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プロフェッショナルレフェリートレーニングキャンプを開催

2022年10月26日

プロフェッショナルレフェリートレーニングキャンプを開催

10月19日(水)・20日(木)、高円宮記念JFA夢フィールドにてプロフェッショナルレフェリー(PR)キャンプを実施しました。

今回のキャンプでは、他競技との交流として日本バスケットボール協会(JBA)より、前田喜庸審判委員長、JBA公認プロフェッショナルレフェリーである加藤誉樹レフェリーと漆間大吾レフェリーがゲスト参加しました。競技は異なりますが、同じ国内トップリーグを担当する審判員として、試合に臨む準備、判定を下すまでのレフェリー間でのコミュニケーション、試合のマネジメントなどについて活発な意見交換が行われました。

JFA審判マネジャーコメント

東城穣 Jリーグ担当統括(JFA)
「シーズン終盤に向けて」をテーマに実施した今回のPRキャンプ、内容は主にフィジカルトレーニングと試合で起きた事象の分析を行いました。

初日のフィジカルトレーニングでは中村フィジカルコーチの指導のもと、フィールド全面を使用し試合での動きを想定したより実践的なトレーニングを実施しました。かなり心拍数の上がるインテンシティ(強度)の高いトレーニングでしたがPRそれぞれが試合をイメージし、しっかりと取り組んでくれました。

フィールドでのトレーニングの後はカンファレンスルームに移動し、試合で起きた事象の分析を行いました。試合中、フィールド上の審判員たちはレッドカードに値するような重大な判定を下す際、例えば“チャレンジのスピード、勢いはどうか”、“どこの部位がどこの部位に接触しているか”等の判定の根拠となる「コンシダレーションポイント(考慮事項)」を洗い出します。そしてそれを元に判定(判断)を下しています。ですので、特に「コンシダレーションポイント」の整理が非常に重要であり、それを整理することで審判員全員の基準の統一にも繋がっていきます。今回もいくつかの事象について映像を見ながら「判定」、「コンシダレーションポイント」、また「VARとしてどう対応するか」をディスカッションしました。

また実際に適切な判定に結び付けられなかった事象に関しては、どのようにしたらより良かったか、今後に向けてどのようにしていくかについて意見を出し合いました。ポイントのひとつに挙がったのが“審判チームのコミュニケーション”です。コンシダレーションポイントが一部でも欠けていると適切な判定に結び付けることができません。「自分は今どの情報を持っていて」、「相手(別の審判員)はどの情報を持っているか」、それをどのようにコミュニケーションシステムを通じて審判チームで情報をやり取りして共有し、最終的に納得感の高い適切な判定に結び付けられるか、VARの対応も想定しながらディスカッションしました。ある事象だけで2時間ほどのディスカッションとなったものもありましたが、多くのことが確認、共有でき、非常に深い議論ができたと感じでおります。

二日目も前日に引き続き試合で起きた事象の分析を行いました。特に直近に行われた天皇杯決勝での事象を取り上げ、審判チームとして上手くできたこと、他の審判員へも伝達すべきこと等を確認いたしました。その後各自フィールド、ジムでコンディションを調整し解散となりました。

海外の割当等もなくPR全員が参加できた今回のPRキャンプ、あっという間の2日間となりましたが、今回学んだこと、再確認したこと、共有したことを生かしつつ、シーズン終盤のよりプレッシャーのかかる難しい試合をしっかり乗り切ってもらえればと願っています。

最後になりましたが、今回のキャンプには日本バスケットボール協会より前田審判委員長、髙森アシスタントマネージャー、加藤レフェリー、漆間レフェリー(両氏とも公認プロフェッショナルレフェリー、FIBA公認審判)をゲストにお招きし、お二人のレフェリーにはPRに混じって一緒にプログラムにご参加頂きました。2日間を通し、お二人とも非常に積極的にご参加頂き、特にディスカッションの場面では、サッカーとバスケットボールの共通点・違いを説明した上で、審判員として心がけていることや、審判員間の試合中のコミュニケーションの手法、選手との接し方などを共有してくださいました。またプログラム以外の時間でも双方の審判員同士がそれぞれ自発的に情報交換、意見交換が行われており、皆さんの意識の高さを感じ取ることができました。双方にとって刺激のある有意義な時間となったものと思います。今後もこのような取り組みを続けていければと考えています。

JFAプロフェッショナルレフェリーコメント

飯田淳平 レフェリー(JFA)
コロナの状況も落ち着かない中ではありますが、PRが一同に介し対面でキャンプができることは素直に嬉しく新鮮な機会となりました。普段私たちは一人でトレーニングすることが多いですが、みんなで集まって行うトレーニングではまた新たな気づきがあります。フィジカルフィットネスプロジェクトの中村大輔インストラクターのトレーニングは非常にコーディネートされており、普段のトレーニングではなかなか実施することが難しいレーニングをすることができました。例えば普段一人では行いづらい、リアクションが入りながら行うトレーニングなどは大変貴重な時間となりました。

