チーム紹介
東山高校
今シーズンからプレミアリーグに昇格した東山高校は、開幕戦こそ白星発進したものの、第3節の富山第一高校戦、第4節のヴィッセル神戸U-18戦では終了間際で同点に追いつかれるなど、以降は勝利をつかめずにいる。加えて、中断期間に行われた高校総体の京都府予選でもライバルの京都橘高校に敗れ、全国行きの切符を逃した。
こうした流れを変えようとチームはこれまでの4バックから3バックへとシステムを変更。取材に訪れた日も、新システムをモノにするため紅白戦を行っていたが、「サッカーは相手のボールを奪ったり、奪われないようにすればいいだけ。そうした原理原則が大事なのに、難しく考え過ぎて、消極的なミスが多い」と福重良一監督が言うように、選手たちは悩みながらプレーする姿が目立っていた。そうした空気を打破するのが、福重良一監督の声だった。細かく選手に指示を与えながら、時折、「おい! いまの場面でなぜ行かないんだ!」などと怒号が飛ぶ。自から認める「怖い監督」の姿が垣間見えた瞬間だった。
「福重先生は怖い。自分からは話に行けないオーラが出ている。1年生のときは何をしても、怒られている気しかしなかった」(FW角川恵一朗選手)と選手たちが恐れるのも無理はない。もちろん、厳しく指導するのには理由がある。「彼らは理不尽と感じるかもしれないけど、社会にはもっと理不尽なことが多い。サッカーも同じで、ハンドやオフサイドと思っていても審判がとってくれないこともある。そうしたことに耐える力を身に付けてほしい」(福重監督)。決して闇雲に怒るのではなく、ミスを恐れてチャレンジしなかったときと、気の抜けたプレーをしたときにしか声を荒げないとのモットーもある。
こうした指導方針の真意を入学当初は分からなかった選手たちも、歳月を重ねるにつれ理解を深めていく。今年1月に迎えた福重監督の誕生日のエピソードが象徴的だ。部員からプレゼントとして、缶コーヒーとDVDが渡された。3年生全員からの様々な祝福コメントが映されたDVDの中には、「1,2年生の時は本当に大嫌いな先生でした。でも、今は先生を全国に連れていって、有名にしたいです」という一人の選手のコメントがあったという。この言葉の主である主将のFW鎌田大地選手は「入学した当初は、福重先生と接する機会も少なく、たまに言われることに対してよく腹を立て、陰口を言ったりしていた。でも、3年生になって距離が近づけば近づくほど、僕たちのことを考えてくれることが分かり、自分たちの態度をあらためるようになった」と話す。すべては選手のことを本気で考えているから。だから、怒ってばかりではなく、前述の新システムの採用や、練習試合の対戦相手の希望など選手たちがチャレンジを決めたことに対してはなるべく受け入れる。
現在、東山高校には100人以上ものサッカー部員が在籍する。プレミアリーグの舞台に立つのは、厳しくも愛情のある指揮官に認められた選手のみ。選ばれた精鋭とも言える彼らなら、“福重先生を喜ばせたい”という願いはきっと叶えられる。
学年別集会でクラブ報告を行うFW鎌田大地選手(左から二人目)。残念ながら総体出場は果たせなかったが、「選手権には必ず出て、東山の名前を有名にします!」と力強く宣言
1日の終わりを告げるホームルームの様子。主力が複数在籍する「Neo-進学系アスリートコース」は卓球部など全国大会で活躍する選手が多く学んでいる
学校の周辺には蹴上インクラインや哲学の道など観光名所が多く存在する。写真の奥に写るのは国宝の方丈をはじめ、重要文化財・名勝などの多くの文化財が所在する南禅寺
冗談を言い合うフレンドリーな上下関係ながらも礼儀はしっかり。直前までくつろいでいた下級生たちだが、先輩が練習場に到着すると背筋が伸びる
練習前のロッカールームの様子。100人もの部員が急いで練習着に着替える。奧には全国制覇の文字が飾られている
取材日は試合3日前ということもあり、真剣な表情で練習を進める
練習の最後に行った紅白戦では取り組む課題が解決できず。練習後には選手同士で話し込む姿が見られた
選手たちに指示を出す福重良一監督。紅白戦が進むにつれて、熱が帯びる
控え組の面々は、ボールを使ったトレーニングを終えると、フィジカルトレーニングに精を出していた
監督・選手コメント
福重良一 監督
選手たちに「お前たちに嫌われたくてやっているわけではない。できれば好かれたい」とよく話します。体育や保健の授業とは態度が違うやろ? と(笑)。授業を受け持つ生徒と選手たちでは求めているモノが違う。うまくなりたくて東山に来てくれる選手を伸ばすためなら、僕は嫌われようが何を思われようが構わない。これでも、10年前と比べたら僕も成長していると思いますよ。いまは怒ったら、フォローもしますし(笑)。
FW 14 鎌田大地 選手
今年は個性が強い選手が多く、プレーにもよく出ています。日常生活でも、ふざけるやつや真面目なやつなどいろいろなキャラクターがいる。毎年、サッカー部は仲が良いのですが、皆の個性がうまく合わさっているので、今年は例年以上に仲が良いような気がします。学校でも僕たち3年生はサッカー部が中心的な存在になって、各クラスを引っ張っているのも特徴ですね。
DF 18 福重瑛貴 選手
学校では、携帯電話の使用は禁止なのですが、これまでは触っている人が多かった。でも、ルールとしてあるからには守らなければダメなので、まずサッカー部が見本となるために、授業が始まる前に部員全員の携帯電話を回収する取り組みを始めました。規律正しい取り組みをやっていますが、まだ表面だけの人もいる。全員ができるようになれば、結果も変わってくるのではと思っています。
DF 23 吉井悟 選手
プレミアリーグで対戦するアカデミーのチームはビルドアップがめちゃくちゃうまい。ミスせずにパスを回す姿に差を感じたりもしますが、必死に守ればついていけるという手応えを感じました。選手では、グランパスの桜井(昴)選手はどんなボールでもうまく収めて、正確に逆サイドに展開するので対戦してみてすごいなと思いました。頻繁にスライドしたり、マークを増やしたり大変でした。
チームWebサイト
http://www.higashiyama.ed.jp/schoollife/club/25