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[女子チームのつくりかた]大宮FCエンジェルス(埼玉県さいたま市大宮区) チームの代表・竹内謙司さんに聞きました。
2010年04月26日
チームを立ち上げようと思ったきっかけは?
私が指導をしていた、創部30年になる「東大宮コスモスサッカースポーツ少年団」に「東大宮エンジェルス」という女子チームがあったんです。女子選手が中学に進学してサッカーを続けられる環境は極めて少なかった。中学ではバスケット等の部活動をし、高校に入学して改めてサッカーに戻ってくるという選手の姿を目の当たりにしていました。選手たちからも「(U-15年代の)女子チームを作ってほしい」という声がありました。とはいえ、私も仕事があり、時間が足りなかったため、すぐには動くことができませんでした。自分が60歳になって定年を迎えたのを機に、女子チームを作ったという訳です。
立ち上げに至るまでの流れを教えてください。
まずは東大宮エンジェルス出身者を中心に選手を集めました。中学2年生が1名、1年生が3名の計4名で2004年7月からサッカースクールをスタート。2005年4月にはさらに10名が加わり、この段階で新チーム「大宮FCエンジェルス」を立ち上げました。
チームの活動をスタートするには、活動場所と指導者が必要です。U-15年代は育成において大事な年代ですので、土日だけでなく平日にもトレーニングができるように、ナイター設備のあるグラウンドを探しました。いろいろ当たっていたところ、大宮市のサッカー少年団の老舗である大宮早起きサッカー少年団の故吉田征三郎氏のご好意で土呂公園のグラウンドを月・木の2日間使用できるようになりました。
指導者については、ジュニアユースクラブの大宮FCや私が持っていた社会人チームからコーチを迎えることができました。責任を持った指導を行うには、ボランティア指導者だけに頼っていてはいろいろと無理が生じてしまうと考えています。高待遇という訳にはいきませんが、専任の有給指導者が絶対に必要だと思います。
第1期生が、少女の埼玉県選抜メンバーなどが多くいたこともあり、全国大会へ出場するなど良い結果を残してくれました。それもあって翌年には選手が27名に増えました。
これまでに生じた最大の壁はどんなことでしたか?
今も課題となっていますが、さいたま市というサッカー人口の多い地域にあるため、週末や祝日はグラウンド確保が困難になってしまいます。現在、雨天の時はミーティングや映像を見せています。多少の雨でもグラウンドを使用させてくれるところなので、トレーニングが中止になることはあまりなく、ちょうどいいスパンでミーティングを行えてはいますが、活動場所を広く確保していくことを考えると、体育館使用についても考えていこうと思っています。
独自のアイデアというものはありますか?
大切にしているのは選手たちの進む道をそれぞれ最後まで見届けるということ。選手たちの希望を聞いて、サッカーを続けたいと思う選手には、続けられるサッカー環境を探します。そのために選手個人のこと、トレーニングの内容など、できるだけ把握するように努めています。私がわかっていないとそれぞれの選手に向いているチームなのかどうかわかりませんから。大変ですが、その甲斐あってか、ほとんどの選手が高校でもサッカーを続けてくれています。うれしいことですね。
進学先の高校やクラブの指導者とも積極的に交流して課題や希望をご教示いただいています。週末には、卒業した選手の試合を見に行くこともありますよ。OGたちも、ときどきトレーニングに顔を出してくれたりもします。後輩たちにとってはいい刺激にもなるでしょうし、顔を出してくれるのは嬉しい限りですね。
チームが始動してから生じた課題とそれに対する取り組みを教えてください。
いわゆるセレクションを行わず、サッカーが大好きで上手になりたい子を全て受け入れているため、2010年4月からメンバーが総勢で70名となりました。セレクションをした方がいいとの意見もありますが、ではここで思いが叶わなかった子たちはどこへ行けばいいのでしょうか。目指すところや力に差があったとしても、2チームに分けてトレーニングを行ってもいますし、レベルアップしてトップのチームに上がることで、また新しい目標が生まれたり、サッカーの楽しさが増したりすることもあります。選手それぞれが、自分の思うサッカーに夢中になれるような環境を作りたいんです。もちろん人数が増えることで課題もさらに多くなることが予想されます。施設面もさることながら、各選手の目標をどのように受け止めるかが今後の課題となってくると思います。
また、人数が集まることで、うちのチームだけが強くなってもダメだと思うんです。今は、遠方から通っている選手もいますが、もし地元にしっかりとしたチームがあればきっとそこでプレーするはず。ここまで90分もかけて通わなくても済むわけですから。負担を考えれば、選手にとっても本当はそれが一番なんです。そういった意味ではU-15年代の女子選手のサッカー環境はまだまだでしょう。みんなで底上げをしていかなくてはいけないと思っています。
これからチームが目指すビジョンとは?
