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【SAMURAI BLUEを支えるスタッフ】シェフ 西芳照氏 FIFAワールドカップカタール大会を終えて
2022年12月28日
FIFAワールドカップカタール2022での戦いにおいてSAMURAI BLUE(日本代表)を食事の面でどのようにサポートしたのか、専属シェフの西芳照氏に話を伺いました。
※このインタビューは2022年12月19日にオンラインで実施しました。
安心安全で温かくおいしい料理を食べてもらいたい
――まず、ドイツ戦の4日前(11月19日)、チームの集合写真の撮影の際、西さんがユニフォーム姿になって森保一監督と吉田麻也選手の間に入るというサプライズで、場を和ませていましたね。
西 撮影当日の朝にJFAのスタッフから「記念撮影なので西さんも一緒に入ってください」と言われましたが、食事の仕込みもやらなければならないので一度は断ったんです。それでもぜひとお願いされたので、私も「分かりました」と。まさかユニフォームを着るとは思ってもみませんでしたけど(笑)。少なくとも森保監督と吉田キャプテンには好評だったみたいなので、良かったです。
――グループステージ初戦のドイツ戦に向けて、食事会場から伝わってくるチームの雰囲気はいかがでしたか。
西 明るくて良い雰囲気でしたね。各テーブルからは「負ける気がしない」というような話も聞こえてきましたから、私も心の中で「頼もしいな。やってくれるだろうな」と思いながら皆さんを見ていました。
――夜のメイン料理は、選手のリクエストもあって試合の3日前にビーフハンバーグ、2日前に銀ダラの西京焼き、そして前日にウナギのかば焼きと、決まったローテーションでいきたいと話していましたが、実際その通りになったのでしょうか。
西 (19日の)記念撮影の日にハンバーグを仕込む予定でしたが、それができなかったので、先に仕込んでいた銀ダラの西京焼きとハンバーグの順番を入れ替えました。それで、銀ダラ→ビーフハンバーグ→ウナギのローテーションになりました。選手の皆さんから特に何も言われなかったので(ローテーションの変更を)受け入れてくれたんじゃないかと思います。
――今回は栄養士兼調理師の方との二人体制でした。夜の食事だと何品くらい用意されたのですか。
西 ビュッフェに並べるのは大体ビーフ、チキン、魚、野菜をそれぞれ一品ずつ用意して6品くらい。ライブクッキングでヒレステーキも焼きます。いつもそんな感じでしたね。権田(修一)選手から試合の前夜はサンマのつみれ汁を食べたいというリクエストがあったので、決まって出すようにもなりました。米は新潟のものと北海道のもの。安心安全で温かくておいしい料理を食べてもらいたいということはこれまで通りです。
――ドイツ戦はスタンドで応援されたと伺いました。
西 確か43分くらいまで見ていたんです。スコアは0-1の状況でしたが、ホテルに帰ってきてからの選手の皆さんが食べるカレーライスの準備をしなくてはならなかったので、ほかのスタッフと少し早めに(スタジアムを)出ました。地下鉄に乗ってホテルの最寄り駅で降りましたが、そこからタクシーが全然つかまらなくて30分くらい待ちました。ホテルには準備時間ぎりぎりで戻れました。逆転して勝ったと聞いたときはうれしかったですね。選手の皆さんは、まだ初戦が終わっただけだと、落ち着いた感じでした。食事の準備がぎりぎりでは駄目だと思い、2試合目のコスタリカ戦、3試合目のスペイン戦はスタジアムには行かず、ホテルで応援するようにしました。
――中3日というタイトなスケジュールの中、食事ではどのようなサポートをされたのでしょうか。
西 疲労回復の促進には鉄分がたくさん含まれているものが良いので、鶏のレバー、ラムのレバーを使った料理のほか、アサイーやプルーンなども毎食のように出すようにしました。
――スペイン代表に勝った日の食事会場の雰囲気はいかがでしたか。
西 ドイツ戦のときとは違って、かなり盛り上がりましたね。堂安(律)選手が大きなスピーカーで音楽を流し、みんなで食事をしながら喜びを分かち合って。今、思い出しても最高の夜でした。
――ラウンド16でクロアチア代表にPK戦の末に敗れ、チームはその翌日に解散となりました。森保監督から言葉を掛けられたそうですね。
西 私と27歳の栄養士の前に来られて、「私自身、若い選手から多くのことを教わりました。西さん、若い人たちをどうぞ育ててください」と。いただいたその言葉を大事にしたいと思います。
――ホテルを離れる際、手伝っていただいたホテルのスタッフに対して折り鶴とメッセージカードを置かれたそうですね。
西 素晴らしいスタッフの皆さんに支えられたおかげで何のトラブルもなくやり終えることができましたから。最後にスタッフの皆さんからケーキまでいただいて、本当にうれしかった。感謝しかありません。