新たに策定したパーパスと「価値共創」の共鳴
ー2023年にJFAメジャーパートナー契約を締結しました。JFAが新たなパートナーシップにおいて「価値共創」を掲げる中、どのような可能性や魅力を感じましたか。
田林:2013年からサッカー日本代表をサポートさせていただき、ちょうど10年のタイミングで、2030年までJFAメジャーパートナー契約を結びました。JFAさんは「価値共創」において、JFA、パートナー企業、サッカーファミリー(社会)にとって価値を生み出す「三方良し」というコンセプトを掲げています。われわれが昨年、再定義した企業理念、それにともない制定したパーパス「ともに挑む。ともに実る。」と共鳴できる部分がたくさんありますので、協働することにますますの魅力を感じています。
ー長年にわたる、みずほフィナンシャルグループとのパートナーシップについて、JFAとしての思いをお聞かせください。
髙埜:みずほさんは社会のインフラでいらっしゃいますので、私たちの理念「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の発達と社会の発展に貢献する」を実現する上でも、非常に心強いパートナーだと思っています。また、新たなパーパス「ともに挑む。ともに実る。」はまさにSAMURAI BLUE(日本代表)の姿と重なりますし、共に歩んでいく上で本当に頼れる存在です。
ーみずほフィナンシャルグループのコーポレートカラーの一つである“青”は、SAMURAI BLUEなどの各カテゴリー日本代表、またJFAとも親和性が高い色かと思います。
田林:青は、みずほの企業としての分かりやすい特徴です。親和性ももちろんありますし、みずほの社員からもサッカー日本代表を応援していることを喜ぶ、また誇りに思うといった声も聞かれます。
髙埜:今日は何の打ち合わせもなく、田林さんも私も青いシャツを着ているんですよ(笑)。みずほさんとJFAにとって非常に重要なアイデンティティーだと思いますし、直感的に親近感も湧きます。お互いの組織のトップ同士が会うときは、必ず“青”の話が出ますね。
お互いのビジョンや思いを共有する田林健一郎室長(左)と髙埜尚人本部長(右)
150周年の特別な年に初の特別協賛試合の開催へ
ー2023年10月13日に新潟県のデンカビッグスワンスタジアムにて、「MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2023」を開催しました。初の特別協賛に至った経緯を教えてください。
田林:みずほにとって2023年は、みずほの源流の一つである渋沢栄一が創設した第一国立銀行の開業から150周年という特別な年でした。また、同年5月に企業理念を再定義し、パーパスを制定しました。150周年という節目のタイミングに合わせ、パーパスの浸透策をいろいろと進める中で、大きな取り組みの一つとして「MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2023」の開催に至りました。「サッカー日本代表とともに大きな夢に挑戦していきたい」という思いや、みずほの企業理念やパーパスを社内外に伝えたいという思いから、特別協賛させていただきました。
髙埜:開業150周年はすごいことですし、そのタイミングでご一緒できたのはJFAにとっても誇らしいことです。きっと社内でも150周年事業のアイデアがサッカー以外にもたくさん出たと思いますから、その中でサッカー日本代表戦の開催を決めてくださったのはうれしかったですね。
ー「MIZUHO BLUE DREAM MATCH」の名称に込めた思いとは。
田林:JFAさんは「DREAM(夢)」という言葉を掲げていらっしゃいますが、われわれも「アオイユメ」を抱く人々と共に挑戦していくという思いがあり、それをこの大会名に込めました。「BLUE DREAM」という言葉は反響が大きく、社内外から共感の声をいただいていますし、今ではみずほのカルチャーとして浸透しつつあります。
髙埜:「BLUE」も「DREAM」も、私たちのDNAに刻み込まれている言葉です。それを2つとも大会名につけてくださり、ファン・サポーターの方々にとっても親近感を持てる名称だったと思います。
MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2023ではカナダ代表に4-1で勝利した
ーJFA側のサポートとして、特別協賛に至る背景などを教えてください。
髙埜:さかのぼること2022年5月、日本代表選手がパートナー企業さんを訪問するという企画を初めて実施しました。古橋亨梧選手がみずほさんを訪問し、社員の皆さんにとても喜んでいただきました。2023年6~7月にも会社訪問やサッカー教室を開催するなど、社員の方々と代表選手が触れ合い、身近に感じていただく機会を創出してきました。私たちJFAとして、パートナー企業の社員の皆さんにもぜひ協賛価値を感じてほしいとの考えから実施したことですし、実際にみずほさんが社員のエンゲージメントの向上を目指す上で、一つの形が作れたのは良かったと思います。こうした取り組みがきっかけと言ったらおこがましいですが、一つの契機になったのかなと感じています。
田林:その日は本当にみんなが大熱狂でした(笑)。社員から「みずほに入って良かった」と言う声もたくさん届きました。長年にわたっていろいろと交流させていただきながら、関係を深めていったという素地もありましたね。
サステナビリティアクションなどさまざまな取り組み
ー試合当日はどういった施策を行いましたか。
田林:準備期間が短かったですが、試合当日に向かっていろいろなことを考えていきました。特に着目したのは、サステナビリティの取り組み。みずほとして、サステナビリティは中期経営計画の5つの注力テーマの一つとなっており、「サステナのみずほ」を標榜しています。今回は、「BLUE DREAM -サステナビリティアクション-」と称して、99%廃プラスチックから製造したゴミ袋を計1万2000枚、来場者の皆さんに配布し、試合後の会場のクリーンアップに活用していただきました。
そして、JFAさんやスタジアム関係者の皆さんのご協力により、会場に設置された全てのダストボックスにも同様のゴミ袋を設置し、「サステナブルなサッカー日本代表戦」の実現を目指しました。
99%廃プラスチックから製造したゴミ袋を活用。田林室長は「社会とともにいろいろな活動をしていくのがサステナビリティだと思うので、それが体現できた」と話す
ーその他の取り組みについてはいかがでしょうか。
田林:パーパスである「ともに挑む。ともに実る。」を体現する一つの形として、日本代表選手ら他のパートナー企業さんの協力の下、「BLUE DREAM RELAY」と称した大会応援ムービー、BLUE DREAM「ともにアオイユメを」のムービーを作成し、テレビCMや会場などでも放映しました。
また、来場者にオリジナルタオルマフラーやクリアファイルをプレゼントしたほか、読売新聞社さんが制作した号外新聞の配布、JFAユースプログラムとして「プレーヤーズエスコートキッズ」や「センターサークルシートベアラー」など参加型プログラムの実施、「#ともにアオイユメを」と題したサッカー日本代表応援キャンペーンなどを展開しました。
髙埜:準備期間が短かったとはいえ、各種施策に厚みがありました。時間がない中で並行していろいろなものを動かすと、どうしても“点”の施策になりがちですが、そこがしっかり“線”になり、最終的には立体的な“面”になってお客さまに届いていると感じました。ブランディングやマーケティングの観点からも勉強になりました。またJFAも「アスパス!」というスローガンの下でサステナビリティの活動を進めていますが、みずほさんとJFAそれぞれが持つリソースや強みを掛け合わせることで、シナジーが生まれて大きな価値を生み出せたというのは、一つの成功体験になりました。
田林:一連の活動は、社員の熱量に支えられたと思っています。150周年を機にした取り組みで、社員にとってもレガシーにしてほしいと、全国からボランティアを募り、200人以上が手を挙げてくれました。みずほのバリューとして「変化の穂先であれ。」を掲げていますが、まさに社員一人ひとりが穂先となって率先して動いてくれましたね。
試合に向けて、開催地の新潟支店には壁面装飾を施しましたし、また試合当日は全国の支店などで自主的に多くの社員が集まり、試合観戦を行ったそうです。みずほ全体にとって、非常に大きなムーブメントになったと思います。
