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【特別企画】JFAユニクロサッカーキッズ20周年対談 ~スポーツを通じて人生を学ぶ 公益財団法人日本サッカー協会 川淵三郎相談役×株式会社ファーストリテイリング 柳井正代表取締役会長兼社長
2022年06月28日
日本サッカー協会(JFA)は株式会社ユニクロの特別協賛の下、2003年から「JFAユニクロサッカーキッズ」を全国で実施している。
JFAキッズプログラムの一環として6歳以下の未就学児を対象として行っているこのフェスティバルには、これまで延べ約30万人の子どもたちが参加。
子どもたちがサッカーに触れ、その楽しさを体験する貴重な機会となっている。
スタートから20周年を迎え、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長と川淵三郎JFA相談役に話を聞いた。
○対談日:2022年5月20日
※本記事はJFAnews2022年6月に掲載されたものです
子どもたちが家族と一緒に楽しんで参加できる場
――ユニクロが「JFAキッズプログラム」への支援を決めた背景とはどのようなものだったのでしょうか。
柳井 スポーツに協賛したいと考えていました。ただし、他の企業と同じような大会を協賛するのではなく、違った形がいいだろう、と。そのような中、2002年にFIFAワールドカップが日本で開催され、サッカーが非常に盛り上がっていました。日本のサッカーが世界に羽ばたくスポーツになっていく時期だったので、わが社もサッカーに協賛したいと思っていたところ、「JFAキッズプログラム」の話をいただいた。私の次男と安永聡太郎さん(元プロサッカー選手)が小学校から一緒にサッカーをやっていた縁で、もともとサッカーには親近感を持っていました。
――川淵相談役から提案されたのでしょうか。
川淵 子どもたちが肉体的に成長し、運動神経が急速に発達していくのは、ゴールデンエイジといわれる9歳から12歳の間ですが、その前のプレ・ゴールデンエイジといわれる8歳以下の段階での運動経験も非常に重要です。しかし、日本ではこの年代で運動をしていない子が多い。外遊びをする機会も減って日本の子どもたちの運動能力は低下しているといわれています。JFAでは、このプレ・ゴールデンエイジの子どもたちにスポーツの楽しさを教えていきたいという思いからJFAキッズプログラム(※)をスタートさせました。そこでユニクロさんに協賛をお願いしたところ、快く引き受けてくださり、2003年に福岡ドームで行われた第1回から協賛していただいています。
柳井 ワールドカップ開催によってサッカーが非常に盛り上がっていた時期で、私たちも世界に打って出たいと思っていました。日本の将来を担う子どもたちがご両親と楽しんで参加できる。そういう事業を自社でできるということで、喜んで協賛させていただきました。
川淵 芝生のグラウンドを走り回れるというのは、サッカーをするしないにかかわらず、子どもたちにとっては楽しいことなのです。そして、子どもが参加するということは、ご両親や祖父母も一緒に参加するということなので、家族で楽しめるんですよ。
――なぜ企業がスポーツに協賛するのか。ユニクロがこのプログラムに協賛する意義はどこにありますか。
柳井 昨年の東京オリンピック・パラリンピックでスウェーデンチームのユニフォームを作ったように、われわれはスポーツウエアだけでなく、スポーツとカジュアルの中間のような服も作れます。ユニクロサッカーキッズでは子どもたち全員にTシャツをプレゼントし、それを着てサッカーをしてもらっていますから、まずはそうしたことの証明、宣伝になります。そして、サッカーを通して子どもたちが仲間と一緒に行動することを覚え、そこでリーダーシップやフォロワーシップ、チームビルディングなどを学ぶ。社会教育の一つにもなります。われわれの宣伝になると同時に、みんなに喜んでもらえるんです。
――広告、宣伝という部分では、選手やチームを通じて企業のメッセージも伝えられています。
柳井 スポーツの場合、特にプロスポーツでは、ヒーローである選手を応援するということが一つにあります。私は、スポーツのヒーローは紳士でなければいけないと思っている。あの選手のようになりたいと思う選手を企業として応援したいんです。誰にとってもお手本となる選手をわれわれは「グローバルブランドアンバサダー」と呼んでいますが、彼らが世界で活躍することによって、われわれも一緒に世界に出ていくというイメージです。
川淵 もちろん宣伝という部分では必要なことを伝えなければならないと思いますが、見返りを求めていては本当の社会貢献はできません。日本ではまだ損得勘定で考えてしまうことが多い。しかし、それではあまり良い結果を生まない。そうではないから、「JFAユニクロサッカーキッズ」は20年続いてきたんですよ。
