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「プレミアリーグを戦った2年間が、人生の中で一番大きく変われた」 室屋 成選手インタビュー 後編

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2020年09月02日

「プレミアリーグを戦った2年間が、人生の中で一番大きく変われた」 室屋 成選手インタビュー 後編

新型コロナウイルス感染拡大の影響によって中止になっていた高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2020が、「高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2020 関東」と「高円宮杯 JFA U-18サッカースーパープリンスリーグ 2020」となって、8月末から順次開幕します。実は、今年の春の開幕に合わせて、先日、FC東京からドイツブンデスリーガ2部ハノーファーへの移籍が発表された室屋成選手に、大会公式プログラムに掲載する予定でインタビューを行っていました。その中で室屋選手は、生まれ育った大阪から青森山田高校へ進学し、苦労を重ねながらも仲間とともに奮闘した経験を熱く、懐かしそうに語ってくれていました。高円宮杯の開幕に合わせて、そのインタビューを当時の内容のまま公開します。

インタビュー日:2020年3月15日

前編はこちら

ライバル意識むき出しで戦った流経戦

――関東以外の地域の選手にとっては大きかったでしょうね。特に印象的な試合はありますか?

室屋 いっぱいありますね。どれかひとつと言われると困りますが……。ヴェルディと試合をしたことはすごく印象深い一方で、この年は流経(流通経大学柏高校)もかなり強かったので、アウェイ戦を1-0で勝った試合は思い出になっていますね。流経は応援もすごくて、スタンドからいろいろと言われるのですが(笑)、でもそれも良くて、とても楽しくて燃えましたね。

――右サイドバックだと(位置的にも)言われますよね(笑)。

室屋 サイドバックはそういう宿命なので、ずっと言われながらプレーをしていました(笑)。でも、高校生でそういうアウェイのプレッシャーを受ける試合ができるなんて最高じゃないですか! それも楽しめたし、試合内容も熱くて、面白かったですね。Jクラブ相手の試合も印象深いですが、高体連同士もライバル意識が強いですから、そこもみんな燃えました。

――プレミアリーグのもうひとつの醍醐味は、高校生なのにホーム・アンド・アウェーができるというのもありますよね。

室屋 そうです。そこはすごく大きいと思います。逆に青森山田がホームでやるときは、自分たちも部員は多いので、みんなの応援で力をもらえました。

――青森だと移動も大変だったと思います。

室屋 アウェイはどこもバスでずっと行っていました。コーチがずっとバスを運転していましたが、今考えてみるととても大変なことをやっていただいたと思います。青森から清水などの遠方まで運転をされていました。コーチとしての仕事も当然別にあるわけで、あらためてすごいなと思います。

――選手としては大変ではなかったですか。

室屋 最初は厳しかったですけれど、まあ慣れてしまえば……。もちろん、今だったら(バスでの長距離移動は)避けたいですし、『無理です』と言うと思います(笑)。でも、当時は高校生で、毎週すごく強いチームと対戦できることに対して感謝の気持ちを持っていましたから、苦ではなかったですね。

――他にプレミアリーグだからこそ感じたことはありますか。

室屋 僕は2年生からプレミアリーグができましたが、できる前との違いは感じていました。特にプレミアリーグが始まって、世の中から注目されるようになったのはすごく感じました。試合でいいプレーをするとメディアに紹介されたり、そうやって活躍して自信をつけて、どんどんうまくなっていく選手も実際にいました。だからプレミアリーグで活躍して自分たちの記事が載ったりすると、モチベーションが上がりましたね。

――それはプリンスリーグ東北だとなかったことかもしれませんね。

室屋 なかったのもありますし、何より(青森山田は)東北で勝っていても『当然でしょ』といった周りの雰囲気もありました。それが2年生になったら、有名なチームと対戦できるし、活躍したらメディアに名前や写真が載る。『ちょっとテンション上がっちゃうぞ』となります(笑)。それだけでなく、『勝たなければいけない』から『挑戦する』リーグになったこともあって、練習から雰囲気が変わったと思います。今は1年生から(プレミアで)やっているのですよね。いいなあ(笑)。