ボランティアで集まった社員からも「特別な体験ができた」といった声が多かったという
ー試合翌日には「夢の教室 特別プログラム」も実施しました。
田林:みずほのカルチャーの一つとしてサッカーを根付かせたいとの思いで企画しました。みずほは47都道府県全てに支店があり、地域を元気にしていくためにも、今後、全国各地でサッカー教室を実施するという構想を練っています。その皮切りとなるイベントで、当日は加地亮さん、澤穂希さん、宮間あやさんを招き、サッカー教室と、「夢の大切さ」を考える夢トークの2つのプログラムを行いました。子どもたちに真摯に向き合っていただき、良い時間になったと思います。
サッカーの力をもってまたお互いの強みを生かして
ー満員のスタジアムが青一色に染まり、社員の皆さんも特別な体験ができました。全体の取り組みを振り返っての感想をお願いします。
田林:まずは社員を含め、関係者の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。みずほにとっては前人未到のチャレンジでしたが、さまざまな熱量によって素晴らしい形で終えられたので、非常に大きな財産になりました。
個人的に一番うれしかったのは、社員からの「家族に自慢できた」や、あるいは「家族に自慢された」という声ですね。親の仕事をなかなか子どもに話す機会はないと思いますが、「お父さん、お母さんの会社はサッカーを応援しているんだ」と伝えられることで、仕事への理解につながったと思います。 また“青一色”に染まるスタジアムを見て、「自分の会社を誇らしく思った」という言葉も忘れられないですね。
髙埜:私たちとしても、日本代表戦の盛り上げやサッカーファミリーの拡大など得るものもたくさんありました。みずほさんの社員の方々の行動力と、それが大きな塊になったときに社会に及ぼす影響力の2つに、サッカー日本代表戦という場が持つ発信力が掛け合わさり、社会への価値を創出できたと思います。
表彰式では、みずほフィナンシャルグループの木原正裕グループCEO(右から2番目)と共に登場したみずほ公式キャラクターの「あおまる」(左端)。SNSなどでも反響が大きかった
ーJFAメジャーパートナーとして、今後どのような取り組みを進めていきたいと考えていますか。
田林:私自身、この立場で携わるようになり、「サッカーの力は本当にすごいんだな」という実感を深めています。今回はサッカー日本代表戦に関わらせていただきましたが、サッカーほどダイバーシティを体現しているスポーツは他にないと思います。また、JFAさんが目指す、社会貢献、サステナブルな社会、地域創生、ダイバーシティ&インクルージョンの実現などは、みずほが目指す理念とも合致しています。みずほが今後向かうべき姿を、すでにいろいろな形で体現されていらっしゃると思いますので、われわれもJFAさんのいろいろな取り組みを支援し、共に挑んでいきたいと思います。
髙埜:JFAが「アスパス!」の重点領域に定める「環境、人権、健康、教育、地域」の中で、「健康」「教育」「地域」についてはご一緒できる機会が多いと思っています。特に、次世代を担う子どもたちに価値をつくっていくことは重要なテーマです。両者が備えている強みを持ち寄り、「子どもたちがいろいろなことに“挑み”、“実りある”豊かな人生を過ごしていける」ような取り組みを、これからも一緒に創出していければと思っています。
今後も互いのリソースや強みを生かして価値共創を進めていく
■JFAが考える「価値共創」とは
JFAは、新しいパートナーシップのコンセプトとして「価値共創」を挙げています。JFAが考える「価値共創」とは、JFAが持つアセット(資産)を使って、企業と一緒に新たな価値を創造することができるパートナーシップのことで、企業とJFAが連携し、パートナー企業のビジネス課題、社会における課題、日本サッカー界の課題を解決していく「スポーツ版三方良し」を実現していく新たな取組です。
社会的責任のもと企業のリソースを使ってSDGsの取り組みなど、社会貢献を推進するだけではなく、企業がサステナブル(持続可能)なビジネスを行っていくために、スポーツ・サッカーが持つ力を活用しながら社会課題を解決しつつ、経済的価値も創造していくことを目指しています。