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施設確保や障がい者サッカーの情報発信・共有などの共通課題も~JFAグラスルーツ推進・賛同パートナーカンファレンス」を開催~
2018年05月21日
日本サッカー協会(JFA)は5月20日(日)、JFAハウス内の日本サッカーミュージアム・ヴァーチャルスタジアムで「JFAグラスルーツ推進・賛同パートナーカンファレンス」を初めて開催しました。同カンファレンスには、一般参加者やウェブ会議システムでの参加者を含む60名が参加。JFAグラスルーツ宣言の具現化につながる様々な取り組みの中で、「引退なし」「補欠ゼロ」「障がい者サッカー」「部活とクラブの連携」のテーマに関する事例発表のあと、12のグループに分かれ、テーマごとに理想の環境や課題を考えるグループディスカッションを行いました。最後に各グループからの全体発表があり、特に施設の確保や障がい者サッカー等の情報発信・共有といった共通の課題が浮き彫りになりました。JFAでは、今後も現場でグラスルーツの活動をされている団体と直接つながる「JFAグラスルーツ推進・賛同パートナー制度」を通じて、「グラスルーツ」のサッカーがより多くの方々に必要とされるよう、活動を推進していきます。
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カンファレンスは、まず冒頭に田嶋幸三JFA会長のあいさつから始まり、「スポーツは、健康増進やトップレベルの強化だけでなく、地域コミュニティーの醸成や教育などにおいて極めて重要な役割を果たすものです。少子化は確実に進んでいますし、一方で、長寿が進み、誰もがより健康に、より実り多き人生を送るための施策を真剣に考えていかなければなりません。スポーツが果たす役割は決して小さくはなく、2年後に東京オリンピック・パラリンピックを控えた今、サッカー協会として『ポスト2020』のスポーツ界というものをしっかり考えていかなければならないと思っています。」とグラスルーツへの期待を込めたあと、松田薫二JFAグラスルーツ推進部部長から「JFAグラスルーツ推進・賛同パートナー制度」の目的と意義について改めて紹介しました。
事例発表
その後の事例発表では、4つの団体から以下の報告がありました。
「引退なし」の事例:あざみ野キッカーズ(神奈川県)
あざみ野キッカーズからは、小学校の場所を利用して子どもからお年寄りまで200人以上が活動していること、ライフステージの変化があってサッカーの優先順位を下げざるを得ない状況となっても「引退」ではなく「休部」として扱い、いつでも復帰できることなどが紹介されました。
賛同パートナー紹介ページ
http://www.jfa.jp/football_family/grassroots/gr_azk/
「補欠ゼロ」の事例:NPO港北フットボールクラブ(神奈川県)
NPO港北フットボールクラブからは、小学生年代では「補欠ゼロ」の考え方を大切にし、施設確保が難しく一つのクラブから複数のチームが大会へエントリーしにくいという地域の現状を踏まえ、3年生までは公式戦に出場しないようにしていることや、1学年の人数を20人までに制限していることなど、競技志向によらない運営をしていることが紹介されました。
賛同パートナー紹介ページ
http://www.jfa.jp/football_family/grassroots/gr_npo_kohoku_fc/
「障がい者サッカー」の事例:バンクル茨城ダイバーシティフットボールクラブ(茨城県)
バンクル茨城ダイバーシティフットボールクラブからは、様々な種類の障がいがある子どもを「ごく普通のサッカースクール」が受け入れ、「障がいをハンデとして捉えず、その子の個性だと捉え、出来ないことは苦手なだけで、失っていることではない」との考え方で選手育成にあたっていることが紹介されました。
賛同パートナー紹介ページ
http://www.jfa.jp/football_family/grassroots/gr_ibaraki_diversity_fc/
部活とクラブの連携の事例:NPO法人幕総クラブ(千葉県)
