ニュース
日本代表監督リレーインタビュー 第8回 SAMURAI BLUE(日本代表)/U-23日本代表 森保一監督「今できることはなにか」を考えて、ポジティブに
2020年05月06日
日本代表チームは新型コロナウイルスの感染拡大防止のために多くのサッカーやスポーツの現場同様に活動の自粛を余儀なくされています。選手の皆さんと同様にStay homeを続ける各カテゴリーの代表監督に今回はサッカーに対する思いや、苦難を乗り切ってきた経験、夢の大切さなど、話を聞きました。
最終回はSAMURAI BLUE(日本代表)とU-23日本代表を指揮する森保一監督です。
自由な発想で自分の判断でプレーできるサッカーにのめり込む
僕が通っていた小学校はサッカー少年団がありませんでした。草サッカーは学校でも毎日のように、朝早く行って校庭でやっていましたが、本格的に指導者のもとでサッカーはやっていなかったところに、隣町の土井首小学校という強いチームでサッカーを教えていた先生が、自分が通っていた小学校に赴任してきて、その先生との出会い、先生が誘ってくれたことでサッカーを本格的に始めることになりました。
小学校5年生までは野球少年で、プロ野球選手になるということが夢で、小学校6年生から夢がいきなり野球選手からサッカー選手に変わりました。元々いろいろなスポーツ、体を動かすことが大好きだったので、何をやっても楽しくやれていたのですが、サッカーにのめり込んでいったのは、自由な発想で自分の判断でピッチでプレーできるということ、そして自由に動き回れる、そこが自分の性格に合っていました。周りは上手い選手たちばかり、自分はサッカーを始めるのが遅かったので、目標となる選手たちが多くて、その仲間達に「追いつきたい」「追い越すためにはどうしたらいいんだ」とモチベーション的にも楽しいものがあって、サッカーにどんどんのめり込んでいきました。
育成時代の自分とサッカーを取り巻く環境
自分の親、そして周りの保護者の皆さん、先生たちに自分が好きなことをやらせてもらう環境を作ってもらったことが大きいと思います。というのも、中学校に入ったときもサッカー部がなかったので、「部活どうする?」となったときに、その当時は僕が住んでいたところにはクラブチームもなかったですし、クラブチームに通うという考えもなかったので、自分が通っている学校にある部活で何をするかという中での選択で、通っていた学校では当時ハンドボール部が一番強かったので、ハンドボール部に入部しようと決めました。
でも家に帰ったときに、「お前サッカーはもうしなくていいのか」と父親が聞いてくれて、「サッカーがしたいけど、サッカー部が無いから、やりたくてもサッカーができない。だからハンドボール部に入った」と伝えると、「作ればいいんじゃないのか。作ってもらうように学校に話してみよう」と言ってくれて、そこから僕の親が中心となって、サッカーをやりたい子たちの保護者が学校に掛け合ってくれて、サッカー部を作ってもらえました。中学校1年生のときは部活としてのサッカーはできませんでしたが、2年、3年のときはサッカー部として活動することができ、他の選手たちとも一緒にプレーすることができたり、中体連の大会に出たり、という形になりました。そこは本当に親に感謝ですし、多くの保護者の方に支えられているというのは子どもながらにすごく感じました。部活の監督をしてくれる部長になってくれた先生も全くサッカー経験者では無い方でしたが、すごく温かく自分たちと関係を作ってくれて、見守ってくれたというのがすごく印象に残っています。指導者も、自分のチームだけではなくて、地域の指導者の方々、多くの指導者の方々に支えられて、見守ってもらって育ててもらったという気がします。その当時は当たり前の環境と思い育ちましたが、振り返ると、本当に温かく見守ってもらいながらサッカーができていたなと思っています。
自分たちのチーム、全てを自分たちで考えて
中学1年生のときは自分が通っている学校にはサッカー部が無かったので、できるまでの間、自分の親が隣町の中学校の先生や監督に「公式戦には出られなくてもいいから、小学校の時に一緒にやっていた仲間もいるし、練習だけさせてくれないか」と掛け合ってくれて、一年間は隣町の中学校で、学校が終わったら自転車で移動して、練習だけさせてもらいました。とはいえ、やはり他校の生徒が一人だけ練習に参加しているということで難しい状況でプレーすることになったこともありました。
それだけに、2年生になって自分の学校で思い切りサッカーができるようになったというのはものすごい喜びでした。ただ、練習の環境はというと、既に校庭にサッカー部ができる場所は無く、学校外のところで練習場を探してほしいと学校からは話をされていて、校区内のある会社の駐車場になっているようなところが普段は開放されているので、そこをまた親がかけあってくれて使えるようにしてくれました。そこの広さはフットサルコートくらいの広さで、砂利のグラウンドでサッカーができたのですが、本当に楽しくて仕方ない。友達と和気あいあいと楽しみながらサッカーができる。自分たちで上手くなるためにどうすればいいんだろうと、練習メニューを考えたり、わけも分からず走ったりとか、そういうことを友達と考えることが楽しかった。道具も一切ありませんでした。ゴールも無かったので、落ちている缶を拾ってきて、自分たちでゴールを決めたり、ビブスも揃っていないので、着ているシャツで色分けしたり、時には片方が裸になって試合をしたことを今でも覚えています。
やることはランニングとミニゲームとシュート練習。シュート練習もそもそもゴールが無いからどこに打てばいいのかということから始まり、自分たちでゴールを設定して、ネットも無いからボールはあちこちへ飛んでいってしまう、でもそれも楽しかった。
指導者に教えてもらったこともたくさんありますが、保護者の皆さんに環境づくりをしてもらった中で、上手くなるためにどうすればいいのかを自分たちで考えてやれたことは今振り返ると良かったと思いますし、楽しい毎日でした。
