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第11回 骨年齢-子供の成長は暦年齢だけではわからない! [ JFAスポーツ医学委員会 土肥 美智子 ]

2011年08月01日

1.骨年齢とは?

普段使われている"年齢"とは生まれてから何年経つかという暦の上での時間の経過を表しており、これを暦年齢と言います。しかし皆さんもおわかりのように、たとえば12歳の子供たちを見たときに、すでに大人みたいな子供もいますし、まだ低学年のような子供もいます。この違いは何なのでしょうか?

これは成長が遅い、逆に身体の発育が早いという、成長の速さの個人差によるものです。つまり暦年齢では生物学的な視点から観察した場合、必ずしも正確な身体の成長度を表しているとはいえません。一方骨の成熟はある程度規則正しいタイミングと順序で起こるということがわかっています。ですので骨の成熟度から身体の成長度を把握することができます。この骨の成熟の程度を暦年齢と対照したものを骨年齢といい、骨年齢は身体の成長度をより正確に表す指標になります。

2.どのように骨年齢を知るの?

骨年齢を割り出す方法はいくつかありますが、基本的に左手のレントゲン写真(図)を使い、手を構成するいくつかの骨の形状から骨年齢を割り出します。

3.スポーツにおける骨年齢の意義は?

骨年齢は医学的に発育、発達に異常が見られる場合に主に行われていますが、スポーツにおいて骨年齢を知る意義にはどのような意義があるのでしょうか?
① 発達に応じた個別トレーニングプログラムの作成
② スポーツ障害の予測
③ 身長や発育に関わる将来的な精神的ダメージ(バーンアウト症候群、初経発来遅延など)の軽減
④ おおよその最終身長の予測
⑤ 年齢別大会での年齢詐称の防止
などがあげられます。
日本サッカー協会のアカデミー試験では、保護者の同意の上、骨年齢を測定しています。対象の受験生は小学6年生、12歳になる年ですが、前述したように成長の速さに個人差があり、受験生の生物学的成熟はおおよそ9~14歳と幅があります。成熟度が9歳と14歳の受験生を同じ基準で評価をすれば不公平になることは自明です。ですから試験の結果は生物学的な成熟度を考慮しながら評価されます。ポジションによっては誤差を加味した上で、予測最終身長も参考にすることがあります。


  • 暦年齢、骨年齢とも12.4歳

  • 暦年齢12.7歳 骨年齢:13.3歳

  • 暦年齢12.3歳 骨年齢:10歳

図)アカデミー試験での骨年齢評価のための左手レントゲン写真。すべて小学6年生で、暦年齢はほぼ同じですが、レントゲン写真でも明らかなように手を構成する骨の成熟に違いがあるのがわかります。骨年齢は10~13.3歳と幅がみられています。

トレーニングの内容はどうでしょうか?成長が9歳の子供はパワーや持久力がありません。この時期は技術を習得するにふさわしい時期です。また成長が14歳の子供に12歳と同じようなトレーニングをしていても十分な負荷がかからない場合があります。このように骨年齢を知ることで身体の成長に見合った身体能力を知ることや、トレーニングの質や量を調整することができます。また反復性の動作による怪我(使いすぎによる怪我)であるスポーツ障害は骨の成熟のある時期に起こりやすいことがわかっています。この時期に負担を軽減するなどトレーニング内容を変えることでスポーツ障害を防ぐことができます。

4.年齢別大会での年齢詐称の防止-磁気共鳴画像(MRI)による骨年齢評価-

さて前述した ”年齢詐称の防止“ とは何でしょうか?

年齢別大会を主催する国際連盟や大陸連盟で年齢詐称が以前から問題となっていました。
たとえば17歳以下の大会に年齢を誤魔化してオーバーエイジの選手、25歳の選手を出場させるというような、故意に年齢を誤魔化す場合と、きちんとした戸籍が作成されていないため年齢が誤っていたりわからなかったりした場合とありますが、いずれにしてもスポーツの公平性からみるとこれは重大な問題です。この問題を解決するため、以前はレントゲン写真による骨年齢を取り入れていたスポーツ団体もありましたが、国際原子力機関(IAEA)やいくつかの国では医療目的以外で健常人に対する被曝を禁じていることや、レントゲン写真による骨年齢では1~2歳程度の誤差が存在するため、現実的に実施するのは困難となっていました。

そこで国際サッカー連盟は被曝のないMRIで骨年齢評価を試み、その結果橈骨の成長線の状態をみることで、17歳以上か未満かを評価することができるという研究結果を得ました。

[ 詳細]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2465442/pdf/497.pdf
http://bjsm.bmj.com/content/43/12/884.full.pdf

この結果を受けアジアサッカー連盟は17歳以下FIFAワールドカップの予選となる16歳以下のアジア選手権でこのMRIによる骨年齢を導入し年齢詐称の抑制に努め、大会が公平になるように努力しています。

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