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【最後の青春ドラマ】めまぐるしい3年間の最後に待ち受けていた現実は~高校女子選手権・宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)後編
2022年12月28日
第31回全日本高等学校女子サッカー選手権大会が2022年12月30日(金)に開幕します。高校日本一を決する大会に出場した選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここではなでしこジャパン(日本女子代表)でも活躍する宮澤ひなた選手(マイナビ仙台レディース)の高校時代のストーリーをお届けします。
○オンライン取材日:2022年12月22日
3点をリードするもPK戦の末に初戦敗退
星槎国際高校湘南で入学当初からレギュラーとして活躍し、1年時の第24回大会に続き、2年時の第25回全日本高等学校女子サッカー選手権大会に出場した宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)。日ノ本学園との初戦は彼女自身の2ゴール1アシストの活躍で3点をリードしたものの、その後、追い付かれて3-3でタイムアップ。PK戦に突入することとなった。
宮澤は3人目のキッカーに指名されていたが、ハーフウェーラインに両チームの選手が並んでいるとき、相手チームの選手がこのような会話を交わしていたのが耳に入ったという。
「分析しておいてよかったね」
その言葉が何を意味するのか、本当に何かを分析していたのかどうかは、確かめようがなかったので分からない。いずれにしても、相手GKは星槎国際湘南の選手たちのキックのコースを完璧に読んでいた。1人目は成功させたものの2人目が止められ、宮澤の番が巡ってきた。
「蹴る人みんな読まれていて、それを自分自身もすごく感じながら蹴ることになりました。もともとPKはあまり得意ではなかったんですけど、相手の言葉を聞いてなおさら変なプレッシャーを感じました」
嫌な予感は的中し、宮澤のキックもゴールネットを揺らすことはできなかった。星槎国際湘南のGKも健闘を見せたものの、最終的には6人ずつが蹴り合い、3-4で惜敗となった。星槎国際湘南にとっては2年連続の初戦PK戦敗退だ。
「チームとしてやるべきことができて、見てくださる方々を魅了できたと思いますし、多くの方々の心に残ればいいな、と思えるような試合でした」と振り返るほどのグッドゲームだったが、結果は伴わなかった。宮澤は敗因をこう振り返る。
「3点決めて『勝てる』と思った時点で終わっていたと思います。それをひっくり返すだけの力がある相手だったので、チームとしての戦い方を統一しなければいけなかったですね。PK戦も対策されていて、その逆を突けなかった。最後に外してしまった選手の姿を見て、悔しい気持ちがさらに高まりました」
迎えた3年時、宮澤は柄澤俊介監督からの任命でキャプテンに就任する。「キャプテンシーを発揮するタイプでもないし、みんなをまとめるのは得意ではなかった」というが、下級生も含めた全員がプレーしやすい環境をつくり、チームをさらにレベルアップさせるために重責を担う決意をし、悩みながらもキャプテンとしてチームをけん引していった。
3年連続初戦敗退…それも得られたもの
夏の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では、2回戦で常盤木学園高校にPK戦勝利を飾った。準決勝で藤枝順心高校に敗れはしたものの、創部初となるインターハイ3位入賞を果たし、「チームとして自信が深まり、全国制覇を目指したい、少しでも長くみんなと一緒にプレーしたいという気持ちが高まった」状態で女子選手権の第26回大会に挑むこととなった。
初戦の相手は大商学園高校。宮澤自身も「3年間、大会に出場し、試合に出させてもらっている立場として、1回でも勝ちたかった」と並々ならぬ決意で臨んだ試合は、27分に先制点を奪われたものの、後半立ち上がりの49分に同点に追いつくことに成功する。
ここから畳み掛けていきたいところだったが、なかなか思いどおりにいかないのが女子選手権という大会の難しさ。73分に勝ち越しゴールを許すと、星槎国際湘南にも、そして宮澤自身にも、反撃する力は残っていなかった。
個人として3年連続で女子選手権に出場しながら、3年連続で初戦敗退。「終わっちゃったな」という思いが去来する反面、「相手に勝ち越されて終盤を迎えたときに、チームを勝たせられるような選手に今後なっていきたい」という気持ちも芽生え、宮澤の女子選手権は終幕を迎えた。
高校の3年間を「目まぐるしかった」と振り返る宮澤。サッカー部に加えてOSAレイアFC(現、SEISA OSAレイア湘南FC)の練習や試合もこなし、年代別代表の活動にも参加していたのだから、それも当然だろう。それでも「人間性の部分はすごく成長できた」と語り、「今の自分があるのは高校の3年間があったからこそ。星槎国際湘南に行って本当に良かったと思います」と断言する。「多くの方に応援され、愛される選手になりたい」という目標を掲げる宮澤にとって、星槎国際湘南で学んだことは、今の人生に大きく生かされているようだ。
なお、星槎国際湘南は宮澤が卒業した翌年度の第27回大会で悲願の初優勝を飾った。「来年こそは頼んだよ」と託した後輩たちが決勝で常盤木学園を下し歓喜に沸く瞬間に、宮澤も運よく立ち合うことができた。「自分たちの代で優勝したかったな、という気持ちもありましたけど、後輩たちが結果を残してくれたのはすごくうれしかったです」。宮澤はその日のことを思い出して笑顔を見せた。
宮澤は女子選手権について「大会に懸ける思いは他の何に対してよりも強かった。日々やってきたことをぶつけられて、自分を表現できる大会だった」と語る。3年連続で初戦敗退を喫し、悔しさ、悲しさを味わうことのほうが大きかったはずだが、彼女にとってはすべての瞬間が思い出に残り、多くの収穫を得られたようだ。
第31回全日本高等学校女子サッカー選手権大会
大会期間:2022年12月30日(金)~2023年1月8日(日)
大会会場:三木総合防災公園(兵庫県三木市)、五色台運動公園(兵庫県洲本市)、いぶきの森球技場(兵庫県神戸市)、ノエビアスタジアム神戸(兵庫県神戸市)
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