NPO法人幕総クラブは、活動拠点となっている千葉県立幕張総合高校がOBと連携し、卒業後も地域に貢献できる場を作りたいという思いからクラブを立ち上げ、高校生にクラブチームという選択肢を作りました。社会人やジュニアのチームを創設したことや、総合型スポーツクラブとして、ダンス、水泳、クライミングの活動があり、他校の生徒も参加できるようになっていることなどが紹介されました。
賛同パートナー紹介ページ
http://www.jfa.jp/football_family/grassroots/gr_npo_makuso_club/
グループディスカッション
事例共有のあと行われたグループディスカッションでは、各グループから以下の発表がありました。
引退なし
・毎週末ボールが蹴れる場所があり、皆をまとめる世話役がいることが理想。そのためには、グラウンドを常に確保し、後継者を育てなければならない。公の制度を利用し、学校開放などを働きかけていく必要がある。
・決まった時間に、決まった場所に、仲間が集まれることが理想。そのためには、安全にけがをせず続けられることや、人数、場所の確保などが必要。ソサイチ(南米発祥の7人制サッカー)、フットサル、ウォーキングフットボールなど、レベルに合わせたルールやソフトがあり、地域の課題に寄り添うことが求められている。
・ウォーキングサッカーは、年齢、性別、身体能力を問わず、高齢者や障がいのある方でも幅広く参加することができるので、ユニバーサルスポーツとして普及させたい。
補欠ゼロ
・どんな子どもでも参加できるリーグ戦があり、移籍も自由にでき、「補欠」という言葉の意味を変えていきたい。勝利至上主義の指導者の考え方を変え、JFA主導でリーグ戦の方法を考えてほしい。
・勝利至上主義ではなく、育成主導主義でありたい。個人の身体能力ではなく、考える力を育てたい。試合における個人の役割の大切さを伝え、考え行動できるようにする必要がある。
・サッカーは一部のうまい選手のものではなく、みんなとやるから楽しい。いろいろな場所や仲間で参加できるストリートサッカーような光景が理想。
・サッカーに勝負はつきもの。補欠ゼロの活動で平等に個を育みたい。
障がい者サッカー
・地道な情報発信が行われ、理解が促されているポジティブなサイクルとしたい。指導者不足や情報不足、資金調達、障がい者に対応したグラウンドの確保などが必要で、障がい者サッカー連盟を通じた47都道府県でのミーティングを開催し、チーム、元プロサッカー選手、大学などからの参加があるといい。
・バリアフリーの総合スポーツ施設や専門で活動する団体の情報が地域により広がっていけば、「障がい者サッカー」というカテゴリーそのものがなくなるのでは。分かりやすい情報発信、当事者からの情報提供などが求められている。
・障がい者サッカーのテーマに関しては、各障がいに対してサポートできる指導者の充実が必要。お互いの理解とコミュニケーションの工夫が課題。そのために、障がいの有無にかかわらずまずは一緒にサッカーを楽しむことが大切。
・様々な形で行われているサッカーが、いつどこでできるか、みんなに見られている状態であることが理想。競合があり場所の確保ができないことと、差別意識により周囲の理解がないことが課題。
・障がい者に対する認識の間違いや勘違いをなくしたい。だれもがプレーできるようにするためには、会場や人のアクセシビリティ(利用しやすさ)が必要。
なお、本カンファレンスの開催にあたっては、ウェブ会議システムを利用し遠隔地からインターネットを利用して参加していただけるようにしたほか、会議の模様をどこからでもご覧いただけるよう、JFA TVによるインターネットライブ配信を実施しました。また、聴覚障がいのある参加者のために、手話通訳と音声認識ソフトを利用し情報保障を行いました。
また、アジアサッカー連盟(AFC)が制定した「AFCグラスルーツフットボールデー」の日本における記念イベントとして開催し、本カンファレンスの結果は、現在実施中の「第2回JFAグラスルーツアンケート調査」の結果とともに、JFAが策定を進めている「JFAグラスルーツロードマップ(仮称)」に反映させる予定です。
現場の皆さんの声を聞かせてください!「第2回JFAグラスルーツアンケート調査」実施のお知らせ
コメント
