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なでしこジャパン 「打つこと」ではなく「ゴールを奪う」ことが目的。シュート練習で貪欲にゴールを狙う

2021年03月28日

なでしこジャパン 「打つこと」ではなく「ゴールを奪う」ことが目的。シュート練習で貪欲にゴールを狙う

なでしこジャパンは27日(土)、連日続く好天の下でトレーニングを行い、汗を流しました。

この日は未明に桜島の噴火で噴煙が巻き上がり、道路や歩道を火山灰が覆う状況でした。鹿児島の方々には日常的なことのようですが、火山灰を初体験した選手やスタッフも多く、遠征先の環境に触れる機会になりました。

男子大学生との合同トレーニングで体に負荷がかかったことや、予定されているトレーニングマッチを控えて一度コンディションを調整するため、この日のトレーニングは対人メニューが少ない、負荷をコントロールした内容となりました。試合を決めるのはゴールであり、チャンスを作っても決めなければ意味がないことから、ゴール前のフィニッシュに多くの時間を割きました。自ら持ち込んでのシュートや、味方とのパス交換からのシュート。ペナルティエリア内でのパス交換からの短いクロスもあれば、サイドでのパス交換からの長いクロスも織り交ぜて、2人、3人と連動する動きのパターンを増やします。大橋昭好GKコーチが、「いちばん大事なことは、最後にどんな形でもゴールを決めること」と発破をかけるように、「シュートを打つ」練習ではなく、「ゴールを奪う」ことが目的であることを意識しながら取り組み、ナイスゴールやファインセーブには選手からも大きな声が出ていました。

毎日行っている選手のオンライン取材が前日で一周し、この日は趣向を変えてスタッフが登場。高倉麻子監督を支える大部由美コーチ、大橋GKコーチ、広瀬統一フィジカルコーチがなでしこジャパンの現在について話しました。

スタッフコメント

大部由美 コーチ
聖火リレーがスタートして、いよいよ東京オリンピックに向かうんだと、私たちにとっても勇気づけられたり、力をもらったシーンでした。なでしこジャパンが第一走者ということで、2011年のワールドカップ優勝シーンや私たちが歩んできた道、さらには先人たちがやってこられたことがすべてつながって今があるんだなと感慨深かったです。第一走者を務めた選手や元選手が堂々とスタートを切ってくれて、私たちも頑張ろうと確認した一日になり、とても嬉しく思っています。選手に対して自分の過去の経験をもとに昔の話をしても、今の選手たちにリンクするものもあればしないものもあります。女子サッカー自体がスピードアップして、パワーアップして、サッカー理解が進んでいて、私の時代に比べると今は数段レベルが上がっているので、昔は昔はと話すよりは、東京オリンピックに向かう限られた人数の中に選ばれていることに対して喜びを感じたり、誇りに思ったり、責任を感じたり、自分たちがサッカーを楽しみながら勝利を目指すことで周りに勇気を与えたりすることができるんだという話をします。このコロナ禍で、ありがたいことに昨年10月と11月にキャンプを実施でき、そこでは男子にトレーニングパートナーとして協力してもらったことでかなりチーム力を高められた実感があります。目に見えるアプローチを取り入れて、例えばピッチにラインを引いて5レーンに区切り、守備時には3レーンの中に押し込もうとか、そのためにフィジカルの強度も上げてきたよねという話をして、今までの取り組みをリンクさせました。今の選手たちは多くの舞台を経験してきている選手が多く、初招集の木下桃香選手や浜野まいか選手もアンダーカテゴリーでアジアを勝ち抜く経験をして、なでしこジャパンに来ても物怖じせず堂々とプレーし、良さを発揮しています。選手同士がお互いにリスペクトしていいものを出し合おうとしてくれていますし、ピッチ上でもいい会話ができているので、いい集団になってきていると感じます。これから東京オリンピックの18人という狭き門にチャレンジする彼女たちに対して、何事もネガティブにならずにポジティブなアプローチをしていきたいと考えています。

