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ワールドカップイヤーは改革に着手する好機 ~【コラム】 田嶋幸三の「フットボールがつなぐもの」vol.7~
2018年01月01日
世界の舞台に立ち続ける
サッカーファミリーの皆さま、関係者の皆さま、新年明けましておめでとうございます。
日本サッカー協会(JFA)は2016年以降、「世界基準」をキーワードに、世界トップクラスのチームとのマッチメークを実現するなど各カテゴリー代表の強化に力を注いできました。
育成に関しては、代表チーム/Jクラブの監督経験者やアカデミーのスペシャリストなどを「地域統括ユースダイレクター」に抜擢して9地域に配置。また、適正な人数で質の高い指導でトレセンが行われるよう「JFAトレセン認定制度」もスタートさせました。指導者のスキルアップにも取り組み、JFA/Jリーグ協働育成プログラムでは海外のトップクラブに育成年代の指導者を送り込むなど、「育成日本復活」と「世界基準」を実現できる体制を構築しました。
日本代表については、若い世代から国際経験を積めるように海外遠征を実施し、また、世界トップクラスのチームとのマッチメークを実現させるなど、高いレベルで切磋琢磨できる機会を増やしました。
これらの取り組みが実を結び、昨年は全てのカテゴリーがアジア予選を突破。Jリーグも浦和レッズが10年ぶりにアジア王者となり、先のFIFAクラブワールドカップを戦いました。
5大会ぶりに世界進出を果たしたU-20日本代表、2大会ぶりの出場となったU-17日本代表、ビーチサッカー代表もワールドカップを戦いました。中でもU-17日本代表は“優勝候補の一角”とも目され、大会中は海外メディアの注目を集めました。
森山佳郎監督の指揮の下で選手が奮闘努力し、決勝ラウンドでは、イングランドを相手にPK戦にもつれ込む健闘を見せましたが、「個」の能力で見ると世界の壁は厚く、スピード、フィジカル、技術など全てにおいて歴然たる差がありました。悔しい経験でしたが、それもワールドカップに出たからこそ分かったことで、世界大会に出場し続けることの意味を選手が身をもって実感したのは意義あることだったと思います。今年も継続して世界大会に出場し続けるよう努力とチャレンジを重ねていかなければならないと認識を新たにしています。
2018FIFAワールドカップロシア、万全の体制で大会に臨む
ロシア大会の組み合わせも決まり、これから本大会に照準を合わせた強化がスタートします。
日本はグループHで、コロンビア、セネガル、ポーランドと対戦します。日本は第4ポットですからどの組に入っても相手は全て格上です。
コロンビアは前回のブラジル大会のグループ最終戦で戦って1-4で敗れていますし、セネガルは大陸予選をグループ1位で突破したアフリカの雄。ポーランドは日本にとっては馴染みの薄い国かもしれませんが、FIFAランキング7位(2017年12月21日現在)とグループ最強のチームです。異なる特長を持つチームが群雄割拠する組で、厳しい戦いを強いられることは言うまでもありません。
大会までの半年間でどれだけ差を縮められるのか。急速に世界トップレベルの力を備えるのは困難ですが、11月のベルギーとの親善試合で70分できたことを80分、あるいは90分続けられるようにする。そうすることでチャンスは広がっていくと思っています。
初戦の相手はコロンビア。日本は初戦に照準を合わせて臨むことになりますので、良い準備をして本番を迎えたいと思います。
ベースキャンプ地もロシア中部のカザンに決まりました。グループステージ3試合の会場への移動も問題なく、宿舎とトレーニング施設が同じ敷地内にあるなど設備も充実していることから、ここを拠点にすることとしました。
今回のワールドカップは、初めてアジアから5チームが出場するわけですが、結果次第では2026年大会後の大会のアジア枠に影響が出る可能性もありますので、アジア代表としての責任もあると思っています。これまで以上の成績を挙げるため、万全のサポート体制で準備を進めていきます。
全てのカテゴリーで「世界基準」を追求
なでしこジャパンは世代交代の難しい時期を乗り越え、高倉麻子監督の下でAFC女子アジアカップヨルダン2018に臨みます。2019年のFIFA女子ワールドカップ(フランス)出場を懸けた戦いですが、東京オリンピックも2年後に迫ってきましたので、世界大会を控えているU-20日本女子代表とU-17日本女子代表とも連携しながら、再び世界女王の座を取り返すべく強化を図っていく考えです。
