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2017年、新たなる挑戦~【コラム】 田嶋幸三の「フットボールがつなぐもの」vol.4~

2017年01月01日

2017年、新たなる挑戦~【コラム】 田嶋幸三の「フットボールがつなぐもの」vol.4~

日本サッカー、勝負の年

サッカーファミリーの皆さん、明けましておめでとうございます。日本サッカー協会(JFA)会長の田嶋幸三です。

「世界基準」「育成日本復活」「女子サッカーの振興」「47都道府県サッカー協会(47FA)の自立的発展」といった指針を掲げて会長に就任し、もうすぐ一年が経とうとしています。進行度合いは施策毎に異なるものの、多くの皆さまのご理解の下、順調に歩みを進めているのではないかと思っています。

まずは、皆さんが最も関心を持っているSAMURAI BLUE(日本代表)ですが、昨年11月15日、埼玉スタジアム2002で行ったサウジアラビアとの試合を勝利し、グループ2位でアジア最終予選(Road to Russia)の前半戦を終えました。この試合は、プレーの質、試合の内容ともに今回の最終予選で一番の出来だったと言っていいでしょう。

後半戦は3月23日、アラブ首長国連邦(UAE)とのアウェイ戦から再スタートを切ります。ヨーロッパから近いとはいえ、これまで同様、チームは2~3日前に集合して試合に臨むことになります。ライバルたちも3月までの3カ月間で相当な強化を図り、より高い技術や戦術を身につけてアジアの戦いに臨んでくるはずです。中東各国の力の入れようを考えると、楽な試合など一つもありません。しかも、後半戦はホームが2試合、アウェイが3試合で、最後が強敵・サウジアラビアとのアウェイ戦ですから予断を許しません。

しかし、20代前半の若手の躍進によってチーム全体に勢いがもたらされてきた過去の事例なども考えると、原口元気選手や大迫勇也選手らヨーロッパの厳しい環境を経験している若手が力をつけてきているのは明るい要素です。それにサウジアラビア戦で選手たちが見せた闘志と集中力を以ってすれば、結果は自ずとついてくるのではないかと思っています。

言うまでもなく、ワールドカップは世界最高峰の大会です。選手たちが一番、この舞台に立ちたいもの。ですから、選手一人ひとりが危機感を持ち、相当な覚悟を持って戦ってくれると思っています。FIFAワールドカップ出場は日本サッカーを発展させるための大きなファクターですから、引き続き、JFAを挙げてヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いるSAMURAI BLUEをサポートし、必ずやワールドカップの出場権を手にしたいと考えています。

すべてを「世界基準」に

昨年は西野朗技術委員長の下にアンダー世代の育成・強化に取り組み、U-23日本代表をはじめ、U-19世代、同じくU-16 日本代表も世界への切符を獲得しました。しかもU-19日本代表はアジアで初優勝という偉業を成し遂げました。

U-16日本代表は前回のワールドカップを逃し、U-19年代は4大会も世界から遠ざかっていたため、「ワールドカップ出場」を命題に、新たに予算をつけて海外遠征を実施するなど強化を図ってきました。そういった取り組みが奏功し、両チームともにワールドカップへの出場権を獲得できたことは、この先のSAMURAI BLUEやオリンピック代表にもつながると思っています。FIFA U-20ワールドカップ(韓国)が開催される5月は、この年代のトップ・オブ・トップの選手が集まりやすい時期ですから、本当の意味で「世界」と向き合う戦いになるでしょう。

FIFAクラブワールドカップでは、開催国代表として出場した鹿島アントラーズが、オセアニア、アフリカ、南米の大陸王者を破る快進撃を見せてアジア勢初の決勝進出を果たしました。日本のクラブチームが、レアル・マドリードと延長戦に持ち込む激闘を演じたことに世界が驚き、“鹿島アントラーズ”という名を知ることになりました。

鹿島も異次元の戦いを重ねる中で着実に成長しました。残念ながらヨーロッパ王者11回を誇る名門チームに敗れはしましたが、近い将来、Jクラブや日本代表が世界大会で優勝できる日が来るのではないかと思えるような素晴らしい戦いを見せてくれました。これは、国際レベルでの真剣勝負だからこそ得られた成果にほかなりません。

一方、女子は、なでしこジャパンがリオデジャネイロオリンピック出場を逃してしまい、悔しい思いをしましたが、今井純子委員長を中心に普及・育成・強化で様々な施策を打ち出し、精力的に取り組んでいます。

