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アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第33回 小原一典 カンボジア技術委員長

2018年04月05日

アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第33回 小原一典 カンボジア技術委員長

アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第33回は、カンボジアサッカー連盟(FFC)の技術委員長を務めている小原一典氏のレポートです。

カンボジアでの活動が4シーズン目に

グラスルーツやユース育成の基盤がないということは2015年の就任前にJFAから情報を得ていました。カンボジアに着任後、まずは様々なサッカー活動に足を運び、関係者の話を聞いてカンボジアサッカーの状況を理解するように努めました。AFC(アジアサッカー連盟)の助成予算を活用してFFCが雇用している約40名の育成コーチ達とミーティングを行い、日々の活動も視察しました。彼らの活動が更に充実するよう、ナショナルアカデミーと協力してワークショップを行うなど育成コーチの統括を2016年末まで行いました。

2017年に入ると、FFC会長のイニシアチブで全国に通い型のアカデミーの新設に向けて、カンボジア教育省の協力のもと、「サッカー指定校」を作るプロジェクトがスタートしました。まず1月~3月にかけてグラウンドと学校を調査するために全国を巡り、4月から再び各県を訪れて、コーチの選定、選手のセレクションを行いました。5月、第1号となるスヴァイリエン州での開校式はテレビ中継され、その後順々に指定校を立ち上げていきました。11月、既に設立された12州のスポーツ指定校とクラブのユースチーム、ナショナルアカデミーが参加してユースリーグがスタートしました。地域ごとに4グループに分けホームアンドアウェイ方式のリーグ戦、上位2チームが決勝ラウンドを行い、2018年3月17日に決勝戦が終了しました。

サッカー指定校のプロジェクトが根付くために

カンボジアには州ごとにサッカー協会が存在しないため、教育省スポーツ育成局の支部と協力していかなければなりません。サッカー協会と教育省では管轄と指揮系統も違うので、いくつかの地方では話を理解してもらえず、相手にされませんでした。また縁故採用が多く、スポーツ育成局の推薦するコーチの採用が協力の条件ということもありました。定員以上のコーチ希望者がいる州では指導実践を元に選考を行いました。

遂にこの2月に25州すべての州でスポーツ強化校の設立が完了しました。レベルアップを図るには今後の活動が重要になりますが、全国にスカウティングシステムとFFCの活動拠点設立は大きな効果があったと思います。3月初めには全国25の強化校から選手を推薦してもらい、強化校立ち上げの時のセレクションデータ、ユース決勝ラウンドの視察を通して選手選考を行い、ナショナルアカデミーのセレクションに選手を送りました。

FFCの育成スタッフ3名と協力しながら、スケジュールやレポートの管理、視察、統括を行っています。提出された練習スケジュールの時間に視察に行っても、グランドに誰もいないなど、油断すると連絡なしに活動がオフになっているスポーツ強化校もありますが、ユースリーグが始まり、活動が盛んになったことは確かです。

タレントのある選手が一人でも発掘され、ナショナルアカデミーや強豪クラブに選手を送ることができれば成功でしょう。それよりもユース育成の基盤として、コーチ、選手のレベルアップを図り、スポーツ強化校が成長すれば、近い将来、強豪国になる可能性を秘めていると思います。

サッカーが持つ力

カンボジアで日本はアジアのサッカー強豪国としてリスペクトされています。FFCにも私を含め3人の日本人指導者(審判ダイレクターの唐木田徹氏、U-18ナショナルアカデミーヘッドコーチの水島武蔵氏)が勤務しており、カンボジアサッカーのレベル向上を期待されています。カンボジアのトップリーグは12チーム中2チームが日系のチームで切磋琢磨しており、リーグ全体では20名以上の日本人が選手やスタッフとして活躍しています。グラスルーツでは日系のサッカースクールがあったり、地方では日本人の団体がサッカー教室を開いたりという情報を耳にします。国際交流においてサッカーがより効果的なのは、カンボジアでサッカーの人気が高く、アジアの強豪国である日本に学びたいという関心が高いのが理由です。そう考えるとカンボジアサッカーに関わっている者として身の引き締まる思いです。

最後に

日本サッカーの活躍が日本人指導者の評価のベースになります。日本にはW杯優勝を目指してアジアのリーダーとして突っ走ってほしい。ただ、ヨーロッパや国内ばかりに目を向けて、アジアを忘れていませんか?アジアのレベルアップなくして、アジアのチームが世界で活躍することはありません。もっと多くの日本人指導者がアジアに挑戦し、活躍することを願っています。

 

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