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JFAリスペクトアウォーズを振り返る ~2018 受賞団体の活動内容ご紹介
2019年08月29日
9月7日(土)にJFAハウスで行われるリスペクトアウォーズに向け、2018年受賞団体の活動内容をご紹介いたします。
日本のリスペクト賞
日本のサッカーファミリー
「スタジアムやロッカーの清掃について」
2018FIFAワールドカップロシアでのサムライブルー(日本代表)の戦いはベルギーとの激闘の末にラウンド16で幕を閉じた。世界の強豪と渡り合い、ピッチ上で輝きを放った日本だったが、もう一つ世界から称賛を浴びた出来事があった。
それはFIFA関係者のSNSにアップされた試合後のロッカールームだ。きれいに清掃され、机の上には「スパシーバ」(ロシア語でありがとう)と書かれたカードが置かれた画像は、瞬く間に世界中に拡散された。
日本には礼儀や作法、リスペクトの精神を重んじる豊かな精神風土がある。トンボでグラウンドを整備したり、会場やロッカールームなどをくまなく清掃して帰るという行為は、日本のスポーツの現場でも当たり前のことだ。
チームを代表して授賞式で壇上に上がった日本代表アスレチックトレーナーの前田弘さんは、「当たり前のことを当たり前にやっていることが大事。子どもたちのお手本になるチームになれたのかなと思う」と胸を張る。前田さんが日本代表に関わるようになったのは13年前。その当時から試合会場にほうきを持参して清掃を行ってきた。会場の片付けは、選手も手伝い、技術委員長やドクターであっても参加するのが通例となっている。
日本代表のサポーターは、1998年に初出場したフランス大会からスタンドのゴミ拾いを行ってきた。今回のロシア大会でも試合が終わると、ゴミ袋を片手に清掃する日本人の姿があった。それは、グループステージ第2戦を戦ったセネガルのサポーターにも波及した。残念ながら受賞には至らなかったが、この活動が評価されて日本サポーターは「The Best FIFA Football Awards 2018(FIFA年間アワード)」のファン賞にノミネートされた。
SAMURAI BLUEのロッカールーム(写真は試合前)
Football & Music賞
コンフィアンサ サッカー・スポーツ少年団
「サッカー本来の楽しさを味わえる招待大会を開催」
子どもたちの笑顔が見たい―。コンフィアンサ サッカー・スポーツ少年団の代表を務める神田国彦さんの思いは一つだった。指導歴13年の神田さんが参加したある大会で、「保護者から厳しい声が飛んで、コーチも怒っている」という光景をみて、選手も萎縮してプレーしていた。見かねた神田さんは関わる全ての人が楽しいと思える方法はないか考えるようになった。
浜松市はヤマハやカワイといった楽器メーカーが本社を置いている国内有数の“音楽の街”だ。そこでサッカーと音楽がコラボレーションした大会を開催するというアイデアを思いついた。
会場では音楽ライブで使用するような大型スピーカーを設置。大音量で流すのは指導者や保護者が青春時代に聞いていた曲や、子どもたちに人気のアニメソングなど、バリエーションに富んだ音楽だ。保護者や見学者が参加できるイベントも行い、会場では参加者の笑顔が絶えない。2016年に17チームで始まっ たフェスティバルはチームが一気に増え、翌年には36チーム、今年開催された第3回大会はさらに倍増し、64チーム(2日間で約5000人)が参加した。評判を聞きつけ、今では全国からも集まってくる。
大会ではレギュラーになれない選手も活躍できるよう、各チームから選手2人ずつ選出し、即席の選抜チームを組んで試合を行っている。チームの垣根を超えて全員で応援する会場の雰囲気は、大会により一層の一体感を生み出している。
大会は一クラブが運営する規模としては限界を迎えているが、「来場者全員が笑顔で帰っていく姿を見るとやったかいがあったと思う」と神田さん。これからも継続する方針だが、「全国で同じような大会が行われれば、サッカー人口の増加にもつながっていくのでは」と今後の広がりへの期待を口にした。
フェスティバルの授賞式では選手だけではなく応援した保護者や兄弟も表彰される
