チーム紹介
市立船橋高校
“イチフナ”の通称で知られる市立船橋高校は、高校サッカー界きっての伝統校だ。特にトーナメント戦で勝負強さを発揮してきた堅実な守備は大きな特長として知られる。堅守の源は、チームワークとプライドだ。
午後4時30分、授業を終えて自転車やバスで船橋法典公園(通称グラスポ)に移動した選手たちは、準備が整うと全員で円陣を組んだ。練習開始時には必ず円陣を組んで意思を統一する。また、練習中に朝岡隆蔵監督が「水分を取ろう」とか「ボールを集めて」と呼びかけると、必ず複数の選手が復唱する。主将を務めるMF藤井拓選手は「円陣は、その日の参加者全員で組む。指導スタッフの話を伝えたり、練習で緊張感を持つために、誰か選手を指名して課題やテーマを宣言して臨んだりすることもある。復唱は、指示が必ず全員に伝わるようにするため。共通理解を持つことが大事と言われているので、全員が同じ方向を向くために伝達は徹底している」とその理由を話してくれた。苦しいときにも崩れにくい、チームワークの背景だ。
取材日の練習は、紅白戦形式がメイン。はじめに守備、次に攻撃、最後は相手に引かれた場面を想定した攻撃をテーマとした。この日は、多数の中学生が練習参加に来ていたが、最初のプレーで誰もが息をのんだ。いきなり激しい接触が起きたが、ピッチ上は「続けろ」の連呼。倒れた選手がすっくと立ち上がって再びボールを追いかけた。1対1の強さは市立船橋高校における選手の評価基準であり続けると朝岡監督は言う。伝統と言える球際の強さには、プライドが宿っている。そして単なる対人戦ではなく、現代サッカーの要素も求められる。
朝岡監督は「見るモノを増やしなさい」と言い、マークする選手へのパスを含めて3つのプレス、パスカットを狙い続けるように指示を出していた。2年生のMF古屋誠志郎選手は、入学前の練習参加を思い出し「すごく頭を使わないとできない。考え続けないと何をすればいいか分からなくなった」と振り返る。藤井選手は「3つ以上見ろと言われて、どこに立てばいいんだと思うこともある」と笑った。
しかし、慣れて来ると選手の狙いが重なり、連動性が生まれる。相手がバックパスをした瞬間、後ろから「行け」と声がかかるよりも早く複数の選手が動き出す場面もあった。緊張感のある練習風景には、強気な駆け引きと連動性で相手を跳ね返す市立船橋高校の特長がにじみ出ていた。色あせない強さを誇る“イチフナ”は、伝統を引き継ぎながら進化を続けている。
授業を終えて、バス移動組が乗車。移動中の車内は、意外にも静かだった
練習場として使用している法典公園(通称グラスポ)。人工芝1面に簡易スタンド、照明ありと練習環境は充実している
練習前には参加者全員で円陣を組むのが恒例となっている
取材日はウォーミングアップのあと、短距離の対面パスから練習がスタートした
この日は紅白戦形式の練習がメインとなった。写真は高速アタッカーのFW永藤歩選手
クラブチーム出身者が多い中、中体連出身で活躍しているMF古屋誠志郎選手
練習で指摘した内容を最後に確認する朝岡隆蔵監督
伝統を守りつつ進化をする市立船橋高校の通称は“イチフナ”
練習後、次戦の対戦相手の映像を見て、その印象を話し合う選手たち
監督・選手コメント
朝岡隆蔵 監督
練習で選手に求めるのは『本気かどうか』。そのために、緊張感のある雰囲気を大事にしています。守備は多くの予測を立てなければ、瞬時にアクションを起こせません。守るモノを増やすことは徹底しています。勝利へのこだわり、1対1の強さを求めることは昔と変わりませんが、時代の変化に即して、攻撃を含めてより意図的なプレーを目指しています。
GK 1 志村滉 選手
練習の雰囲気が良くなるように、日ごろから選手同士でも改善点を話しています。伊藤竜一GKコーチからは、オンとオフの切り替えが大事だと言われます。コーチも練習の合間には冗談を言いますが、プレーになれば真剣に指摘してくれます。厳しいことも言われますけど、指導スタッフ全員がOBなので僕たちのことを分かってくれているなという感覚はあります。
DF 13 椎橋慧也 選手
球際の強さ、攻守の切り替え、活動量の3本柱をメインに、積極的に楽しく練習をしています。守備の練習は、最初は相手一人しか見えませんでしたが、周りに声をかけて幅広い準備をできるようになってきました。試合でもバランスの難しい布陣(3バックとひし形の中盤)をやることで運動量が増えましたし、周りを動かす力が付いてきたと感じています。
MF 16 古屋誠志郎 選手
守備は最低でも3つ以上のポイントを見ろと言われて、頭が真っ白になることがあります(笑)。今日も後ろのスライドが間に合っているのを確認して、自分のマークへのパスコースを消しながらボールを奪いに行く守備をやりましたが、難しいです。でも、やっていくうちに以前よりもインターセプトが狙えるようになったという手ごたえはあります。
チームWebサイト
http://www.ichifuna.ed.jp/club/b02.html