昨年は、U-17日本女子代表とU-20日本女子代表が世界舞台でそれぞれ準優勝、第3位と世界トップにくい込む活躍を見せてくれましたので、良い流れできていると思っています。今年は、2019年の女子ワールドカップ、2020年の東京オリンピックでのメダル獲得に向けて新たなスタートを切る年になると思っています。

フットサルは昨年、北澤フットサル委員長が中心となって様々な取り組みに着手しています。代表の指揮官に就任したガルシア新監督は、着任早々からエネルギッシュに動いており、代表はもちろん、指導者養成やユース育成にも意欲的です。

サッカーファミリーの拡大を考えたとき、フットサルの存在は非常に重要です。若者はもちろんですが、キッズ、女性、シニア層が気軽にフットサルを楽しむ環境を広げながら、選手たちの目標であり象徴である代表チームをしっかり強化していく必要があると考えています。

マルセロ・メンデス監督率いるビーチサッカーは、9月に行われたアジア・ビーチゲームズで見事優勝。キャプテンを務めた茂怜羅オズ選手は日本選手団の旗手を務め、重責のある中でチームの躍進に貢献してくれました。
来年はいよいよバハマでワールドカップが行われます。実はビーチサッカーは日本代表の中で最も世界に近い位置にいますので、是非、多くの皆さんに注目していただきたいと思っています。

2017年は、選手も指導者も、審判員も、そして、我々サッカー関係者も、全てが「世界基準」をテーマに真剣に取り組むチャレンジの年だと思っています。

今後、日常をどう変えていくか。ポテンシャルの高い若手たちにどういう刺激を与え、伸ばしていくか――。そういったことが大きなカギとなります。当然、国内での勝ち負けだけにこだわっているようでは決して世界基準には到達しません。それはJリーグだけでなく、大学サッカーや高円宮杯などの若年層の大会、トレセンも同様です。

若いうちに世界レベルを知ることで、将来の伸び代が大きく変わります。それは、世界を経験した者だけでなく、トップレベルの選手から刺激を受けた選手すべてが成長するのです。今後、若い世代が次々と日本代表に入ってくるようでないと日本がワールドカップに出続けることはできません。そのためにも、指導者・審判養成、施設の整備、「育成日本復活」「世界基準」を継続させていかなければならないと考えています。

組織も世界基準に

昨年の会長選挙で、私は「47都道府県サッカー協会(47FA)の自立的発展」をマニフェストの一つに掲げました。

12月の臨時評議員会で報告された通り、JFAの2017年度の予算は、収入が約182億円、支出は約185.6億円です。収益の大きな柱は、SAMURAI BLUEをはじめとするスポンサー収入や試合収入によるもので、これがうまくいかなくなったときにJFAや47FAの経営が立ち行かなくなるようなことがあってはなりません。そのためにそれぞれのFAが自立できようなシステムを構築しようとしています。

また、昨年9月からは、「JFAサッカーファミリータウンミーティング」を開催しています。この会議は、地域の活性化やサッカー環境の充実につなげていくことを目的に実施しており、これまで、兵庫、香川、秋田、岐阜、静岡、滋賀で行いました。

それぞれFAによって、サッカーが置かれている状況や課題が異なりますので、何が問題なのか、どういったところに解決策を見いだせるのか、それぞれステークホルダーが互いの立場を尊重しながら膝を突き合わせて議論することで良いアイデアが出されるものと思っています。

JFAは公益法人として、登録するサッカーファミリーをはじめ、支えてくださる団体、企業、個人の皆さまに対して、JFAの考えや事業などを説明する責任があります。「開かれた協会」であること、「組織の透明性」を強化するためにも、多くの人々のご意見に耳を傾け、サッカーファミリーの皆さまにJFAのビジョンや活動を理解していだだくよう関係を深めていくことが重要だと考えています。

今年も東日本大震災や熊本地震の復興支援、アジア貢献活動ももちろん、継続していく考えですし、キッズやジュニア世代のサッカーの普及、障がい者サッカーを含むグラスルーツの推進も不可欠。日本代表やJリーグをはじめとする各リーグ、指導者、審判員、スタジアムや練習施設、そして、JFAの組織も含め、リスペクトや組織力、公正さなど日本のストロングポイントを生かしながら、サッカーも組織も世界トップレベルを目指していきたいと考えています。

サッカーファミリーの皆さん、今年も日本サッカーをご支援いただきますようよろしくお願い申し上げます。

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