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~なでしこジャパン佐々木則夫監督インタビュー~ 「世界連覇への挑戦、 勝敗を決める要因は自分たちにある」
2015年01月17日
昨年5月のAFC女子アジアカップで初優勝して今年のFIFA女子ワールドカップの出場権を得たなでしこジャパン。2015年は6月6日にカナダで開幕する4年に一度の女子サッカー界最高峰の大会で、ディフェンディング・チャンピオンとして連覇を目指すという日本初の挑戦に臨みます。2011年ドイツ大会で世界王者の栄誉を手にして以降、4年後を見据えて新戦力の発掘と従来の戦力との融合とレベルアップに取り組んできたチームは、新年を迎えて、いよいよ準備の最終章へ入ります。佐々木則夫・なでしこジャパン監督は2014年の成果と新しい年への抱負をどう捉えているのでしょうか。
Q:2014年はどんな年でしたか?
収穫の多い一年でした。FIFA女子ワールドカップ予選を兼ねたAFCアジアカップもありましたが、今年の本大会でベテラン、中堅、若手がうまく融合したチームを作りたいと考えているので、そこを意識しながら、さまざまな選手を試すことが出来たと思います。試した選手たちの中からワールドカップのメンバーに一人でも多くの若手が入って、大会を経験できれば理想的です。でも結果としてメンバーに入る若手が少なくなったとしても、その後にあるオリンピックや次のワールドカップへつながってくれば良いと思っています。
Q:その過程にあったAFCアジアカップに若手で臨んで優勝したことは大きな成果ですね。
今回が国際マッチデーに設定されなかったこともあったのですが、若い選手を多く起用して、どれだけチャレンジできるのかを試すことが出来ました。優勝を目指したなかで大変厳しいアプローチでしたが、自分たちの目標を達成できたことは、若手を含めて励みになっていると思いますし、良い経験ができたと思います。
3月のアルガルベカップと10月のカナダ遠征でも、経験のある選手たちと若手が融合出来たと思います。一年の最初と最後の活動で、ヨーロッパ組を含めた中心選手たちを起用することができましたし、5月のAFCアジアカップと9月のアジア競技大会では国内で活躍する若手を見ることができたので、比較も出来ましたし、2015年やその先々への指標にもなりました。日本の選手層の(全体的な)イメージをつかむことができ、チームにとって非常に良い流れだったと思います。
また、カナダ遠征では欧州でプレーする選手たちを中心としたチームで、様々なチームと対戦して力をつけてきているカナダに対して、出来ることと出来ないことを把握できました。敵地の人工芝で試合ができたことも、今度のワールドカップを前に参考になりました。
Q:カナダ遠征で出来たことと出来なかったこととは、どういう点でしょうか?
あれだけのメンバーが揃えば、ある程度のレベルのものはあるけれど、攻守にアクションするサッカーも連係を密にやっていなければ落ちるということが、改めて確認できました。ワールドカップへ向けて、その密度をもっと高めなくてはいけないと考えると、今年のアルガルベカップとワールドカップ前の2度の合宿で、さらに重点的に取り組まなければなりません。
攻守一体のサッカーではスタミナも重要です。スタミナが落ちるとブレインも落ちますから。その点も欧米を含めて(世界的に)上がってきているので、われわれのレベルをもっと上げないとなりません。前回のワールドカップやロンドンオリンピックと同じようなレベルで臨んでいたのでは、今回の戦いは難しいということも、改めて感じました。
Q:対戦相手のレベルが上がれば、試合でも出方や動きも変わってきますね?
レベルが上がると、これまでは相手を取り囲めばボールを奪えたところで逃げられたりしますし、相手もコンパクトになってきているので、こちらがそれをすり抜けるのが難しくなったりします。相手にボールを獲られる回数が多くなれば、こちらが取り返す動きが増えますね。態勢を整えて動き直さなくてはならないので、ロスが大きくなってしまいます。
動かなければならないので、スピードや持久力よりも、相対的なスタミナと攻守一体の中での考え方が重要になります。相手のショートカウンターを防ぐためにも、こちらの攻撃時には、良いバランスを取りながらしっかりとポジションを獲ることと切り替えの速さも必要です。
Q:前回のFIFA女子ワールドカップ優勝時に、4年後の厳しさをすでに予感していたと思いますが、ここ数年の世界の変化は予想以上ですか?