座学での試合分析でも新鮮なことだらけでした。近年のサッカーではVARが入り、審判員たちが判定するための考慮点を整理しながら進めなければなりません。審判員たちの共通理解を高めるために多くの審判仲間、指導者たちとディスカッションして新しい知識を得られるのが新鮮でした。ディスカッションが終わった後も個別で話をするなどして知識を深め合うことができるのも、対面でキャンプが実施できるメリットです。

バスケットボールのプロ審判員の加藤さん、漆間さんとご一緒できたのも貴重な機会でした。お二人とも非常に積極的に研修に臨まれており、「少しのことでも学び取ろう」という姿勢にとても感動しました。種目は違えど、審判員が判定をする上で大事にすべきことには共通点があることも感じることができました。例えばファウルを取るときにどのようなことに重きを見て判定するか、2つのチームの中立的な立場として様々な視点に立って物事を捉えないといけない、ということなどは大きな学びとなりました。

最後に印象的だったのが、キャンプの最後に加藤さん、漆間さんより「雰囲気がよい」とフィードバックをいただけたことです。私にとっては誇らしく嬉しい言葉でした。PRメンバー、JFA指導者が一緒になって作り上げてきた、サッカーの良さだと感じることができましたので、このよいチームワークを生かし、シーズン最後まで全員で乗り切りたいと思います。

JBA公認プロフェッショナルレフェリーコメント

加藤誉樹 レフェリー(JBA)
ピッチ上でのフィジカルトレーニング、研修室での映像を用いたトレーニングともに非常に質の高いもので、内容そのものから得られる学びが多かったことはもちろんですが、2日間を通して私が最も感銘を受けたのは、プロフェッショナルレフェリーや周囲でサポートされている皆さんの”家族感”です。

サッカーのプロフェッショナルレフェリーはバスケットボールに比べて既に人数も多く、年齢や経験、フィールド上の役割に違いがありますが、それぞれの皆さんがお互いに伸び伸びと明るい雰囲気でコミュニケーションを取りながらも、臆することなく自分の意見を共有したり、ときには厳しい意見が飛び交ったりと、和気あいあいとしていながらも、思ったことは遠慮せずに表現できるその関係性はまるで家族のようでした。
また、そうした良い雰囲気の中で仲間と切磋琢磨できることがレフェリングの技術面の向上に大きく貢献しているとともに、精神的な支えにもなっているのではないかと感じました。
私たちバスケットボールのプロフェッショナルレフェリーは現状2名で、漆間さんとは日々コミュニケーションを取りながら取り組んでいますが、今後人数が増えたときにもサッカーのプロフェッショナルレフェリーの皆さんのようにお互いを尊重しながら、思ったことを素直に言い合える家族のようなグループになっていきたいと思います。

今回の研修会への参加にあたり、ご尽力いただきましたJFA扇谷審判委員長をはじめとしたJFA、JBAの皆様に心より感謝申し上げます。今回得た学びはもちろんのこと、今後も他競技の審判の皆様との交流を継続していくことで、バスケットボールのプロフェッショナルレフェリーとしての活動に生かしてまいります。

漆間大吾 レフェリー(JBA)
美しい天然芝のピッチで行われたトレーニングでは、全体のアップ後にグループに分かれ、それぞれゲームを想定した動きを取り入れた主審と副審のメニューを両方体験することができました。主審のメニューでは、バスケットボールでは考えられない一方向への長い距離を走るということに驚き、副審のメニューではディフェンスの位置に合わせて動きながらボールを確認し、さらにタッチラインの確認まで同時に行うことへのアングルの捉え方の難しさを感じました。また、皆さんの走力のレベルの高さにも驚きを感じると共に改めて日々のトレーニングの重要性を再確認しました。

座学では実際のゲームの映像を確認しながら、主審と副審の協力について、カードを出すようなファウルが起きた際に最終的にどのように判定を導き出すかのプロセスについて学ぶことができました。ファウルの事象を客観的に分析し、「アプローチ」「ポイント・オブ・コンタクト」「結果」の項目別に情報(ピース)を集め、判断・判定に大きく影響を与えるピースをピックアップし、最終的な判定を導き出すプロセスは、どちらとも取れる難しいケースをよりシンプルに判断・判定することに繋がると感じました。

また、見解や答えを一方的に伝えるのではなく、ディスカッション方式で意見交換をしながら方向性を揃えていくという姿勢が随所に感じられ、レフェリーの皆さんの言語化する力と理解力、インストラクターの皆様の聞くスキルと伝えるスキルの高さに感銘を受けました。

2日間のスケジュールではありましたが、新しい知識やバスケットボールと共通するコンセプトなどの発見、また、JFAの皆さんと色々な情報交換ができ本当にあっという間に終わってしまったなという印象です。競技は違いますが同じレフェリーとして本当にたくさんのいい刺激といい学びをすることができました。

最後に、プロフェッショナルレフェリーキャンプ参加に関しましてご助力いただいた皆様、そして温かく迎え入れていただいた扇谷審判長をはじめ、JFA審判部の皆様、インストラクターの皆様、レフェリーの皆様に心より感謝申し上げます。この経験をバスケットボール界に還元し、私自身の成長にも繋げられるように日々精進して参ります。

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