サッカーは個人競技ではありません。チーム競技だからこそ学べる人間関係もあります。技術だけでなく、そういった面でも成長してほしい。そして、サッカーには貪欲に。もっと上手になりたいと思うこと、そして何よりサッカーが大好きだという気持ちを持っている子は、長い目で見ると伸びているように感じますね。もちろんチームの勝利は必要ですが、上の年代で通用する選手の育成を第一に考えたいんです。そのためには積極的にトレセン・選抜活動に参加させ、将来は代表選手を輩出できるクラブを目指したいと思っています。
チームトレーニングレポート
大宮FCエンジェルスは総勢70名を超す大所帯のチームです。“05(ゼロゴ)”と呼ばれるのはいわゆるトップチーム。そこには中学3年生14名、2年生8名、計22名の選手がいます。セカンドチームの“09(ゼロキュー)”には“05”を狙う選手たち16名と新入生が7名の計23名がいます。
「基本は上級生でチームを作りますが、もちろん選手の能力によっては学年に関係なく、“05”へ入ることも可能です。人数が多いということは、デメリットばかりではありません。レベルを上げようとひとりで努力するのは辛いときありますが、仲間がいればくじけずに頑張れることもあります。選手がそれぞれのモチベーションを保ちながら、日々のトレーニングに臨める環境にはあると思います」とは竹内謙司代表です。
現在、トレーニングは月曜、木曜、土曜の週3回。場所は曜日ごとに変わりますが、共通しているのはすべて駅から歩いて来られる距離にトレーニング場があること。これは選手を長く一人歩きさせないように、また、親御さんが送り迎えをするという負担を背負わず、選手ひとりひとりの行動に責任を持ってほしいということから、貫いていることだと竹内さんは言います。
この日のトレーニングは朝10時~12時までの2時間。学年ごとに分かれてリフティングやパス回しなどでウォーミングアップを行ったあと、チームに分かれてミニゲームを行いました。「1年生はまず基本技術ですね。その後、1人で守る、1人で攻めるといった動きを身につけます。その上でマークの原則を理解させていくようにしています。後は人数を増やして、スペースを広げていく。これを1年かけて行います。2年生になると、今度は“2人で崩す”。その人数を増やしていく。攻撃も同じです。3年生はこれまでやってきたことを踏まえて、チームとして、また個人として質を上げていくことになります」と語るのは、その時々でテーマを変えながらメニューを考えているという宮内一監督。宮内監督は時折プレーを中断し、選手たちに問いかけ、選手自身に考えさせながらプレーを導き出していきます。
「この年代だから、女子だからということは、特に難しく考えていません。とにかくサッカーを好きでい続けてほしい。スポーツの世界ですから、能力があればトップ選手になることができます。でもそれがすべてではありません。コーチやママさん選手になることだってあるかもしれない。サッカーが好きだという気持ちがあれば、きっとサッカーの何かに関わりたいと思うもの。そういう風に思える人に成長していってほしいと思っています」(宮内監督)。
指導スタッフの方々の思いは選手たちにも伝わっています。「このチームは本当に仲がいいんです。でもただ仲がいいんじゃなくて、信頼関係がある。トレーニングは厳しいときもあるけど、全国制覇という目標があるので、がんばれるんだと思います」と話してくれたのはキャプテンの山崎萌子さんです。トレーニングを見て感心したのは、厳しさも含めて“サッカーの楽しさ”を選手たちがしっかりと受け止めていること。 どこのチームにでもできるものではないと語るのはトレーニングを見学にきていた埼玉県サッカー協会の小澤純さん。「現在は埼玉県にU-15女子チームが約20チームの登録がありますが、実際に活動しているのは14チームくらいでしょうか。その中でも、このチームは仲良しクラブのようなぬるさはなく、かといって勝利を追求するために生じやすいギスギスしたところもない。とても魅力のあるチームです」という小澤さんの言葉が示すように、指導者、選手の距離感が絶妙。自立を促しながらも、ひとりひとりの進路やメンタル面の問題などにもとことん向き合ってくれる。選手たちがのびのびとプレーできる環境の裏側にはスタッフの方々の、厳しくもあたたかいまなざしがありました。
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