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ブルーノ・ガルシアのフットサル道場 vol.11「そのメッセージは本当に伝わっているか」
2019年12月11日
必見「フットサル道場」!
機関誌『JFAnews』で連載中のブルーノ・ガルシアフットサル日本代表監督のコラムをJFA.jpでもお届けします。フットサルの魅力や指導法など、フットサルだけでなく、サッカーにも通じるポイント満載です。
※本コラムはJFAnews2018年12月に掲載されたものです
何かを伝えた後は伝わったかチェック
経験豊富なベテランから戦術眼に優れた勝負師、カリスマ性を備える者など、世の中にはさまざまなタイプの指導者がいる。備えておきたい要素がいくつかある中で、やはり指導者には物事を伝える力が不可欠だろう。そこで今回は、私がコミュニケーションを取る上で意識していることに触れる。
余談になるが、スポーツイベントの運営会社で働いていた22歳のころ、交渉術のセミナーやウェブ講座を受けたことがある。そこでは、交渉の席に着いたときはまず顧客の価値観を理解することが基礎だと教わった。相手の立場に寄り添わずして、自分のプロジェクトには賛同してもらえない、ということだ。いま思うと、スポーツにもこの考え方が通じる。指導者の場合、自身のフィロソフィー(哲学)を選手に理解してもらわなければ、その選手の力を引き出せないからだ。指導者はどのように選手を納得させるのか。
ある選手に「試合中は二つの約束を守ってほしい」と言ったとする。一つ目は、自チームのGKがボールを持ったとき、前線に飛び出してほしいということ。二つ目に、マイボールを失ったときは素早く帰陣するという約束事だ。
これらをシンプルに伝えたら、次にメッセージが本当に伝わったか試合でチェックする。選手がこれら二つの約束事を守っていたら、それは指導者と選手のコミュニケーションが成立していた証拠になる。しかし、二つのうち、一つしか(あるいはどちらも)実践できなかった場合は、改善の余地があると考え、次の手を打たなければならない。
私の場合は、もう一度説明する。一度目は自分の説明不足だったと選手をフォローしつつ、映像を用いて「試合のこのシーンで求められていた動きが、自分の指示とは違っていた」と補足し、改善点をよりクリアにする。通常ならば、これで「確認作業」は終わり。選手の頭もだいぶ整頓される。
これらのプロセスを踏んだにもかかわらず、選手が次の試合で約束を守れなかった場合、約束を「あえて守らなかった」ものと判断し、その選手の出場機会を減らすことになる。
順を追って理論的に説明することも大事だが、
「スポーツの世界では、選手の感情に訴えかけるのも大事」とブルーノ監督は語る
同じものを見ていても解釈は違うときがある
指導者の教えに背く選手は往々にしてエクスキューズ(言い訳)を持っている。映像で説明しても、「あのときは…」と弁解する選手は、意外と多いのではないだろうか。それ自体はさしたる問題ではない。指導者のメッセージが選手に正確に解釈されているかが一番のポイントになる。
自分の意図を理解してもらった後、それをプレーに移してもらう。言葉にすると単純だが、実際はかなり難しい。コップ半分の水を見て「半分入っている」という人がいれば、「半分しか残っていない」と感じる人もいるように、物事の捉え方は人によって異なるからだ。
スポーツの世界でもそれは同じで、立ち話やメールでのやり取り、映像を見ながらなど、コミュニケーションの方法は豊富にあるが、指導者と選手の解釈が全く同じとは限らない。だからこそ、物事を伝えようとするときはそのメッセージを端的に、歪曲したものが入り込む余地がないくらいダイレクトに発信することを意識する。
年齢や性別、競技レベルを問わず、指導者は「自分が伝えようとしていることは、選手に伝わっているだろうか」と自問してほしい。それをチェックする場は試合や練習など、十分にある。今回、例に挙げたような①伝える、②確認する、③もう一回伝える、④問題解決、というフォーマットを基に確認作業を行うことも場合によっては役立つかもしれない。
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