サッカーの奥深さと広がり
サッカーは奥が深い。どんどん進化していて、技術も戦術も常に上を見てやっていける。突き詰めても突き詰めてもまだ自分は足りないなと思わせてくれます。常に進化している中に自分も身を置き、いつも追いかけさせてもらっています。
そして人との出会い。サッカーはたくさんの人に出会えます。サッカーをやっていなかったら、こんなに人と出会えることは無かっただろうなと選手時代も指導者となっても感じさせてくれます。「人」は自分にとって大きな財産、「人」が自分を成長させてくれると思っています。自分と同じ価値観で話すこと、それはそれで素晴らしいですが、違う価値観の人と話すこともとても刺激がある。自分たちが現場でやらせてもらって、それを見ている方たちがいろいろな反応をしてもらえるということもすごく幸せなことだなと思います。人との出会い、関わりの素晴らしさを教えてもらえることもサッカーの素晴らしさだと思います。
できないことをネガティブに考えず、今できることをポジティブに
サッカーは人と関わるスポーツ。選手は仲間と一緒にプレーして、切磋琢磨して、練習や試合をする。そしてプライベートでも関わり、一緒に過ごすことが楽しいことだと思います。今、それができない現状の中でサッカー選手としては常にうまくなりたい、強くなりたいと思ってみんなサッカーに関わっていると思います。チームでやれない分、1人でやってうまくなれることも、向上することもたくさんあると思います。できないことをネガティブに考えるのではなくて、今できることをポジティブにとらえてやっていく。そういうメンタルでいてほしい。サッカーは全体でトレーニングして上手くなるということもありますが、人と同じことをやるのではなく、自分がうまくなるためには1人のときにもたくさんやれることはあると思うので、そこにトライしてほしいと思う。部屋の中で体幹もできると思うし、ストレッチで柔軟性を高めて、グラウンドに出た時により柔軟に動けるようにするということもできると思います。ボールを思い切り蹴ったりすることは部屋の中ではできないですが、ほんのちょっとボールに触ることで感覚を養うことはできます。多くの人との練習は出来なくても、密集を避けることに気をつけて家の外に出て、1人で走るということはできますし、1人で動くということもできます。そういうことはグラウンドで全体練習ができない中でも自分を向上させることとしてやっていけると思います。練習が再開できるようになったとき、試合ができるようになったときに差が出るのは、やはりこういう我慢しなければいけないときに、1人で人が見ていないところで努力をするということだと思います。それが自分の成長につながると思うし、他の人と差をつける、差を縮めるということになると思うので、ぜひ1人でいるときにできること、指導者に教えてもらうとか、今だったらインターネット上にたくさんヒントはあると思いますし、なによりも自分で考えてやるということを実践してほしいなと思います。
今、サッカー選手だけでなく、日本の多くの方々も、そして世界中の人たちが困難で窮屈な生活を強いられていて、みんながストレスを抱えている状況の中で生活していると思います。でも、自分なりのストレスを発散する方法を自分で見つけながら、我慢強くやり続けていくことはメンタルを鍛えるということにもなると思います。我慢強くコツコツと続けていくことが、再開に向けて良いエネルギーを生んでいきますし、再開後だけでなく、自分の将来を見据えたときにも平坦な道のりだけではありませんし、いろいろな苦難や困難がある中で目標を持ってやり続けることがすごく大切なので、今それが試されていると思って日々過ごしてほしいと思います。
自分ひとりだけが難しい状況に置かれていると思わずに、みんな苦しんでいるんだと思いながら、みんなでこの新型コロナウイルスの感染拡大が収まるように乗り越えていこうという気持ちで頑張ってほしいなと思います。
この難しい状況の中でしっかりパワーを溜めて、活動が再開できるようになったら思い切りそのパワーを爆発できるように、今は我慢強く、私も含めて皆で乗り越えていけたらなと思います。一緒に乗り越えていきましょう。
関連ニュース
- 日本代表 2020/05/05 日本代表監督リレーインタビュー 第7回 U-16日本代表 森山佳郎監督「自信を掴むきっかけ。やればできる」
- 日本代表 2020/05/04 日本代表監督リレーインタビュー 第6回 U-17日本女子代表 狩野倫久監督「人生は一度きり。思ったことを全力でトライ」
- 日本代表 2020/05/03 日本代表監督リレーインタビュー 第5回 フットサル日本代表 ブルーノ・ガルシア監督「最善のドクターは自分の頭」
- 日本代表 2020/05/02 日本代表監督リレーインタビュー 第4回 フットサル日本女子代表/U-20フットサル日本代表 木暮賢一郎監督「辞めずに続けた先に起きた奇跡」
- 日本代表 2020/05/01 日本代表監督リレーインタビュー 第3回 U-20日本女子代表 池田太監督 「自分の一番好きなサッカーで世界に挑戦できる、成長できる喜びを」
最新ニュース
- 大会・試合 2024/12/28 初出場のFCゼロ、5年ぶりの優勝を目指すバディーSCなどが準々決勝に進出! JFA 第48回全日本U-12サッカー選手権大会
- 大会・試合 2024/12/28 浦和が11年ぶり3度目の栄冠! G大阪に逆転勝利 高円宮杯 JFA 第36回全日本U-15サッカー選手権大会決勝
- 大会・試合 2024/12/28 C大阪が浦和Lに逆転勝利で9大会ぶり2度目の優勝! 高円宮妃杯 JFA 第29回全日本U-15女子サッカー選手権大会 決勝
- 大会・試合 2024/12/27 準決勝・決勝チケット販売概要が決定 皇后杯 JFA 第46回全日本女子サッカー選手権大会
- 日本代表 2024/12/27 2025.6.5 オーストラリア代表 vs 日本代表 観戦チケットの販売概要について