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特別な環境下での東京オリンピック ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.105~
2021年12月16日
コロナ禍で開催された第32回オリンピック競技大会(2020/東京)が2021年8月8日に閉幕した。特別な環境下で開催された大会だけに、参加した選手はもちろんのこと、大会役員やボランティアの方々など、参加すると決断した人たちでさえも、さまざまな思いを胸に抱いて臨んだ大会だったと思う。
10年ほど前にオリンピックに関わったとき、自分が今までに参加した国際大会よりも、はるかに多くの人が関わっていることに驚いた。特に大会を支えるボランティアの数が多く、その方々に親切にしていただいた思い出がある。大会に直接関わらない一般の人たちも、訪れた私たちを温かく迎え入れてくれた。現地に滞在中、多少のトラブルがあっても、それは良き思い出。老若男女にかかわらず、普段スポーツに興味がある人もない人も、自分たちの国を誇りに思い、お互いに関わることを楽しんでいるように感じた。「スポーツを通じてこんなにも人とつながることができるなんて」と、感動した。
ある会場に行ったとき、あまりのすばらしさに感動したことを覚えている。準備に関わった人たちが誰なのかは分からないが、説明などを聞かなくても、その日を迎えるまでにどのように準備をしてきたかを想像することができた。その思いを想像するだけでも、自然と力が湧いてきた。準備をしているのは選手だけではなく、そこに関わる全ての人たち。そこに言葉はなくても、関わった人たちの思いが力になった。
今回の東京オリンピックは特別な状況下での開催ということで、関わる人の数も制限され、選手の皆さんもさまざまな規制の中で生活を送らなければならなかった。現在の社会状況を考えれば、大会参加のために規制のある中で生活をしなければならないことも十分に理解できるであろうし、このような状況の中で、複雑な思いで参加を決断した選手の気持ちも理解できる。
海外からの観客はいないし、ほとんどの競技が無観客での開催だったため、オリンピックの雰囲気を肌で感じることは難しかったかもしれない。だがしかし、画面越しでも全力を尽くす選手の真摯な姿勢や、試合を終えた選手たちのインタビューから、いつも以上に身近な人以外に対しても思いをはせて臨んだ選手が多かったように感じた。
「参加することに意義がある」は、その場にいれば良いという意味ではない。その場で最大限の努力をすることであり、人生で重要なのは成功ではなく努力すること。「大切なのは勝利したかどうかではなく、よく戦ったかどうか」であると添えられている。
今回の大会では、選手たちがさまざまな思いを抱えながらも、競技となればのびのびと全力を尽くしている様子が印象に残った。成功しても失敗しても、全力を尽くした相手や仲間をたたえて、お互いがリスペクトし合っている様子を見ることができた。その様子がとても自然に映り、とても美しかった。自然に表現できる選手たちのそばには、日頃の指導者や身近にいる人たちの関わり方も大きく影響しているのではないかと思った。
【報告者】山岸佐知子(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2021年9月号より転載しています。
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