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ポジティブな価値観や取り組みのパワーを大切に ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.109~

2022年08月31日

ポジティブな価値観や取り組みのパワーを大切に ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.109~

日本サッカー協会(JFA)は、子どもたちが楽しく、安全に、安心してサッカーに打ち込めるよう、リスペクト・フェアプレー委員会を中心に様々な取り組みを行い、暴力や暴言、ハラスメントのない健全なサッカー環境の実現を目指しています。9月24日(土)に開催されるリスペクトシンポジウムでは、その一つの取り組みであるセーフガーディングポリシーについて皆さまと共有し、子どもたちの将来の可能性をいかに育んでいったらよいかを考えていただく機会にしたいと思います。

そこで今回は、テクニカルニュースVol.109 5月号より、リスペクト・フェアプレー委員会の今井純子委員長によるレポートをご紹介します。


ネガティブの排除と ポジティブの促進を同時に

2022年3月の日本サッカー協会(JFA)の役員改選にて、JFAリスペクト・フェアプレー委員会の委員長を拝命しました。どうぞよろしくお願いいたします。

2008年より始まったリスペクトプロジェクトでは、日本サッカーにとって大切な価値観としてさまざまな取り組みを行うと同時に、その発信を続けてきました。私自身、女子の代表チームに帯同した経験からも、各年代の日本女子代表が非常にリスペクトあふれるチームとして、大会が進むにつれ、どんどん皆さんに応援される空気感が広がっていくこと、それがチームの力になることを強く感じてきました。

狙ってとりにいくことはありませんが、結果として、優勝とフェアプレー賞を同時に獲得することも多くありました。これは、代表チームだけが約束事として取り組むということでは必ずしもなく、全国で、サッカーを始めた年代からの所属チームでの日常で、しっかりと取り組まれているからこそであり、全国の関わる皆さんと喜びを共有すべきものと考えてきました。これは、もちろん女子に限ったことではありません。

SAMURAI BLUE(日本代表)が2018FIFAワールドカップロシアにて、ラウンド16での敗戦後にロッカールームを清掃して残した「スパシーバ(ロシア語でありがとうの意味)」のメッセージ、あるいはサポーターが試合後に会場を清掃したこと、日本サッカーはこうした価値観を今後も決して失うことなく、持ち続けていく、持ち続けていけると考えています。


2018FIFAワールドカップロシアより

一方で、サッカーの指導現場における暴力・暴言の根絶に2013年から取り組んでいます。これは非常に大きな課題であり、さまざまなケースが後を絶ちません。指導者による暴力・暴言、仲間同士の問題、審判への異議など、日本サッカー界全体で改善していくべきものです。サッカーに関わる全ての人が役割・責任を持ち、当事者意識を持って取り組まなければいけません。

暴力等根絶相談窓口やウェルフェアオフィサーの配置などをはじめ、多方面からの取り組みが必要になりますが、今後はより全国のチームでの日常へ、確実に広がるように進めていきます。大事に発展し、爆発してしまうところまでいってしまうと、解決は非常に難しく、良い状態に復元することが困難なケースが多いです。もっと小さな兆しのうちに、違和感を伝え合えるようになれないか。ただし、簡単なことではありません。だからこそ、そうなれる前提をつくった上で、と考えています。そのためにも、ウェルフェアオフィサーを各クラブに広げ、クラブでの取り組みに広げていきます。

ネガティブなものを排除していくと同時に、ポジティブなことを促進していく。ポジティブな価値観や取り組みのパワーを大切にしていきたいと考えています。

子どもたちに伝え 子どもたちと考える大切さ

2021年、JFA100周年記念事業の一つとして、新たな100年に向けた未来を考える「JFA子ども会議」を開催しました。U-12、U-15、U-18の各グループで、それぞれ3回のオンラインミーティングを行いました。「サッカーのどこが好き」「こうだったらもっといい」といったことのほかに、トピックとして、日本サッカー100年の歴史、そしてリスペクト・フェアプレーを伝えて、考えてもらいました。その結果、「子ども会議をもっと増やし、リスペクトを広めたい」という声が聞かれました。また、「大好きなサッカー、もっとこうだったら…」というトピックでは、「悪口をなくしたい」「いじめをなくしたい」「ラフプレーをなくしたい」などの声がありました。子どもたちに伝え、子どもたち自身と考えることの可能性と大切さを、あらためて実感する機会となりました。

昨年まとめた「JFAセーフガーディングポリシー」では、「子どもたちの声を聞き、対話する」を掲げました。大人の「こうに違いない」という予想で思考を停止せず、本人たちの声を聞くこと、本人たち自身に知らせること、考えさせることの大切さは、特にセーフガーディングの面で世界のサッカー界でも言われるようになっています。こちらについても、ぜひ全国の現場で実施していただきたいですし、具体的なやり方のサンプルの提示をしていくようにしたいと考えています。

【報告者】今井純子(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2022年5月号より転載しています。

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