子がいた前例がないから」と断られてしまいました。そのときに母が「前例がなければうちの娘で新しい歴史を作ってください」と話をしてくれて、クラブが受け入れてくれたんです。私は兄と一緒に遊ぶことが大好きで、「自分もサッカーをやれる」と思っていましたから、そんな苦労があったことは後から知りました。

――サッカーを始めた当時は、どのような思い出がありますか。

 府ロクはすごく遠征が多くて、関東近辺だけでなく、夜行バスで関西方面に行くこともありました。遠征先では、相手チームの選手の家が宿泊先になることもあったので、すぐに仲良くなってみんなで遊び、夜は花火などをした思い出があります。相手チームの子が私の家に泊まりにきてくれたこともあって、当時の選手とはいまだに付き合いがあります。

――JFAは昨年からウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社と共にJFA Magical Field Inspired by Disney ファミリーサッカーフェスティバル“First Touch” を開催しています。澤さんがキャプテンを引き受けた思いを教えてください。

 何かを始めるのには、勇気が必要だったり、不安が先行してなかなか一歩を踏み出せないこともあります。サッカーが何かを始めるきっかけなってくれれば、という思いがありお引き受けしました。

――このフェスティバルの良さはどのようなところにあると感じていますか。

 ボール一つでこんなにも子どもたちと楽しくコミュニケーションが取れるんだな、と改めて実感しています。子どもたちはディズニープリンセスのユニフォームを着てキラキラした表情でボールを追い掛けていますし、ディズニーは大人もハッピーになれる夢の世界ですよね。
私自身、とても楽しんでいます(笑)。

サッカーが上手いか下手か、ではなくて、「一歩を踏み出したらこんなに楽しいことがあるんだ!」ということを一人でも多くの子どもたちに知ってもらいたいと思っています。親御さんの中には普段あまり体を動かさない方もいると思うので、この“First Touch”を機に子どもと一緒に一歩を踏み出してくれるといいですね。

初めてのことや初対面の相手に対して遠慮してしまう子たちも、触れ合う中で徐々に変化が見られます。親御さんが一緒だからこそ安心できるのも、“First Touch”の良い点ではないでしょうか。FIFA女子ワールドカップ優勝メンバーの宮間あやさんや海堀あゆみさん、川澄奈穂美選手なども手伝ってくれていますが、2011年のワールドカップ優勝を見てくれていた親御さんたちが多いので、「一緒にボールを蹴ったり、動けるのがうれしい」と言ってくださるのもありがたいです。

サッカーが「楽しい」という気持ちが原動力に

――サッカー初心者の子どもたちが一歩を踏み出している様子を見たときは、どんな気持ちになりますか。

 親御さんから離れられないとか、人見知りでなかなか笑ってくれない子もいますが、話し掛けたり、お父さんとお母さんの間に入って一緒に手をつないでゲームをしたり、ボールを使って一緒に楽しむようにしています。それで、終わった時に笑ってくれたり、「楽しかった」と言ってくれると「良かった!」と心からうれしく思います。

――澤さんご自身は、サッカーを続けていく上ではどのようなことがモチベーションになっていましたか?

 一番は「サッカーが楽しい」「サッカーが上手くなりたい」という思いでした。

それと、府ロクでは「リフティングを5回できたらごほうび」という感じで、課題をクリアするとチョコや肉まんを買ってもらえるので、それが、一つのモチベーションになっていました(笑)。

――澤さんはその年代の頃は、どんなことが目標だったのですか。

 私は実家の近くに日テレ・ベレーザ(現、日テレ・東京ヴェルディベレーザ)という強豪クラブがあったので、そこでプレーすることを目指していました。中学入学時にテストを受けて入団できましたが、10歳以上年上の先輩もいて、フィジカルも技術も全然ついていけなくて。当時は毎日悔しい思いをしながら、必死に練習していました。

――JFAでは日常的にサッカーを楽しめるよう、小さな子どもから大人までサッカーが好きな女性を対象にした「なでしこひろば」を全国各地で開催しています。この取り組みについてはどのような印象でしょうか。

 誰でも日常的にサッカーができることは、女子のサッカー人口を増やす意味でも非常に大切な取り組みだと思います。特に、中学校では、女の子がサッカーを続けられる環境が少なく、違うスポーツに行ってしまうことも多いので、この年代の普及活動には特に意識して取り組まなければいけないと強く感じています。

好きなことや気になることにチャレンジしてほしい

――そのベレーザから15歳でサッカー日本女子代表に初選出され、22年にわたって日本女子サッカー界をリードされました。世界と戦う上で大切にされていたことはありますか。

 チームとして戦う上での結束力や、仲間に対する思いはすごく大事にしていました。一緒に戦った選手たちは今でも、家族のように大切な存在です。苦楽を共にした時間は本当にかけがえのないものです。辛いときはみんなに助けてもらい、誰かが苦しんでいるときには精いっぱいサポートしました。今でも現役を続けている選手がいたり、引退して育成や普及に携わったり、結婚して家庭を持ったりと、それぞれに環境は違いますが、集まったときは昔話に花が咲きます。サッカーをしている子どもたちや選手たちにも、仲間を思う気持ちを大切にしてほしいです。

――ワールドカップやオリンピックで何度も対戦した選手たちとの絆も深まったのではないですか。

 そうですね。当時対戦した選手たちと今でもメールをしたり、元気にしているかな?とSNSでみんなの近況を見たりしています。今は日本から海外に挑戦する選手が増えて、様々な出会いの中で、選手としての経験値を積めることは非常によいことだと思います。

――今年7月にはFIFA女子ワールドカップが開催されます。再び世界のトップを目指す後輩たちに、どんなことを期待しますか。

 やはり結果が一番大事だと思います。私たちの年代は世界大会で結果を残したことで、たくさんのメディアに取り上げていただきました。選手たちが頑張る姿を一人でも多くの方々に見ていただきたいですし、注目してもらうためにも結果を残してほしいです。子どもたちに夢を聞くと、「なでしこジャパン(日本女子代表)の選手になりたい」と話してくれる子もいます。一昨年にWEリーグが立ち上がってから、選手たちがプレーする環境はより良くなっているので、もっと強くなれると思うし、頑張ってほしいです。

現役を引退した私たちにできることは限られているかもしれませんが、宮間さんとも話して、当時の経験を伝えて力になれれば、という思いがあります。

――澤さんは2017年にご出産されて、母になりました。母になってサッカーへの思いに変化はありましたか。

 子どもが大好きですし、“First Touch”では自分の娘と同い年ぐらいの子も多く、みんなが本当に可愛くて。改めて、“First Touch”にキャプテンとして参加できることを光栄に思います。一緒にボールを蹴りながら目をキラキラ輝かせる子どもたちを見て、今後もサッカー教室など、いろいろな形で普及に関わっていきたい、と思うようになりました。もちろん、サッカーに限らず、何かを始めるきっかけになる子どもたちが一人でも多くいてくれたらうれしいです。

――最後に、子どもたちに向けてメッセージをお願いします。

 自分の好きなことや気になることを見つけたら、まずは始めるきっかけを見つけて、とにかくチャレンジしてみてほしいです。最初はきっと不安もつきまとうけれど、やってみたら「楽しかった!」と思えることも多いと思います。もしそれがサッカーであればうれしいです。

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