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【最後の青春ドラマ】最初で最後の二人での高校一年間~第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会・沖野くれあ(ASハリマアルビオン)&沖野るせり(ニッパツ横浜FCシーガルズ)中編

2021年01月01日

【最後の青春ドラマ】最初で最後の二人での高校一年間~第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会・沖野くれあ(ASハリマアルビオン)&沖野るせり(ニッパツ横浜FCシーガルズ)中編

第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会が2021年1月3日(日)に開幕します。ここでは名門・常盤木学園高校で大会に出場した沖野くれあ選手(ASハリマアルビオン)と沖野るせり選手(ニッパツ横浜FCシーガルズ)の姉妹の高校時代のストーリーをお届けします。

インタビュー前編 ~ケンカばかりの姉妹が名門・常盤木学園へ~ 沖野くれあ(ASハリマアルビオン)&沖野るせり(ニッパツ横浜FCシーガルズ)

姉のくれあが常盤木学園で日々成長する一方で、妹のるせりもクラブフィールズ・リンダで背番号10を背負い、第38回皇后杯全日本女子サッカー選手権大会でゴールを決めるなど着々と力をつけていた。そして、「お姉ちゃんと一緒にプレーしたいというのもあったし、(プレナス)チャレンジリーグに入っているのは大きかった。高校を卒業したらなでしこリーグのチームに入ると決めていたので一番の近道」と常盤木学園へ進学するのであった。

この間、二人の関係性に変化が起きていた。連日、互いに携帯電話で連絡を取り合い、サッカーのこと、学校のこと、他愛のないことを話していたそうだ。「一度離れ離れになって、お姉ちゃんのありがたさを感じ、寂しくなった。また一緒にサッカーがしたいと思った」とるせりが言うほどすっかり仲良し姉妹になっていたのだった。

2016年春、るせりの携帯電話にくれあから一本の連絡が入る。「るせ(るせり)、14番だよ」。前年まで2年間くれあが付けていた背番号14の後継者がるせりであるという知らせだった。居ても立っても居られず、その後、るせりはランニングに出かけた。それほどうれしかったのだ。

同時にくれあの背番号が「10」になることも知らされた。「入学できれば奇跡」と思っていた両親は大層驚いていたそうだが、るせりの反応はこうだ。「お姉ちゃんは私の中でずっとエースだった。だから似合うなと思った」。

かくして二人は同じユニフォームに袖を通し、くれあにとっては最後の、るせりにとっては最初の高校一年間が始まった。寮では同部屋。二人の目標は「妹と2トップを組んで、私のアシストでゴールしてほしいし、妹のアシストで私もゴールしたいと思っていた」(くれあ)というように“姉妹共演”だった。

その機会はシーズン序盤に訪れる。2017年のプレナスチャレンジリーグEASTのFC十文字VENTUSとの開幕戦、くれあは先発出場し、81分にるせりが途中出場する。しかし、「何もできなかった」とるせりが振り返るように目立った活躍はできず、チームも1-3で敗れた。その後、第3節の新潟医療福祉大学女子サッカー部戦ではるせりも先発のチャンスを与えられたが、ハーフタイムで交代させられてしまう。

徐々にるせりの出場機会は減っていき、“姉妹共演”に黄色信号が灯っていた。チャンスをものにできずに落ち込むるせりに対して、くれあは優しく励まし続けたという。「妹は私と違って、怒られたことを全て吸収してしまって、マイナスな方向に考えてしまう。そこで自分が厳しいことを言うのではなくて、話を聞いてあげることにしました」とくれあ。妹の性格を理解した上での対応。「どうしたら二人で出られるか」を夜遅くまで話し合うこともあった。

さらに二人は全体練習後の自主練習にも取り組んだ。そこにはくれあなりの理由がある。「妹からいいパスをもらって自分が決めるだけというシーンもあったけど、それを決められなかった。妹は全然だめだったって言うかもしれないけど、そんなことはなかった」。あそこで決めていれば、という負い目もあり、何とか再び2トップで出場するための道を探っていたのだった。

二人とも真剣がゆえにときには言い争いにもなった。くれあは「姉妹同士で練習して、終いにはケンカして、周りからしたら迷惑だったんじゃないか」と当時を思い出して笑うが、その姿は実家のサッカーゴールを巡ってケンカをしていた頃の姿に重なるものがあったのではないか。もちろんその頃よりも絆はより強くなっていたのは言うまでもないことだ。

冬を迎えた頃、状況は好転せず、るせりのチーム内での立場は依然として控えFWだった。それでもくれあは「私がたくさん点を取るから途中からでも一緒に出ようね」と希望を捨てていなかった。

年が変わり、第26回全日本高等学校女子サッカー選手権大会を迎えた。1回戦の相手は大阪学芸高校。試合は常盤木学園がボールを支配し、ベンチで戦況を見守るるせりの目にも「いつかゴールが決まるだろうな」と映っていた。しかし、時間の経過とともに少しずつ焦りが生じる。シュートを打てど決まらない。そして迎えた68分、相手に先制ゴールを奪われてしまう。残り12分でゴールネットは揺れず、常盤木学園の17年ぶりの1回戦敗退が決まった。

フル出場したくれあは「あっけなかったし、自分の必死さも出てなかったと思う。なんであんなプレーしたんだろうと後悔している」と不完全燃焼で高校サッカー最後の瞬間を迎えた。試合終了のホイッスルは同時に、沖野姉妹が別々の道を歩む、その始まりを意味していた。

インタビュー後編 ~姉から託されたエースナンバーで挑んだ選手権~ 沖野くれあ(ASハリマアルビオン)&沖野るせり(ニッパツ横浜FCシーガルズ)

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第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会

大会期間:2021年1月3日(日)~2021年1月10日(日)
大会会場:三木総合防災公園(兵庫県三木市)、五色台運動公園(兵庫県洲本市)、いぶきの森球技場(兵庫県神戸市)、ノエビアスタジアム神戸(兵庫県神戸市)

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