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全日本大学フットサル大会選手たちが伝統を築く中で育まれる責任感 ~いつも心にリスペクトVol.8~
2014年01月01日
今年で9回目の開催を迎えた「全日本大学フットサル大会」。フットサルに情熱を注ぐ学生たちが集結し、日本一の座を懸けてしのぎを削っている。JFAフットサル委員会の柴沼真委員(大阪成蹊大学フットサル部監督)は本大会の位置付けを、「全国の大学フットサル選手にとって、この舞台に立つことは唯一かつ絶対の目標」と説明する。
第1回から本大会を主管してきた大阪府サッカー協会の吉川元章フットサル委員長は、学生たちの意識に変化を感じている。スタート当初は普及の色が濃く、大会自体もレベルを競うというより、フットサルを楽しむ色合いが強かった。しかし近年、真剣にフットサルに打ち込む競技志向のチームが増えてきたと言う。「当初は試合に負けても悔しさがあまり伝わってこなかったが、この頃は負けた悔しさから涙を流す選手の姿が多く見られるようになった」と吉川委員長。それと同時に、「責任のある行動も見受けられるようになった」と言う。その一つが会場のゴミ管理だ。
大阪府協会は、参加チームにゴミを持ち帰るよう促しているが、なかなかゴミはなくならなかった。それがここ2、3年で徐々に減り、今年は、「会場の清掃をしている人から『この大会はほとんどゴミが出ないね』と言われた」(吉川委員長)ほど。学生たちが率先してゴミを持ち帰った結果、今年はゴミがほぼゼロだった。柴沼委員も、「どのチームも自主的に、自分たちが使った場所はきれいにしようと心掛けています。学生たちは自立した存在ですし、自分たちでやらなければいけないことを考えて行動できる。頼もしいですね」と目を細める。
今年2連覇を達成した順天堂大学ガジルのマネジャー本間稚菜さんは、「『忘れ物をしない』『ゴミは置いていかない』は徹底しています。水で濡れたベンチを拭いたり、ゴミを拾うことも先輩マネジャーの姿を見て学んできたことなんです」と話す。先輩たちの後ろ姿を見てきた彼女たちにとって、それは当然かつ“自然”な行動だった。今大会もゴミは全て持ち帰った。「ミネラルウォーターを大会側から支給していただいたのですが、チーム数を考えただけでも結構な数になり、空のペットボトルを全部会場で処分するとなると大変です。ですからホテルまで持って帰ろうと。電車などではまるでサンタさん状態でした(笑)」と本間さん。
そうした姿勢を徹底する背景には、「日本一にふさわしいチーム、マネジャーでありたい」という思いもある。大学フットサル界では伝統と実績のあるガジル。試合会場でも移動する時も、背負っているのはガジルの看板だ。先輩たちが紡いできたガジルの伝統と誇りを大切にし、それを後輩たちにも引き継いでもらいたい。そう考えている。
今大会、ガジルは大会の盛り上げにも一役買った。それは応援団によるハーフタイムの独特な応援で、会場のどこかに隠れた選手を、他の選手たちが「○○はどこだ?」と歌って会場を探す。すると、隠れていた選手が「○○はここだ」と姿を現し、最後にみんなで「○○がいたぞ」と歌って終わるというもの。観客もその応援を一緒になって見守るようになり、会場が一体となって大会を楽しむ雰囲気に包まれた。試合に出たくても出られない悔しさをのみ込んで、応援に全力を注いだ選手たちの功績だろう。ピッチの上では真剣に、そして、フットサルを楽しむことも忘れない。これもまた、ガジルの魅力であり伝統なのかもしれない。もともとサッカーが好きだった本間さんだが、「フットサルの楽しさは、ガジルというチームにいるからこそ知ることができました。ガジルのフットサルを見れば、皆が私と同じように感じてくれると思います」と熱く語る。
「自分たちの伝統を残そう、先輩たちに習おうという考えから部活動化していくチームは急速に増えています」と、近年の傾向を分析する柴沼委員は、「選手たちが、自分もフットサルの普及・発展に貢献できるという意識を持つことが、日本のフットサル定着につながると思う」と学生たちに期待を寄せており、選手たちの戦いを見守ってきた吉川委員長も「青春の1ページとして、いつまでも心に残る大会になってくれれば」と思いを語る。
「この人たちのために頑張りたい」。本間さんにとって、そう思えるチームと仲間たちの存在は何より大切な宝物だ。4年生の本間さんは、12月15日の関東大学フットサルリーグで引退する。無敗優勝の懸かった大切な一戦。最後まで選手たちをサポートする。
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