――今、プリンスリーグ東北に出ているのは青森山田のセカンドチームですよ。

室屋 え、そうなのですね。すごいな……。でも、そういう恵まれた環境にいることって、高校生活が終わってから気付くことが多いと思います。だからいまは、最高の環境、最高のリーグでプレーできているということを噛みしめてチャレンジしてほしいですね。とにかく楽しかったなというのは振り返ってもすごく感じますし。

――そうやって一緒に戦った仲間というのは財産ですよね。

室屋 練習は厳しかったので、正直、戻りたいとは思わないですけれどね(笑)。でも、やっぱり自分のサッカー人生の転機になったのはどこかと言えば高校時代だったし、プレミアリーグも含めてすごく大切な時間だったなというのは思います。だからいま、高校生の選手たちもそこを存分に楽しんでほしいです。

無人島でも生き残れる自信

――試合に出られないとか、練習がすごくきついとか、いま厳しさに折れそうになっている選手もいると思いますが、それも経験ですか。

室屋 そうですね。もちろん、その先に良いことがあると保証はできないし、分からないです。でも、うまくいかないからと落ち込む必要はないです。時間が解決してくれることも多いですから。

――室屋選手自身は高校時代につらいこともありましたか。

室屋 ありましたよ。高校生なりにいろいろと悩んでいましたけれど、いまにして思えば小さな悩みだったこともたくさんあります。そのときは『やばい』、『終わりだ』と思ってしまいがちですけれど、大人になってから考えると『小さいことだったな』と思うこともほとんどです。だから、思い詰めないでやってほしいとは思います。

――黒田監督から怒られたりもしたわけですよね。

室屋 それはもちろん、何回も(笑)。監督は怖い立場だったので、ガツンと言われましたね。それを正木昌宣コーチがケアしてくれるといった絶妙なバランスだったと思います。監督に怒られてイライラしていたり落ち込んでいたときも、正木さんがうまくケアしてくれて、『監督のことを見返してやろう』という気持ちになっていたと思います。その絶妙なバランスで青森山田がうまくいっているのかなとも思いますね。

――二人はそれを狙ってやっていたのかなとか思ったりしますか。

室屋 そうかもしれないです。Jリーガーになってから監督に会ってみたら面白い人ですし、(当時と)まるで違うんですよ。『あれ、こういう人だったっけ?』と。やっぱり、黒田先生は意識して厳しく引き締め役をやられていたのだろうなとは感じます。

――青森山田と言えば、タフな雪中トレーニングも有名です。

室屋 あれは本当に厳しいですよ。50対50くらいでやるのですが、もう戦いです。監督の発想は面白いですよね。普通だったら、『雪だから外での練習はやめよう』ですけれど、違いましたから。

――その厳しさで培われたモノはありますか。

室屋 例えば突然、無人島に取り残されたとき、そこで生き残る自信があるというか……。青森山田は人数も多いので、そこでしのぎを削って試合に出なければいけないですし、しかもそれを中学校で親元を離れてまったく知らない土地まで行って経験したのは大きかったと思います。サッカー以前に、『俺はこの先も生きていけるのだろうな』と思えるようなベースができました。その生きるという部分が一番大事かなとも思っています。すごく過酷な状況になっても、『俺は絶対生きていける』というのは感じていますね。

――いろいろなチームのOBを集めて無人島に放ったら、青森山田OBが一番生き残ります?

室屋 たぶん、生き残ると思いますよ(笑)。なにせ、寒さにも強いんで。

――最後にあらためて、プレミアリーグの後輩たちに贈る言葉をお願いします。

室屋 最高の時間だと思うので、とにかく楽しんでほしいです。まだ何をやっても許されるというか、失敗もできる年齢なので、とにかくトライしてやっていけばいい。毎週強い相手と対戦できるわけですし、ガンガン挑戦してください!

室屋 成(むろや・せい)選手の紹介

1994年4月5日生まれ、大阪府出身。ゼッセル熊取FC→青森山田高校→明治大学を経てFC東京に加入。豊富な運動量とスピードあふれる攻撃参加が武器のサイドプレーヤー。2016年リオデジャネイロオリンピック出場し、日本代表としても活躍。昨年はJリーグ優秀選手賞とベストイレブンを受賞した。2020年8月、FC東京からブンデスリーガ2部ハノーファーへの移籍が発表された。

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