長谷川知広 さん(カンファレンスに参加した賛同パートナー「NPO法人ビッグイシュー基金」)
今日のカンファレンスでは、ホームレスサッカーのことも触れていただき、すごく嬉しかったです。実際にいろんな方々と接することができ、みんなサッカーの仲間なんだと認められた気がしました。グループディスカッションでは、初めての方々ばかりで自己紹介で時間を費やしてしまいましたが、神奈川県の知的障がい者サッカーの代表者の方が息子さんに知的障がいがあり、早くからサッカーは無理だと周囲から言われていたが、そうではなかったという経験から、サッカーはもっとみんなできるはずだという信念で活動をされているという話を聞いて、とても素敵だと思いました。障がい者サッカーのバンクル茨城は、『だれもが来れる場所』の考えが自分たちの活動とも共通していて、なにか一緒に活動できたらと思いました。他のグループの発表を聞いて、やはりサッカーの活動場所で苦労している方が多いんだと感じました。事例共有をされたあざみ野キッカーズでさえも、最初はグラウンドの確保に大変な努力をされ、ゼロから作ってきたという歴史を感じました。勝利至上主義にならないように、教育の観点で指導者も育成している団体が多かったので、自分たちの活動を振り返った時に、ただサッカーが楽しければいいということだけでなく、サッカーをすることでその人の人生をより自分らしく生きていけるといったところまで設計して、思いをもって活動されている方がたくさんいて、勇気をもらいました。私たちの活動には、あざみのキッカーズ出身のコーチがいます。彼がホームレスサッカーにずっと関わってきたのも、あざみのキッカーズでの経験があったからというメールを最近もらい、その理由がわかった気がしました。
須原清貴 公益財団法人日本サッカー協会 専務理事
本日は大変お忙しい中、本当に活発に議論してくださいました。4団体の方々からはベストプラクティスとして、素晴らしいプレゼンテーションを頂戴しました。私自身は、グラスルーツの活動に長く携わっております。個人として、東京都世田谷区で4種の少年団で指導者として、18年間参画し、そのうちの3年間は代表も務めました。クラブそのものが32年の歴史があり、スタートしたときは区立小学校と交渉した結果、平日の夕方5時から2時間だけなら貸してもらえるところから始まりました。冬になると真っ暗。平日の夕方2時間のみボールを蹴るというところから、今となってはおかげさまで各学年20名。場合によっては30名ぐらいの子どもたちが集まって、毎週土曜日と日曜日、小学校のグラウンドを朝の8時から午後の1時まで、優先的に使わせていただきながら、活動をしています。
今日皆さんがお話をされた通り、グラウンドの確保には本当に四苦八苦です。特に、東京都世田谷区という土地柄があるかもしれませんが、とにかく場所がないです。あと、指導者の確保は、もう至難の技でございます。加えて、東京都の2級審判員として長く活動しています。東京都リーグや関東リーグで旗を振ったりする中で、障がい者サッカーの審判員として呼んでいただくことが何回かございました。耳の不自由な方のサッカー、目の見えない方のサッカー、知的障がい者のサッカー。感動の連続でした。今日もバンクル茨城の方が、『障がいは、ハンデではなくて個性だ』とおっしゃっておりましたけれども、それが実際に一緒にこのフィールドで活動することによって、しっかりと我々審判員に対してもそれが伝わり、審判員として本当に勉強になります。そのことに気づくことができるのも、全て、グラスルーツサッカーの皆様がこうして日々頑張ってくださっている、そのおかげだと思います。今日お忙しい中、せっかくお時間をいただいて素晴らしいアイデア、ご意見をいただきました。そのご意見をいただいただけではなく、次のアクションにつなげて一歩でも前に進めるように持っていくのが日本サッカー協会の責務だと思っております。
今後とも、引き続きグラスルーツ、日本サッカーのために、皆さんのお力添えが必要でございますので、一緒に頑張っていきたいと思いますし、我々としても、ご支援サポートさせていただきます。本当に今日はどうもありがとうございました。(グループディスカッションの講評にて)
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