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【ワールドカップトピックス#第7回】新たな転機となったロシア大会
2018年07月18日
7月15日(日)、モスクワのルジニキスタジアムで行われた2018 FIFAワールドカップの決勝で、フランスがクロアチアに4-2で勝利を収めて20年ぶり2度目の優勝を飾り、約1か月開催されてきた4年に一度の大会が幕を下ろした。FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は「これまでで最高の大会。ロシアはサッカーの国になった」と最大の賛辞を送り、ロシアの人々に礼を述べたが、大きな問題もなく、観客動員などでも悪くない数字が並んだ。
全64試合のスタジアム観戦者は3,031,768人(1試合平均47,371人)で、総動員数では歴代5位に入る。試合開催地の11都市で行われたファンフェストには700万人以上が訪れ、2014年ブラジル大会の12会場での520万人を大きく上回った。
だが、ロシアにとって大会開催の最大の効果は、競技を超えた点にあるだろう。大会中の海外からの渡航者は100万人以上とされているが、これらの人々がロシアを知ったことにある。インファンティーノ会長も、「美しく豊かな文化と歴史など、世界中からの来訪者がロシアの真の姿を目にして、ロシアという国に対する認識を変えたはずだ」と言う。
全国11の開催都市それぞれで異なる顔を見せ、特に地方都市では地元の人々の穏やかで温かな人柄に触れることが少なくなかった。これまであまり広く知られていなかったこの国の一面が見られたことは間違いないだろう。ロイター通信によれば、ロシア政府は今大会に訪れた人々の宣伝効果で、海外からの観光客の15%増を見込んでいるという。
競技面でも、ロシア代表のベスト8入りの活躍で、選手への注目度も大きくアップした。国内サッカーの今後の変化が気になるところだが、FIFAは大会試合会場となったスタジアムをはじめ、サッカーがロシアで生きる遺産となるように協力するとしている。
大会の競技面では、興味深い数字が並んだ。64試合で0-0の引き分けはデンマーク対フランスのグループステージ1試合のみ。合計169ゴールが決まり、1試合平均では2.64ゴール。前回大会(総ゴール数171、1試合平均2.67)とあまり変わらないが、大きな違いが出たのがPKによる得点だ。前回大会の13(PK機会は14回)に対して、今大会では22(PK機会は29回)と大幅に増えた。
この変化がVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定の導入によることは明らかだ。準決勝終了時点でVARがチェックした事象は445。このうち16の事象で試合レフェリーによるフィールドでチェックが行われ、16回すべてで判定が見直された。その際、ビデオチェックにかかった1回の平均時間は79・6秒。その後、決勝でもVAR判定でPKが確認され、フランスが1-1の均衡を破る得点を挙げた。FIFAによれば、レフェリーの判定の正確性がVAR導入で99.32%にまで上がったという。
「VARについては非常に満足している」と話したインファンティーノFIFA会長は、「VARはサッカーを変えるものではなく、クリーニングするもので、レフェリーの判定を助けている」と改めてVARの意義を強調した。
さらにFIFA会長はVAR導入の効果として、オフサイド疑惑のゴールがなくなった点と、「副作用的な効果」として、暴力行為によるレッドカードが1枚もなかった点を指摘。「よりクリアで透明性のあるものになった。VARだけの効果ではないが影響はある。見られていることで教育的な効果が出た」と導入の成果に胸を張った。そして、「今後、VARなしでワールドカップを考えることは難しくなった」と語った。
また、準優勝したクロアチアや3位になったベルギーなど、いわゆるサッカー大国ではない国々が躍進した大会でもあった。
大会MVPはクロアチアのルカ・モドリッチ選手、得点王は6ゴールを挙げたイングランドのハリー・ケイン選手、最優秀GKにベルギーのティボー・クルトワ選手、最優秀ヤングプレーヤーにはフランスのキリアン・エムバペ選手が選ばれたが、このほかFIFAは驚きの活躍を見せたサプライズ・スターズを選出。日本代表のMF乾貴士選手(レアル・ベティス)が上位5人に選出された。
今大会の技術面での分析については、FIFAのテクニカル・スタディ・グループ(TSG)が9月中にレポートを発表する予定だが、今後の競技のあり方に、ロシア大会は小さくない転機となったと言えそうだ。
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