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[特集]部活動の実情とこれから 池田洋二 JFA学校部活動検討委員会 委員長インタビュー 後編
2020年07月29日
古くから学校教育の中に取り込まれている部活動。日本においてその重要度は非常に高い。一方で、少子化や教員の働き方改革、指導者不足など学校部活動における課題は複雑化・多様化している。JFAは、これらの課題にどう向き合い、解決策を講じているのか。学校部活動検討委員会の活動を振り返るとともに、これからの部活動について池田洋二委員長に聞く。
インタビュー日:2020年3月14日
※本記事はJFAnews2020年4月号に掲載されたものです
※取材は2m以上の距離を確保し、インタビュアーはマスクを着用して実施
教育の一環である部活動は日本サッカーの礎でもある
――あらためて日本サッカーにおける部活動の役割とはどのようなことですか。
池田 部活動は日本特有の文化です。18年のFIFAワールドカップに出場した選手のうち約半数が高体連出身です。田嶋幸三会長もかねてから、「日本サッカーの選手育成は、都道府県の学校とクラブに支えられている」と言っています。クラブだけではなく、学校部活動が支えているということが重要なポイントです。
――池田委員長は長く教員としてサッカーを指導してきましたが、学校部活動に対する個人的な思いはありますか。
池田 私は、サッカーを通して子どもを育てる、というスタンスで教員を務めてきました。自分が教えてきた生徒たちの中には日本代表選手になりたい子どももいれば、うまくないけれどサッカーが好きという子もいました。勝利を目指して戦わないとモチベーションが続かないという子どももいれば、サッカーを楽しくできればいいという子もいます。いろいろな生徒がいる中で指導者はどのように彼らの夢や目標を支えていくかを考えるべきです。巣立っていった生徒たちの中には、上のレベルでプレーする選手もいますし、テレビで見て応援する者もいますが、皆がどこかでサッカーに関わってくれています。
――部活動には教育的な側面が多くあるということですね。
池田 学校の環境下で運動や芸術といった、自分が興味を持った分野に自由に取り組めることが学校部活動の最も良いところです。勝ち負けではないんです。そのために学校部活動が教育課程の中に入って必修クラブ(※)になった時代もありました。昔から部活動が大事な教育の一環であるということは、指導要領にも入っていますし、学校がすごく大事にしていることです。生徒は部活動で競技以外のことも学びます。しかし、学校が杓子定規に行政で決められた形でやってしまうと、この前のワールドカップにおける日本代表のロッカールームの話ではないですけど、整理整頓なども疎かになってしまうかもしれません。それは一つの例ですが、そういった部分以外でも日本の教育の良かったところが崩れていくのではないかと危惧しています。
部活動検討委員会では「もっとプレーしたい選手」と「もっと教えたい教員」の両方に向けた施策を軸に取り組まれた
――将来の部活動はどのような形になっていくのでしょうか。
池田 学校教育の一環としての部活動と社会体育との共存、これは委員会で考えている将来の部活動の方向性です。この図は検討委員会で最終的な日本の学校スポーツ文化の形としてJFA理事会で承認を受けました(下図)。Aは教育的側面を重視した部活動、Bは先ほど話した学校部活動の中で競技力を高めようという部活動、Cは地域クラブのように学校外で競技力を高められる部活動を指しています。上に行けば競技力、下に行けば教育の一環ということです。
この中でAは経済格差の解消、教育の機会均等を意味します。これをなくしてしまうと経済的な理由でクラブに行けない子どもが活動できなくなってしまいます。今でも公立と私立で差が開いてきていますが、家庭の経済力と学力の差が比例するようにスポーツもだんだんと差が開いていきます。BやCがなくなったとしても、Aは学校がある限りは続くでしょう。
AとCは現状でも問題なく続いていくでしょう。ただ、Bをどう考えるか。もちろんBは全ての学校がそうである必要はありません。それぞれの学校の特色に合わせて都道府県にいくつかあればいいのではないかということで、このBの形を残しながら、この三つが絡み合った形が日本の将来の部活動の形になることが望ましいと考えています。
※中学校では1972年、高校では73年改訂の学習指導要領から、クラブ活動は特別活動の一領域として必修とされた。その後、2002年に中学校で、03年には高校で必修のクラブ活動は「総合的な学習の時間」に吸収・統合される形で廃止となった。
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