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リスペクトプロジェクトの先輩、イングランドサッカー協会に学ぶ ~いつも心にリスペクト Vol.1~

2013年05月31日

リスペクトプロジェクトの先輩、イングランドサッカー協会に学ぶ ~いつも心にリスペクト Vol.1~

リスペクトを考える

日本サッカー協会(JFA)は2009年度にJリーグと共同で立ち上げた「リスペクトプロジェクト」を経て、2010年には「リスペクト・フェアプレープロジェクト」(*1)をスタート。FIFAフェアプレーデー(*2)に当たる2011年9月3日には、「リスペクトF.C.JAPAN」(以下、リスペクトFC)を創設した。ホームページ上に設置したクラブハウスを拠点に、趣旨に賛同する仲間が集ってチームを結成し、連帯感を持って“リスペクト”の精神を広めている。これらJFAがリスペクトプロジェクトを遂行する上で参考にしてきたのが、リスペクトの先進国・イングランドサッカー協会の取り組みだ。日本スポーツ界の指導現場における暴力行為が問題視される昨今、リスペクトプロジェクトの果たすべき役割は一層強まっている。

心豊かなサッカー文化を

イングランド協会は、2008シーズンから、リスペクトを推進する「リスペクトプログラム」に着手した。その背景にはリスペクトを啓発しなければならない切実な問題があった。

一つはレフェリーを取り巻く環境だ。当時、国内のトッププロリーグであるプレミアリーグでは、レフェリーに対する異議の数が増え、レフェリーを侮辱する行為まで見られるようになっていた。有名な選手を擁し人気を博すプレミアリーグは世界中で放映される。フェアプレーに反する行為が注目を浴びるのは由々しき事態だった。しかも、レフェリーに対する大人の批判的な態度を子どもたちがまねをする悪循環も生まれていた。そんな環境下、レフェリーに熱意を持てずに辞めてしまう者は多く、一方で新たにレフェリーをしたいと思う者も少なかった。

また、ユース年代では、子どもたちのプレーに自分の考えを押し付けるなど、勝敗にこだわる大人たちの猛威が、子どもたちから楽しいサッカーを奪っている状況も見受けられた。これでは、子どもたちのサッカーは上達しないばかりか、サッカーを好きになる気持ちさえ奪いかねない。イングランド協会はこれらの課題を解決すべく、リスペクトの大切さを訴えるさまざまな施策を講じた。まずは、「レフェリーがいなければ試合が成立しない」ことを、プロモーション映像を作成して発信した。当時の代表監督だったファビオ・カペッロ監督らを採用し、インパクトのある映像に仕上げた。プロレベル(プレミアリーグ、フットボールリーグ)では、試合前に両チームのキャプテンとマネジャー、レフェリーによるミーティングを行い、協力関係を確立。キャプテンにはレフェリーをアシストする重要な役割を与え、プレー中に問題が起こった際は仲裁に入るなどチームメートの行動に責任を持たせた。

ユース年代においては、子どもたちの試合中に保護者や観戦者が影響を及ぼさないようピッチから遠ざけるタッチラインバリア(観戦者エリア制限)を設置した。その他、指導者や保護者向けの啓発ツールを作成したり、説明会を開催するなど、リスペクトの大切さを継続して投げ掛けてきた。

2009年には「Respect Awards」を新設し、クラブ、リーグ、個人などの11部門でリスペクトに関する功績を表彰。初年度はウイリアム王子が、2年目はデーヴィッド・キャメロン首相が各賞を贈呈し、権威あるアワードとしてリスペクトの価値を高めている。2011年には、リスペクトFCのモデルにもなった「Respect F.C.」を設立し、クラブ員が団結力を持ってリスペクトを推進できる場を創出した。リスペクトFCをはじめ、JFAが昨年新たに設置したリスペクトアワードもまたイングランド協会のRespect Awardsに倣っている。

これらの努力は、しっかりと実を結んでいる。2007年に2万2918人だったレフェリーは2012年には2万8700人に、2011・12シーズンのリスペクトレポートでは、参加者の振る舞いやレフェリーが試合を楽しめたかなどについて、ポイント平均が5点満点中4点を超えた。プロレベルの試合では、2008年以降、異議による警告数が17%に減少(5試合に1件)。ユース年代のサッカー環境も改善されてきているという。

2011年9月3日、リスペクトFCのキックオフイベントに立ち会ったイングランド協会リスペクトマネージャーのDermot Collins氏はこう話している。

「イングランドはワールドカップ優勝から50年遠ざかっている。我々はより低年代からテクニカルな選手を育成していかなくてはいけない。そのためにはポジティブなプレー環境が必要だ。エラーしても再度トライできる環境を与えていかなければいけない」

サッカーが大好きな子どもは、テクニックを磨くための努力を惜しまないだろう。選手、指導者、レフェリー、サポーター、サッカーに関わる全ての人々が互いを“大切に思う気持ち”が、大好きなサッカーをより楽しめる環境を創造するはずだ。人の心、環境を変えるには時間と労力がかかる。しかし、リスペクトがあってこそ、サッカーは愛されるスポーツとして普及し、発展する。今後も、JFAはイングランド協会と切磋琢磨しながら、“フェアで強いサッカー”を目指していく。


(*1)2012年7月12日、リスペクト・フェアプレープロジェクトは「リスペクト・フェアプレー委員会」として専門委員会に格上げされ、それまで規律・フェアプレー委員会と同プロジェクトに分散していた「フェアプレーに関する事項」の役割が一本化された。
(*2)FIFAフェアプレーデー:FIFAがサッカーの持つスポーツ精神をたたえ、普及させることを目的に、「全ての選手、コーチ、審判、 そしてファンの皆様に、『フェアプレーの精神と敬意を示すことこそ、サッカーをプレーする最良の形であることを見失っては ならない』と思い起こさせる日」として設定。

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