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アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第23回 中村恭平 トルクメニスタン フットサル代表監督
2016年12月14日
アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第23回は、トルクメニスタンサッカー連盟(TFF)でフットサル代表監督を務める中村恭平氏のレポートです。
長年の交流を経て代表監督に
2011年11月にTFFからの要請で同国フットサル代表チームを初めて指導しました。2012年のAFCフットサル選手権、更に2013年のアジアインドア・マーシャルアーツゲームズ仁川で監督として指揮をとり、トルクメニスタン本国での選手指導や指導者講習会開催などの協力関係を続けてきました。2016年7月からは本格的にトルクメニスタンに赴任し代表監督を務めています。目標は、2017年にトルクメニスタン史上初の開催となる国際スポーツイベント「アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ2017」でのメダル獲得です。
トルクメニスタンのフットサル事情
同国史上初の国際スポーツイベント開催にむけて巨大なスポーツ施設や選手村が建造中で、フットサル会場は、1万5千人収容の最新式アリーナが既に完成しています。自国開催で何としてもメダルを獲得したいとTFFが考える一方、フットサルの環境は決して恵まれたものとは言えません。この国では、サッカーの人気は高くプロに近い環境での練習が可能ですが、彼らにとってフットサルは職業ではなく趣味の領域なのです。ほとんどの選手たちは社会人や学生なので、ある程度の年齢とともにフットサルから離れるため、代表チームは経験が少ない22歳前後の若い選手たちが中心となります。多忙な彼らを頻繁に集めて代表チームの練習を行うことは非常に困難です。
2017年メダル獲得への挑戦
短期間で強化を図るには集中的に技術的な課題をクリアし戦術的な理解も深めなければなりません。自身の監督就任の絶対条件として、日本での指導経験が豊富で指導者養成インストラクターも務める前川義信コーチの招聘をTFFに依頼しました。現在私は前川コーチとひとつ屋根の下で共同生活をしながら強化計画を練りトレーニングを行っています。
プロではない選手たちは、代表チームの練習といえども集まる人数が流動的なため、少しでも早く我々の考えるフットサルを具現化するためには各クラブでの練習の充実が必要です。そこで、朝8時から代表チームの練習を行った後に、選手達が所属するクラブの監督、コーチに基本的な技術や戦術的な練習方法やトレーニングデザインなどを教えています。
選手たちには、徐々に我々の熱量が伝わっているようで、積極性が増しています。未知の戦術と規律を求めるトレーニングに戸惑いながらも一生懸命に取り組む選手の中には短期間で目を見張る成長を遂げている選手もいます。特に、規律を重んじ、常に100%のファイトを求める前川コーチの指導は戦場のようで、緊迫した雰囲気が彼らのやる気を引き出し充実した練習が出来ています。
一方、監督である私の役割は、メダルを取ることを常に意識させること。この困難な挑戦を指導者である私自身が信じることが出来なければ何も結果は出せません。選手たちには、すべての国民のため、またトルクメニスタンのサッカーを含めたフットボール全体のためにもこの大会でメダルを獲得することがとても重要であると言い続けています。大会が始まる2017年9月までには、自ら発言するようになってくれることを信じています。
日本キャンプの実現
国際経験の少ないトルクメニスタンのフットサル選手に今一番必要なのが、本当のフットサルを見て、体験することでした。様々な事情を調整した結果、アジアサッカー連盟(AFC)と日本サッカー協会(JFA)の支援を得て、11月17日から30日まで東京都府中市で初めての海外キャンプを行いました。
来日当初、選手たちは日本の経済的な豊かさと24時間コンビニエンスストアが開いている平和な世の中に驚き浮かれていましたが、日本の練習環境とレベルの高さ、戦術の緻密さなどに驚き、目の色を変えてトレーニングに励んでいました。特に、日本最高峰のFリーグ観戦は、彼らのハートに火を付けたようです。自分たちが多くの観客の前で試合をすることをイメージできるようになったのか、俄然やる気をもって練習でファイトするようになったのです。
FFT関係者やコーチングスタッフは、クラブの経営力の高さ(監督・コーチ・トレーナーの存在、自分たちでスポンサーを獲得するなど)、老若男女がフットサルを楽しんでいること、小さな子供たちまで戦術理解をしながらフットサルをプレーしていることなどに驚きを隠しませんでした。ここまでくれば、キャンプの目的はほぼ達成です。
全敗を覚悟して行った練習試合の結果は2勝4敗でしたが、今年3月に全日本選手権で優勝したペスカドーラ町田との最終戦は、最後残り3分まで1-0とトルクメニスタン代表チームがリードし、あわや大番狂わせを演じる寸前でした。シーズン中にもかかわらず、このような貴重な経験を積ませていただいた各クラブの関係者の皆様、更に、急な申し出にもかかわらず受け入れてくださった日本サッカー協会に、この場を借りお礼を申し上げます。
最後に
日本サッカー黎明期に代表チームの若い選手達がドイツで積んだ貴重な経験が現在の日本サッカーの礎となったと聞いています。時代が移り、こうして自分達がトルクメニスタンフットサルの発展に貢献していることはとても意義深いことです。将来、今回彼らが日本で経験したことを後に伝えてくれたらと願うばかりです。
JFA公認海外派遣指導者
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