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【最後の青春ドラマ】姉から託されたエースナンバーで挑んだ選手権~第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会・沖野くれあ(ASハリマアルビオン)&沖野るせり(ニッパツ横浜FCシーガルズ)後編

2021年01月02日

【最後の青春ドラマ】姉から託されたエースナンバーで挑んだ選手権~第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会・沖野くれあ(ASハリマアルビオン)&沖野るせり(ニッパツ横浜FCシーガルズ)後編

第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会が2021年1月3日(日)に開幕します。ここでは名門・常盤木学園高校で大会に出場した沖野くれあ選手(ASハリマアルビオン)と沖野るせり選手(ニッパツ横浜FCシーガルズ)の姉妹の高校時代のストーリーをお届けします。

インタビュー前編 ~ケンカばかりの姉妹が名門・常盤木学園へ~ 沖野くれあ(ASハリマアルビオン)&沖野るせり(ニッパツ横浜FCシーガルズ)
インタビュー中編 ~最初で最後の二人での高校一年間~ 沖野くれあ(ASハリマアルビオン)&沖野るせり(ニッパツ横浜FCシーガルズ)

第26回大会でまさかの1回戦敗退を喫した常盤木学園。当時1年生だったるせりは緊迫した一戦をベンチで見守りながらこんなことを思ったそうだ。「こんなときに自分が出場して何ができるんだろう」。そして、「出るのは怖かったですね」と当時の正直な思いを口にした。

試合後、不完全燃焼に終わった姉から「あと2年あるんだから頑張って。10番を頼んだよ」と思いを託された。そのくれあはマイナビベガルタ仙台レディースに加入、るせりは常盤木学園で2年生として新たなスタートを切った。

姉の卒業と共にるせりはある決意をする。それは姉のくれあが2年時に胸に秘めた思いと似通ったものだった。

「誰かに頼ることなく、2年目からはエースになる」

トップ下としてレギュラーの座をつかみ臨んだ夏の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では優勝を果たす。るせり自身も1回戦の十文字高校戦で2アシストを記録するなどチームに貢献した。

2冠を目指して挑んだ第27回大会でも常盤木学園の勢いは続いた。藤枝順心高校との1回戦はPK戦にもつれる大接戦となったが、この一戦をものにすると「勝って勢いに乗れた。これは勝てるなと思った」(るせり)。その後、2回戦で専修大学北上高校、準々決勝で日ノ本学園高校、準決勝で十文字高校を破り、決勝にたどり着く。相手は星槎国際高校湘南。この一戦をるせりは「試合の間が空いて、相手に研究負けしてしまった。何もできなくて、プレーしていて楽しくない試合でした」と振り返る。1回戦から準決勝までは連戦が続いたが、準決勝から決勝まで中5日あり、勢いを持続できなかった常盤木学園は0-1で敗れてしまった。

最終学年になり、るせりは背番号10を託される。これまで常盤木学園では道上彩花(現伊賀フットボールクラブくノ一)、白木星(マイナビベガルタ仙台レディース)、小林里歌子(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、そして、くれあとセンターフォワードが着けるのが通例だったため、くれあ曰く「妹は10番らしい選手かと言われるとそうではない。意外なようで、でも、ある意味思っていたとおりになった」という。

名実ともにチームのエースとなり、第28回大会を迎えた。例年通り各チームのキャプテンが集う抽選会で対戦カードが決定したのだが、抽選会当日、サッカー部内では冗談交じりでこんな会話がなされていたという。

「初戦の相手どこにあると思う?」
「大阪学芸高校じゃない?」

その“予言”は的中する。抽選の結果、常盤木学園は2年前に苦汁をなめさせられた大阪学芸高校と再戦が決まったのだった。

舞台は整った。「お姉ちゃんのリベンジをさせてくれる機会をつくってくれたんだなって思いました。勝つしかない」とるせりも一層の気合を入れて決戦を待ちわびた。

迎えた1回戦、るせりは「1年目のときの自信のなさとは違った」とエースナンバーを背負い、堂々と戦った。しかし、「プレッシャー負け。みんな固まってしまった」というように、前半のうちに立て続けに3失点を喫し、反撃もままならず0-3で試合は終了。るせりの高校3年間もまた静かに幕を閉じたのだった。

スタンドには応援に駆けつけたくれあの姿もあった。その目に妹のプレーは「人一倍走っていた」と焼き付いていた。

中学時代までは「別に何とも思っていなかったし、好きという感情もなかった」と口にするるせりだったが、今では「お姉ちゃんがこれまで道をつくってきてくれたからここまで来れた。すごく優しいし、すごく感謝しています」と言葉を惜しまない。

二人にとって高校選手権はどのような大会だったかくれあに問うた。すると「3年生では私のときも妹のときも1回戦負けだったので…」とうつむき加減に答え、「でも」と言葉をつないだ。「お互いがいないときに一番いい成績を残せているので、妹はもしかしたら私のために2年生のときにいい成績を残してくれたんじゃないかって勝手に思っています」と照れくさそうに笑った。

2020シーズン、くれあはASハリマアルビオン、るせりはニッパツ横浜FCシーガルズでプレー。同じなでしこリーグ2部所属ではあるが、別々の道を歩んでいる。離れても互いを思い、共に高め合う姉妹の物語は続いていく。

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第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会

大会期間:2021年1月3日(日)~2021年1月10日(日)
大会会場:三木総合防災公園(兵庫県三木市)、五色台運動公園(兵庫県洲本市)、いぶきの森球技場(兵庫県神戸市)、ノエビアスタジアム神戸(兵庫県神戸市)

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