第32回オリンピック競技大会(2020/東京)閉幕から約2カ月、なでしこジャパンの新監督に池田太氏が就任した。
FIFA U-20女子ワールドカップフランス2018でU-20日本女子代表を優勝に導いた池田監督は、1981年の日本女子代表結成から40年の節目に「ここから未来へつなげていくために、なでしこジャパンを一歩前に進めなければいけない」と意気込み、「世界一を奪還する」と就任会見で力強く宣言。その後、元なでしこジャパンの宮本ともみコーチなどスタッフ陣が発表され、高円宮記念JFA夢フィールドでのトレーニングキャンプに23名が招集された。
再びの世界一を目指し、池田太監督が率いる新生なでしこジャパンがオランダ遠征で初の公式戦を迎えた。10月のトレーニングキャンプから発信してきた「奪う」というコンセプトをベースに、初陣のアイスランド戦は0-2で敗れるも、FIFAランキング4位(当時)の強豪オランダに0-0で引き分け、池田監督は「守備や攻撃での共通理解を選手たちと共有できた」とチームの上積みを感じながら「世界で戦う上での質を上げていかなければならない部分は多々ある」と課題も口にした。今遠征でGK田中桃子、成宮唯がなでしこジャパンデビューを果たし、約2カ月後に開催されるAFC女子アジアカップインド2022に向けても貴重な2試合となった。
FIFA女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド2023のアジア地区予選を兼ねたAFC女子アジアカップインド2022で、日本はグループステージを2勝1分けの1位で突破する。続く準々決勝・タイ戦では菅澤優衣香の4得点などで7-0の快勝を収め、9大会連続9回目の女子ワールドカップ出場を決めた。しかし、大会3連覇を狙う日本は準決勝の中国戦で2-2(PK3-4)と惜敗。池田太監督は「得点を決め切るところや、時間帯を考えてしっかりゲームコントロールする部分はもっと磨いていきたい」と悔しさを滲ませた一方、今大会5得点の植木理子や中盤で攻守の要となった長野風花など、池田監督と育成世代の代表チームで戦ってきた選手たちがなでしこジャパンに新たな風を吹かせた。
出場権を獲得した女子ワールドカップに向けて本格的に強化を進める日本は、セルビアとフィンランドに遠征し、再びチーム力向上を目指した。閉幕したばかりの1年目のWEリーグ後期で活躍した千葉玲海菜が初の代表選出となった。セルビア戦では千葉がデビュー戦で初ゴールを決めたほか、アメリカでプレーする杉田妃和も存在感を示し、5-0の快勝を収めた。中2日で迎えたフィンランド戦は、遠藤純が相手のオウンゴールを呼び込み先制すると、再び後半にゴールラッシュとなり5-1で2連勝。今遠征で1得点ずつを決めた植木理子は、これで5試合連続ゴールとなり、池田太監督が志向するアグレッシブなサッカーで「いろいろなコンビネーションや関わりの中でゴールが奪えた」と指揮官も手応えを示した。
東アジアのNo.1チームを決するEAFF E-1 サッカー選手権 2022 決勝大会は、国内でプレーする選手を中心に構成され、チームの底上げと大会連覇を目指した。池田太監督体制で初の国内試合は茨城県立カシマサッカースタジアムでの日韓戦。宮澤ひなた、長野風花のゴールで2-1の勝利し、続くチャイニーズ・タイペイ戦は4-1の逆転勝利を収め、引き分け以上で優勝が決まる中国戦に臨んだ。アジアカップ覇者の中国は勢いよく日本ゴールを襲うが、GK山下杏也加や清水梨紗を中心にこれをしのぎ、植木理子がクロスバーに直撃する惜しいシュートを放つも0-0で試合終了。日本の大会連覇は池田監督体制初タイトルとなり、大会ベストGK賞に山下、大会MVPに清水が選出された。大会後、池田監督は「これがすべてではなく、また一歩一歩前に進みたい」とさらなる高みを目指した。
「若い世代の選手との融合も含め、新しい組み合わせを試合やトレーニングの中で試す」と意気込んだ池田太監督は、10月の2試合でこれまでの4バックに加え3バックも採用した。国際親善試合・ナイジェリア戦は9月に発表された新ユニフォームで初めて公式戦を迎え、熊谷紗希、三宅史織、高橋はなが3バックを形成。地元・神戸でプレーする田中美南が2得点を決める活躍で2-0と勝利する中、池田監督が準優勝に導いた8月のFIFA U-20女子ワールドカップ コスタリカ2022メンバーから、藤野あおばと浜野まいかがデビューを果たし、続くMS&ADカップ2022ニュージーランド戦では17歳の小山史乃観も初出場。宮澤ひなたと植木理子のゴールで2-0と連勝し、池田監督は「全てが成功したわけではないが、新しいチャレンジへの取り組みや姿勢は評価できる」と模索を続けながら進化を目指すとした。
近年成長著しいヨーロッパ勢を代表するイングランド、スペインとの国際親善試合のためスペインに遠征した。UEFA女子欧州選手権で初優勝したイングランドは素早いサイド攻撃で日本を苦しめ、イングランドでプレーする長谷川唯などが9本のシュートを放つも決定的なチャンスをつくり出せず、日本は0-4で完敗した。女子ワールドカップで同組のスペインとの一戦は前半立ち上がりに得点を許し、その後は苦戦を強いられながらも、田中美南、猶本光、藤野あおばが同点狙ったが1点が遠く0-1でスペイン遠征を2連敗で終えた。強豪との2連戦で引き続き3バックを採用した池田太監督は「(10~11月の)4試合でトライしたことは自分たちの成長につながると思う」と期待を込めて2022年最後の活動を締めくくった。
女子ワールドカップイヤーは、世界の強豪が集うアメリカでのSheBelieves Cupで幕を開けた。初戦のブラジル戦は多くの好機をつくりながらもそれを生かせず0-1で敗れると、続くアメリカ戦は25,471人の大観衆の中で試合開始。FIFAランキング1位のアメリカを押し込み、植木理子が次々にシュートを放ち、後半には長野風花がクロスバー直撃のシュートを放ったがゴールは遠く、前半のカウンターからの失点で0-1と惜敗した。最終戦は東京オリンピック金メダルのカナダ戦で、清家貴子の先制ゴール、長谷川唯のPKでリードすると、遠藤純の追加点で3-0と勝利。池田監督は同大会最高位の2位で終え、「選手たちは大会中に成長した姿を見せてくれた。ここをスタートとして女子ワールドカップへ準備を進めていきたい」と、本大会への試金石となる3連戦を振り返った。
SheBelieves Cupでの課題と収穫を手に、選手25名と共にヨーロッパ遠征を実施した日本は、女子ワールドカップで着用する新アウェイユニフォームでポルトガル、デンマークとの2試合を戦った。ポルトガル戦は、長谷川唯と田中美南のゴールで2-1の逆転勝利を収めた。同試合で守屋都弥が右ウイングバックで代表デビュー。終盤には4バックに変形し、守屋が右サイドバックに入る形も試された。続くデンマークに移動して迎えたデンマーク戦は、前半にたびたび相手CKに苦しめられるもそれを耐え、後半に攻撃に転じたもののオウンゴールによって0-1と敗れ、女子ワールドカップ登録メンバー発表前最後の一戦で白星とはならなかった。池田監督は「拮抗した試合でいろいろな選手の組み合わせやプレーの特徴を見られたことは収穫」と総括し、6月13日のメンバー発表、そして7月の本大会開幕を迎える。
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