大橋昭好 GKコーチ
オリンピックの18人に占めるGKの枠は通常2人ということで、この2枠に入るには、監督が「パスサッカーの安定が最大の守備」と言うように、GKであってもフィールドプレーヤーとしてゲームに関与できることが重要です。もちろんGKの仕事としてゴールを守ることが大前提である中で、いかに攻撃に絡めるかがひとつのキーファクターになります。海外に比べると日本のGKはサイズの点で小さいところは否めませんが、「GKができる」だけでなく、「サッカーができる」選手です。フィールドプレーヤーから転向した選手が多く、戦術理解が高いので、実際のプレーには表れませんが、非常に的確な指示をフィールドの選手に送っています。現場で見ると、GKのプレーを「観る」だけでなく「聞く」ことも楽しんでいただけると思います。オリンピック本番では、こちらが主導権を握ってボールを動かした時に、日本の暑さや湿度に不慣れな海外勢が体力の消耗を考慮して守備固めからカウンターを狙う展開になることも可能性として想定しています。その場合に、日本の守備ラインとGKの間に大きなスペースが生まれるので、攻撃を仕掛けられた時に、GKがその広いエリアを守るのか、味方に守らせるか、スペースをいかに守れるかがポイントかなと思います。GKは、自分ができないことをどうのこうの言うのではなく、まずは自分のストロングポイントを発揮し、できることをどこまでやりきれるか、そういうことが大事だと考えています。GK陣には、試合の状況下でテクニックを使い分けているという部分で成長を感じています。その中でも、より良くするためにはどうすべきか、例えば弾くのではなくキャッチできるようにするといったトライも見られます。戦術の部分では、GKだけでは解決しないものが多いので、プレーの合間にフィールドの選手とすごく声を掛け合っていて、より良くするためにどうしたらいいのかコミュニケーションを取っています。ゴールを守る仕事は、最後は個人ですが、そこに至る過程でどうしたらしたらいいのかと改善を図る姿勢が見て取れます。WEリーグの開幕が9月ですが、コンディションも整えてきていますし、総合していい雰囲気でキャンプを過ごせていると感じます。

広瀬統一 フィジカルコーチ
昨年からのコロナ禍の中で、コンディションの管理という点で動画を作り、所属チームの了承を得た上で選手に共有していました。長期的なプログラムにおける現在地という観点で、東京オリンピックの前の段階でここまで仕上げておくべきという基準に関してはおおよそ達成できています。東京オリンピックまでの短い期間の中で、4月8日の国際親善試合で100%に近い完成度を作り、その後は101%や102%を目指して本番までにしっかり上積みさせていくプランを考えています。本番を迎える7月に関しては暑熱対策ということで、暑い環境に慣れることも必要になりますので、それを踏まえたチーム作りを計画しています。女子サッカーのプロ化については、サッカーに集中できる環境の中で、フィットネスのトレーニングに充てる時間も増えていますし、自分の体に目を向けて、高めることにこれまで以上に積極的に取り組める時間やゆとりが生まれていて、ポジティブな影響だと思います。チーム立ち上げからのプログラムの中で、最初の2年から3年はベース作りと強化に充ててきました。最後の年はそれを洗練させること、つまりスキルを高めることに取り組みます。例えばスピードと言っても色々なスピードがあって、反転するスピード、直線を走るスピード、判断のスピードなどがあります。相手との関係において、加速力という指標で見てみても、体が軽いほうが加速量はあります。例えば信号で止まっているダンプカーと軽自動車が同時に走り始めたら軽自動車のほうが速いように、相対的に体格が小さい日本人のほうがアドバンテージを取れる部分でもあります。欧米の選手も日本人は速いという印象を持っていて、驚異と捉えているので、アドバンテージを最大化することと同時に、相手のアドバンテージを消す、最小化するスキルを身につけて、戦術とフィットネスを融合させることに取り組んでいます。

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