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永遠の友人 ~いつも心にリスペクト Vol.93~
2021年03月17日
昨年12月19日に行われたJ1リーグの最終節、浦和レッズ対コンサドーレ札幌の試合が終わった後、感動的なシーンがありました。札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督が、勝った自チームの選手たちを祝福する前に浦和のベンチに歩み寄り、全選手、全スタッフと言葉を交わし、ハグをしたのです。
もちろん、ペトロヴィッチ監督は2017年までの浦和の監督です。札幌を率いて3シーズンになりましたが、今でも浦和の選手やスタッフをかけがえのない友人たちと思っていることが、とてもよく感じられました。その飾らない姿勢に浦和のサポーターたちも感動し、ペトロヴィッチ監督に盛大な拍手を送りました。
チームゲームであるサッカー。さまざまな理由で、選手たちはクラブを移っていきます。他クラブから好条件を出されて移籍する場合もありますが、その一方で、新年度の「チーム構想」から外れ、新しい所属先を探さなければならない選手もいます。監督たちも、成績が悪ければ解任され、新しいオファーを受けて、それまでのクラブの「ライバル」になることも珍しくありません。
しかし別々のチームになっても、短期間でも一緒に練習し、共通の目標を目指してプレーした選手や監督、さらにはスタッフたちの「絆」は、そう簡単に壊れるものではないようです。
西大伍選手(ヴィッセル神戸)については、このコラムの19年5月号でも書きました。試合後、相手チームの監督の記者会見後にわざわざ探しにきて、あいさつをしたという話でした。
そして昨年12月、西選手は再び大きな話題になりました。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝、韓国の蔚山現代との試合後の1枚の写真が、自身のインスタグラムで公開され、それが大きな共感を得たのです。
その写真には、西選手と蔚山現代のDF鄭昇炫(チョン・スンヒョン)選手がにこやかに肩を組んで映っていました。
この試合については、記憶に残っている人も多いと思います。ACL初出場で準決勝進出を果たした神戸。攻撃の中心であるイニエスタ選手を故障で欠き、苦しい試合となりましたが、後半に山口蛍選手のゴールで先制、さらに安井拓也選手のシュートのリバウンドを佐々木大樹選手が押し込み、勝利を決定的にする2点目かと思われました。
しかしビデオアシスタントレフェリー(VAR)が入り、攻撃の起点となった安井選手のプレーがファウルと判定されて結局ノーゴール。その直後に同点とされ(これは最初オフサイドの判定でしたがVARでゴールが認められました)、延長戦の後半にPKで1点を失って神戸は涙をのみました。「取り消し」になった「幻の2点目」は大きな議論になり、神戸はアジアサッカー連盟(AFC)に意見書も提出しました。
この試合、西選手はフル出場し、鄭昇炫選手は後半半ばからの出場でした。しかし西選手のインスタグラムに掲載された写真には、120分間の死闘も、VAR判定に対する不満の表情もありません。
この2人は、18年に鹿島アントラーズでチームメートでした。今年のACL準決勝では西選手は右MFとして攻撃的な役割を担いましたが、鹿島ではともにDFとして活躍、ACL優勝に大きな貢献をしました。たった1シーズンでしたが、DFラインで隣に並んでいた選手同士、強い信頼関係があったのでしょう。
選手や監督が次々とクラブを代わり、「移ろい」が激しい競技であるサッカー。少し前までのチームメートが時にライバルになるのは、寂しく、悲しいものです。しかし、たとえ対戦相手になっても、かつて一緒にプレーした選手同士の友情は失われず、逆に深まり、周囲の人々にも広がっていくというのは、サッカーの素晴らしさの一面でもあります。
西選手は、インスタグラムの写真に、こんな言葉を添えています。
「みなさん(応援)ありがとうございました。スンヒョン頑張れー」
寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会機関誌『JFAnews』2021年1月号より転載しています。
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