東京オリンピックを目指すU-21代表は森保一監督の下で、昨年12月、タイで開催されたM-150 CUPに参加。U-23年代のチームを相手に準優勝し、幸先のよいスタートを切りました。今年は、1月9日に開幕するAFC U-23選手権(中国)を戦った後、2度の海外遠征を実施し、8月のアジア競技大会(インドネシア)に臨みます。東京オリンピックでのメダル獲得を見据え、優勝を目指して挑みます。
U-19、U-16は再び世界の舞台を目指し、AFC選手権に臨みます。世界の強豪チームにはトップリーグで活躍しているユース選手がいて、昨年のU-20ならびにU-17のワールドカップで優勝したイングランドなどは既に“大人のサッカー”をしていました。日本でも、平川怜選手や久保建英選手などがJ1デビューするなど若い世代が台頭しつつありますが、そういった選手が世界に通用する力を備えられるよう、Jリーグと協働してリーグのさらなる発展を目指します。
フットサルは、引き続きブルーノ・ガルシア監督の下で強化を進めていきます。今年はフットサルもビーチサッカーも世界大会やアジア予選はありませんが、ここでしっかりチームづくりを行って揺るぎない力をつけたいと思います。女子フットサルは昨年から本格的に全国リーグがスタートしましたので、4月のAFC選手権ではその成果が見られるのではないでしょうか。
ワールドカップイヤーは、改革するチャンスの年
世界最高峰の舞台に挑むSAMURAI BLUEの勇姿を見て、「サッカー選手になりたい」「日本代表になりたい」と思う少年少女は少なくないはずです。日本代表が強く魅力ある存在であることでサッカー人口が拡大し、その広い裾野の中から優れた人材が送り出されてきます。そういう意味で、子どもたちの関心が集まるワールドカップイヤーの今年は、様々な改革に着手する好機であると捉えています。
今年は、これまでの活動を推進する一方で、育成においては新たにU-10、U-12年代のテコ入れを図りたいと考えています。日本が世界と渡り合える力を備えるには、小学生年代の早い段階から世界基準の指導を施していくことが不可欠で、これは、U-17のワールドカップに出場したフランスやイングランドの育成を調査してみて痛感したことです。
彼らは、「Fun & Quality」と言って、楽しさを伝える一方でしっかり技術も身につけさせているんです。JFAとして年代に応じた指導をもう一度検証し、日本に合った育成の指導体制を再構築したいと思います。
また、指導者養成にもより力を入れます。今年は、指導者の長期海外研修やUEFAライセンス講習会を開催したり、海外から指導者インストラクターを招へいし、指導者の皆さんがより高いレベルで研さんを積む機会も設けます。女性指導者に関しては、新たにB級コーチ養成講習会を創設。また、将来を見据え、なでしこリーグの新人研修として女性D級コーチ養成講習会を開催し、女性指導者を増やすための布石を打ちます。
少子化の影響がU-12年代の登録数やキッズプログラムの参加率の減少に表れてきたこともありますので、47FAと連携してキッスフェスティバルを拡大させるほか、小学校体育サポート研修会なども増やしていく考えです。
普及は、サッカーの発展のためだけでなく、子どもたちの健やかな成長や生きがいを提供し、健康寿命を延伸することにもつながると思っています。
IT(情報技術)やAI(人工知能)の発達によって人々のライフスタイルが変わっていくと、スポーツは健康づくりや余暇の楽しみといったところで、いま以上に重要な役割を果たします。また、東京オリンピック・パラリンピックを2年後に控え、サッカー界として「ポスト2020」のスポーツ界というものを真剣に考えるべき時期にもきていることから、47FAや各種連盟と共にスポーツの素晴らしさや価値を広めながら、スポーツを「する」「見る」「参画する」機会をたくさん設けたいと考えています。もちろん、JFAこころのプロジェクトや復興支援などの社会貢献活動にも全力を注いでいきます。
2018年がサッカーファミリーの皆さんにとって素晴らしい一年になりますよう、今年も日本サッカーをご支援いただきますようよろしくお願い申し上げます。
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