インクルーシブ賞
日本ブラインドサッカー協会/日本ケアフィット共育機構
「全ての人が試合観戦を楽しめるように、各々のニーズに合わせてサービス・サポートツールを提供」
日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は、日本初の有料試合となるIBSAブラインドサッカー世界選手権 2014の開催にあたって、障がい者割引を導入するべきか議論を重ねていた。単に入場料を割り引くことが、JBFAのビジョンである「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に交ざり合う社会を実現すること」に合致するか、と。議論の末に、「障がいがあってもスポーツ観戦を楽しむことができる」という本質に立ち返り、サービスの充実に注力することにした。
試合会場には、座席への案内といった来場者のサポートを行うリレーションセンター「TASKAL」を設置。他にも、試合会場で実況中継、視覚障がい者のために凹凸のある会場図を制作、聴覚障がい者には筆談ができるような準備をした。サービス介助士の資格を認定している日本ケアフィット共育機構と協働することで障がいのある観戦者にも充実したサービスを提供することが可能になった。
2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。ケアフィットの高木友子理事は「みんなの意識が変わって、誰でも気軽に外に出て行ける環境をつくっていけたら」と目標を口にする。塩嶋史郎JBFA副理事長も「このリレーションセンターの設置が一つのモデルになれば」と期待を語る。リレーションセンターは、すでに東京ヴェルディの試合や車椅子テニスの試合会場に導入し、有資格者がボランティアで介助するなど活動の幅を広げている。
視覚障がい者向けに用意した音声ガイドや解説は、ルールが分からない健常者にとってもうってつけのツールとなっており、好評を博している。障がいの有無にかかわらず、試合を楽しむ環境を整えていることは、会場を訪れた全ての人へのリスペクト精神を表している。
リレーションセンター「TASKAL」には観戦者の多くが立ち寄る
リスペクト育成賞
LARGO FOOTBALL CLUB
「手をつなぎ(輪をつくり)あいさつをする習慣の中で、リスペクト精神を育てる」
LARGO.FCは東京都荒川区を拠点に活動するサッカークラブだ。1995年4月の設立以来、続けてきた伝統がある。それは、第4種(小学生)は練習の始まりと終わりに必ずスタッフを含め全員で手をつないで、輪をつくり、あいさつをすること。日課として同じグラウンドで練習する全ての仲間にあいさつをすることで、皆でプレーをする喜びや、人を思いやる気持ちを育んでいる。
クラブの代表である湯澤茂さんは「通常、指導者と選手が対面してあいさつするが、僕たち指導者も年の離れたサッカー仲間。そういう意識を選手に植え付けるために手をつなぐようになった」と説明する。「試合のときは"頑張ろう"と円陣を組んだりする。それを練習でやってもいいのでは」というのがきっかけだったという。
20年以上もこの取り組みを行い、「今では自然とやっている」(湯澤さん)が、その効果について湯澤さんは「些細なことだが仲間意識が出てくる」と言う。第4種の中でも1~2年生、3~4年生、5~6年生とチーム分けされているが、手をつないで全員で行う。クラブの合宿も小学生は全員で行うため、上級生が下級生の世話をすることが自然とできるようになっているという。クラブの理念である「人格の形成」にも大きく寄与しているのだ。
湯澤さんは「この取り組みはリスペクトを実践する一つの方法。卒業生が将来指導者になってこの取り組みが広がっていってくれればうれしい」と、“手つなぎの輪”が広がることへの期待を口にする。
クラブ名のLARGOは音楽記号で「ゆったり・ゆっくり」を意味する。LARGO.FCは時間をかけて小さいことの積み重ね、関わりのある全ての人を大切にする気持ちを育んでいる。
練習前のあいさつの様子。多いときには100人が手をつないで輪をつくる
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