メディカル関係者向け情報
競技中、選手に脳振盪の疑いが生じた場合の対応【サッカー日本代表、Jリーグ対象】
[ メディカル関係者向け情報 ]
FIFA(国際サッカー連盟)では、選手の安全を守るため、2014年9月の理事会にて、競技中、脳振盪の疑いが生じた選手への対応につきまして、次のようにあらたな手続きを行う施策を決定いたしました。本対応は、FIFA、AFC(アジアサッカー連盟)をはじめ、諸外国でもすでに採用されているものであり、競技中の選手の安全を守り、サッカーの価値を高めるものになるものと思料いたします。
本対応は、ピッチ内で短時間での脳振盪の有無を判断するという専門性が高い行為であることから、本協会主催試合としては、まずはチームドクターが必ず帯同している日本代表戦およびJリーグの試合(トップチーム)での導入することとし、今後、環境が整った後、他大会での導入を検討してまいります。
しかしながら、対象試合以外の競技会におかれましても、脳振盪の疑いが生じた選手の対応につきましては、従来通り、「サッカーにおける脳振盪に対する指針」にもとづき、チーム、審判員、競技会運営者との協力により、細心の注意を払って対応をし、決して無理をしてプレーを継続させることのないようご注意いただきたい。
対象試合
サッカー日本代表戦およびJリーグでの試合(トップチーム)
実施時期
2016シーズンより
手順
- ①競技中、選手が頭頸部を強く打ったと主審が判断した場合、主審はすみやかに当該選手のチームドクターをピッチ内に呼び、チームドクターは脳振盪が疑われるか判断をする。主審の判断、またはチームドクターからの要請を受けた主審により、ハードボードの担架を適宜ピッチに入れる。
- ②チームドクターは、当該選手に脳振盪の疑いがある場合、自分の拳を頭の上に乗せ、主審に「脳振盪の診断を始める」旨伝える。
- ③それにともない、主審は時計の計測を始め、最長3分間を診断の時間として認める。
- ④チームドクターは、脳振盪評価用紙(Pocket SCAT2)等を使用するなどし、適切な判断を行う。
- ⑤脳振盪が疑われなかった場合にはその時点で試合再開とする。3分間を超えても判断できなかった場合、主審は当該選手を一旦ピッチ外に出し、プレーを再開させ、チームドクターは引き続きピッチ外で判断を行う。
- ⑥主審は、チームドクターの許可がある場合に限り、選手が競技に復帰することを認める。
- ⑦主審は、脳振盪の判断のために使用された時間を把握し、その時間を通常のアディショナルタイムに追加する。
- ⑧脳振盪の疑いがあると判断された場合は、脳振盪の追加の交代枠を使用し、選手を1名まで交代できる。(2021年シーズンより)
なお、画像検査も含めて総合的に脳振盪と診断された選手は、脳振盪からの復帰プログラム(表1)にもとづき、段階的プログラムを組んで復帰するようにする。
脳振盪からの復帰プログラム(表1) | ||
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ステージ | 内容 | 具体的な行動 |
ステージ1 | 活動なし | 体と認知機能の完全な休息。 |
ステージ2 | 軽い有酸素運動 | 最大心拍数70%以下の強度での歩行、水泳、室内サイクリングなど抵抗のないトレーニング |
ステージ3 | スポーツに関連した運動 | ランニングなどのトレーニング。頭部への衝撃となる活動は控える。 |
ステージ4 | 接触プレーのない運動 | パス練習などのより複雑な訓練で運動強度を強めていく。 |
ステージ5 | 接触プレーを含む練習 | 医学的チェックで問題がなければ通常練習を行う。 |
ステージ6 | 競技復帰 | 通常の競技参加。 |