※JFAはキッズ年代(10歳以下)へのアプローチとして、2003年にJFAキッズプロジェクトを立ち上げ、同年からキッズ巡回指導、フェスティバル、指導者(キッズリーダー)養成を三本柱としたプログラムを展開している。
スポーツで、もっと、幸せな国へ
――Jリーグは立ち上げ当初から地域密着を進めてきました。ユニクロも各地に店舗があり、地域密着を掲げています。
柳井 やはり地域の人に愛されなければなりません。ユニクロが全国に何店舗あろうと、自分たちの住んでいる地域の店舗に魅力がなければ駄目なんです。地域に密着しない限り、安定した売り上げは見込めませんし、地域にとって魅力がない限り、そこに店舗がある理由がありません。サッカーは、クラブ組織というものを日本で初めてつくり、そこで子どもたちを育てています。そういう組織が日本のあらゆるスポーツに必要だと思います。サッカーで世界に飛び出していこうとする子どもたちを地域が応援する。その子たちも世界に出ると同時に、日本でも活躍する。そういう組織をもっとつくってほしいですね。クラブという発想は欧州から学んだのですか。
川淵 そうです。プロ野球は、Jリーグができる前は限られた球団に人気が集中していました。企業中心のやり方ではそうなってしまいますから、Jリーグは欧州のスポーツ先進国に倣い、地域に根差してやっていくことにしました。
柳井 そのやり方が、日本サッカーを変えたと思います。日本のスポーツは、いわゆる体育会系といわれるものが中心でしたが、私はそれが苦手でした。クラブでは年齢の違う人たちが一緒になってスポーツを楽しめる。それが素晴らしいと思っています。
川淵 今ではプロ野球も「地域密着」を標榜するようになってきました。Jリーグ立ち上げ当初は、地域密着と言ってもなかなか理解してもらえなかった。でも、それが実現できたからこそ今のJリーグの成功がある。私の究極の目標は、一つのクラブがいろいろな施設をつくって、いろんなスポーツを展開して、老若男女がそこに来てスポーツを楽しむこと。Jリーグが目指す究極の目標でもあります。
――ユニクロではスポーツウエアを販売していますし、スポーツ関連の事業にも取り組んでいます。
柳井 スポーツは、個人でもチームでも楽しめるし、成長できます。多くを学ぶことができる。プレーするためにはいろいろなことを考え、選手それぞれの特長を生かしてチームで勝つことを体で覚えられます。これは人生を学んでいるようなもので、非常に面白い。
川淵 人間の感情がストレートに表れますよね。ユニクロは今年の4月20日、新聞各紙に難民支援に関する広告を出されましたね。広告を読みましたが、そこには、世界中で一人も難民を出さないために、ユニクロはいろいろな衣服を提供する、と書かれていた。そして実際、世界各国で約5000万着を提供しておられる。それだけ多くの人の尊厳を、人間として生きていく上で大事なものをバックアップしますということ。スポーツも同じです。人間は感情の生き物ですから、ステイホームで人と会話ができなかったり、感情を表せなかったりすると、気がめいってしまう。だから、スポーツやエンターテインメントは絶対に必要なんです。
――川淵相談役はこれまでスポーツ界でさまざまな改革を行ってこられましたが、あらためてスポーツの力はどこにあると思われますか。
川淵 言葉にすると矮小化されてしまうので難しいですね。私は、日本はスポーツ先進国だとは思っていません。欧米に比べると、見る、する、支えるという部分で劣っている。スポーツが生活の一部になると人生が楽しくなる。「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」というJリーグ百年構想のキャッチフレーズがそれを表している。スポーツをすることで、仲間ができて交流の輪が広がる。絶対に得だと思いますよ。そういう場所をつくっていきましょうというのが、Jリーグの原点です。
――経済界からスポーツを支えてきた柳井会長は、スポーツの力をどのように感じられていますか。
柳井 スポーツのない人生などあり得ないと思っています。特に幼少期においては、友情や勇気、チームワーク、自分自身の長所や短所、うまくても下手でもそこに参加したり、見たりすることで多くのことを学べます。私もゴルフが好きなので、年に100回くらいプレーします。ゴルフがなければ仕事なんかできませんよ(笑)。でも、そういう人が増えれば増えるほど幸せになるじゃないですか。
川淵 私もゴルフをしますが、年に100回と聞いて驚きました。それで私も昨年、年間100回プレー宣言をしたんですが、これがなかなか大変(笑)。
――今日は、楽しいお話をありがとうございました。
2003年のスタートから20年。これまで延べ30万人もの子どもたちが参加してきた
(右は内田篤人「JFAユニクロサッカーキッズ」キャプテン)
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