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アクチュアル・プレーイングタイム ~いつも心にリスペクト Vol.40~
2016年08月29日
「サッカーの試合は何分間?」
この質問には、誰でも答えれるでしょう。そう、90分間です。でも前後半のアディショナルタイムを入れたら?平均すると、94~95分間程度でしょうか。
しかしこの中で実際にプレーが行われている時間が驚くほど短いことをご存じでしょうか。
Jリーグは2012年から「プラス・クォリティー・プロジェクト」という活動を実施し、以下の4つの「約束」を公表しました
1.簡単に倒れない、笛が鳴るまでプレーをやめない。
2.リスタートを早くしよう。
3.選手交代を早くしよう。
4.抗議・遅延はゼロを目指そう。
そしてそのプロジェクトの一環として「アクチュアル・プレーイングタイム」を発表しています。
ボールが外に出てからスローインやゴールキック、コーナーキックで試合が再開されたり、ファウルの判定からFKが蹴られるまでなどの時間を除き、「実際にプレーが動いている時間」は、計測してみると、Jリーグだけでなくワールドカップでも60分に満たないことが知られています。
J1のセカンドステージ第2節(7月9日)までの全171試合の平均は56分28秒。昨年1シーズンの平均が54分30秒でしたから、2分間近く伸びていることになります。「約束」の1、「ファウルがあってもできるだけプレーを続けさせる、続ける」という今季はじめのレフェリーと選手たちの申し合わせの成果が、明確な数字で表れたと言えるでしょう。
しかしそれでも、アディショナルタイムを含めると1試合に40分間近くが、プレーが止まった状態であるという事実を見逃すことはできません。そして何よりも、試合やチームによって大きな差があることも重大なことです。
7月9日までのJ1で最も長い「アクチュアル・プレーイングタイム」は、2月27日のファーストステージ第1節、サンフレッチェ広島×川崎フロンターレで生まれました。実に71分09秒。平均より15分間近くもこの2チームの選手たちは走り、戦っていたということになります。その一方で、同じ日のジュビロ磐田×名古屋グランパスは 41分50秒という記録でした。同じ1試合で30分近くもの差があるのです。
観戦者が何に満足するか、それは人によって違うでしょう。しかしシュートがゴールを外れてからGKがずるずると時間をかけていたり、CKになったときにキッカーがなかなかコーナーに行かなかったり、あるいは交代を命じられた選手がゆっくりと歩いていたりといった様子を見て、「サッカーは素晴らしい!見に来てよかった」と思う人はまずいないでしょう。スピードにあふれた攻防やゴール前でのスリルに富んだせめぎ合いこそサッカーの醍醐味であることは、間違いありません。
相手がいる競技ですから、観客に感銘を与えるプレー、ファンを喜ばせる勝利をいつでも見せられるわけではありません。だからこそ、だらだらとした時間をできるだけ減らし、「アクチュアル・プレーイングタイム」 を増やそうというのが、プロとしてあるべき態度ではないでしょうか。そしてそれこそ、観客、そしてテレビで見ている数多くのファンに対するプロ選手からの「リスペクト」というものではないでしょうか。
7月9日までの171試合で、ゴールキックは2876回、1試合平均16.8回。それにかかる時間は平均23.4秒。1試合に6分33秒もゴールキックに使われていることになります。コーナーキックは1500回(1試合8.8回)。平均31.9秒で4分41秒。選手交代はハーフタイム時を除いて712回(1試合4.2回)。平均23.8秒で1分40秒。これらの数字をゼロにすることはできませんが、減らす努力がどのくらい行われているでしょうか。
お気づきでしょうか。ゴールキックやコーナーキックを蹴るまでの時間、そして選手交代にはまったく「技術」はいりません。その時間を縮めようという努力は、誰にでもできるものなのです。
寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)
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