予想通りでしょう。コンパクトな状況を切り裂くような技術を持った個人も各国で出てきていますし、ポゼッション含めてチームプレーの質も上がっています。守備もコンパクトになって、これまでのような間延びはあまり見られなくなってきました。ゴールを奪うにはショートカウンターが有効だということも、世界的に広く認識されてきていますね。
個人的には昨年夏の男子のFIFAワールドカップは参考になりました。前回大会で優勝したスペインのサッカーを求めてやってきたチームと、スペインに勝つためのサッカーを追求してきたチームがあったと思いますが、後者の方が、ドイツも含めて、より多く勝ち上がったという印象です。そして基準になったスペインはグループステージで敗退しました。
女子もニュージーランドなど力をつけてきたチームが増えていることを考えると、われわれも自分たちの足元をしっかり見て戦わなければなりません。今回から出場チームが増えてノックアウトステージでは1試合多くなりますし、われわれとの対戦では戦い方を変えてくるチームもあるかと思います。われわれはその上をいかなければなりません。
Q:今回のFIFA女子ワールドカップの組み合わせはどうですか?日本の相手は、どのチームも初出場ですが?
大会の経験がないというだけでは片づけられないですね。初出場で勢いもあるでしょうし、「失うものはない」という姿勢で来られて、こちらがそれを「受けよう」と考えると大変なことが起こり得ます。特に初戦は重要なので、あくまでも「強豪国スイス」という考えで臨みます。一般には、われわれのグループは良い組み合わせだと言われていますが、われわれがそう思い込んだら、足元を救われるでしょう。勝敗を左右する要因は、相手よりも自分たちにあるので、とにかく自分たちの質を上げていこうと思っています。
大会拡大は、世界の女子サッカーが広がって行く上で通らなくてはいけない道だと思います。われわれはチャンピオンとして、1位抜けを目指して、しっかり準備するだけです。
Q:アルガルベカップからFIFA女子ワールドカップまで、どのように進める予定ですか?
アルガルベカップにはワールドカップ直前合宿の前に、チームとして集中的に強化に取り組める大会ですし、非常に良いチームが集まります。われわれは現状でトップの選手を選考して、チームの色を出したプレーを相手にぶつけることで、自分たちの課題を抽出したいと考えています。その後は、本大会前の合宿までの間に、選手には所属チームでスタミナをどんどんつけて、代表チームに戻ってきてくれれば、それが大きな準備になると思っています。
大会のエントリー選手は23人ですが、バックアップの存在も重要になります。多くの選手に自分も候補だという意識を強く持ってもらい、彼女たちにもアルガルベでチームに私が要求していることを発信して情報を共有しようと考えています。
Q:では、今年の目標は?
2015年の目標はFIFA女子ワールドカップ連覇です。前回の大会で、われわれはチャンピオンを目指すと思って戦いましたが、世間一般にはそんなことはほとんど知られていなかったと思います。でも今回は日本のみなさんも、われわれがチャンピオンとして連覇に挑むということを期待してくれると思います。大会ではそういう期待もされて、なおかつ、諸外国が日本を意識して、われわれに照準を合わせてくるでしょう。その状況で自分たちがどれだけできるかというチャレンジになります。
アルガルベカップから、メンバー構成を含めて、ワールドカップのチーム作りを考えた準備を積極的にしていけば、大会までに十分チームづくりは完成できると思っています。あとは、アルガルベカップではこれまで準優勝が2回あるだけなので、そこでも優勝したいと考えています。
FIFA女子ワールドカップは4年に一度のサッカーの祭典で、日本の皆さんに期待してもらうチャンスです。まずは1月の男子アジアカップで男子チームに優勝してもらいたい。11年もそういう流れで男子の優勝に勇気を貰って、その後、われわれにも良い風が吹いてきました。今回もまた同じような展開になって、男子優勝のあとは、なでしこの風が吹いてくれるといいなと思っています。
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