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JFAインターナショナルコーチングコース 2008
2008年04月26日
概要/目的
アジア貢献とアジア全体のレベルアップ ナショナルトレセンコーチの国際力向上
第3回JFAインターナショナルコーチングコースが、2008年4月19日から25日まで、6泊7日でJヴィレッジ(福島県)とJFAハウス(東京都)で行われました。アジアの17カ国から26名が参加しました。小野剛技術委員長の講義から始まり、講義10時間、実技11時間、指導実践6時間および最終テストのすべてのセッションが英語で行われるこのコースは、JFAのアジア貢献の一環であると同時に、アジア全体のレベルアップ、そして講師のナショナルトレセンコーチの国際力向上も一つの目的になっています。
参加者の中には、日本の特にU-12年代の取り組みについて学びたいとの思いで参加している方々も少なくありませんでした。
英語があまり得意ではない参加者も数名いましたが、全員がJFA公認C級コーチライセンスを取得することができました。
名前 | 所属 | ライセンス |
---|---|---|
小野 剛 | JFA技術委員長 | JFA S級ライセンス |
中山 雅雄 | 本コースのスクールマスター | JFA A級ライセンス |
眞藤 邦彦 | 指導者養成ダイレクター | JFA S級ライセンス |
塚田 雄二 | 指導者養成サブダイレクター | JFA S級ライセンス |
布 啓一郎 | ユース育成ダイレクター | JFA S級ライセンス |
吉田 靖 | ユース育成サブダイレクター | JFA S級ライセンス |
山橋 貴史 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
木村 康彦 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
池内 豊 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
大橋 浩司 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
牧内 辰也 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
西村 昭宏 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
島田 信幸 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
今泉 守正 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
須永 純 | ナショナルトレセンコーチ | JFA A級ライセンス |
原田 貴志 | ナショナルトレセンコーチ | JFA S級ライセンス |
早川 直樹 | アスレティックトレーナー | JFA B級ライセンス |
河野 照茂 | 医学委員 |
内容/風景
われわれナショナルトレセンコーチも事前に十分に準備をして講義や実技の講師を担当しました。しかし、まだまだわれわれの英語の力は十分であるとは言えず、受講者を相当混乱させてしまったと反省しています。それにもかかわらず、常に明るく、そして少しでも日本のやり方や考え方を理解しようと努めてくれていたのが印象的でした。彼らのこのような積極性が講習会全体の質を高めてくれたと思います。
シリアから参加した受講者は日本での約6年間の生活経験があり、日本語がとても上手で、シリアサッカー協会のアカデミーの日本人コーチの通訳をしています。彼のおかげで今回は中東の国々からの参加者とはこれまでになくスムーズなコミュニケーションをとることができました。私が担当した指導実践では、細かいところでうまく英語で説明できなかった点を、私が日本語で話し、それを彼がアラビア語に訳し、さらにそれを英語が流暢な中東の参加者が英語へ訳すといった、まさにインターナショナルコーチング! すごい状況がありました。
11時間の実技、6時間の指導実践は身体的に非常に厳しいものであったと思います。20歳代の若い参加者はなんとかなっていたようですが、最高齢であった62歳のイランからの参加者は、ほとんどすべてのセッションで休むことなく動き続けていました。また国際試合を経験したこともある実技レベルの高い参加者が手を抜くことなくプレーしてくれたことによって、締まりのある実技のセッションであったと思います。ゲームや競争になると何としてでも勝とうと必死になる姿や心から、サッカーを楽しんでいることが見て取ることができました。これまでのインターナショナルコーチングコースでもすでに何度も経験していますが、特に中東からの参加者が自然に見せるゲームや競争での勝ちへのこだわり、さまざまな駆け引きには、今回もまた感心させられました。ゲームで見せるコーチたちの姿が、そのままその国のサッカーのスタイルであるように感じました。
ゴールを目指す(原田貴志)
原田貴志講師による「ゴールを目指す(突破)」。事前の説明はすべて英語で行われた。
ウォーミングアップも兼ねて、20m四方ほどのグリッドの中でドリブル。不意に原田氏から「Look around!」(周りを見て!)との声が響く。その一言で混沌としていた空気が引き締まった。その後、緩急を付けるドリブルなどを行ったのち、3カ所から順番にドリブルしてくる相手を、一人のディフェンダーが順番に対応する、という練習に入った。フェイントを使ってディフェンダーを抜く選手はもちろん、ポジショニングで一気にかわす受講者にも拍手が送られる。真正面に抜けなくても、機転を利かせて抜ければそれはそれで評価する、という姿勢が見られた。
ボールを奪う(山橋貴史)
山橋貴史講師による「ボールを奪う」。2人一組になり、手の届く距離を保ちつつサイドステップを繰り返す受講者たち。意外と苦戦していたのがスライディングの練習だった。天然芝や人工芝があれば習得は簡単だが、土のグラウンドではなかなかスライディングの練習はやりにくい。アジア各国の練習環境を物語っているともいえる風景だった。
切り替えを意味する「transition!」という言葉が連呼される中、ボールを失った直後の守備に力点が置かれた練習が続けられる。参加者たちは声を掛け合いながら、実習に取り組んでいた。
予定されていたカリキュラムが終了し、最後に山橋講師から「U-12の世代は、ゴールを守ることも大事だが、ボールを奪うのも同じくらい大事だ」との発言がなされ、山橋講師が行った指導が「ボールを奪う」をテーマにしていたことが告げられる。そうすると受講者の間から質問の声が上がった。
「練習の意味はどのタイミングで教えればいいのでしょうか?」
その質問を皮切りに活発に意見が飛び交う。「指導前がいいのでは?」「いや、気付かせてからの方がいい」。それぞれの意見が収束したタイミングで「ミニゲームの中で気付かせる方がいいが、ケースバイケースである」旨が伝えられた。
国内の講習会の場合、そこで納得して終わる場合が多いそうだが、彼らは違う。疑問点を率直に山橋講師にぶつけ、英語に母国語を交え、周りの参加者を巻きこんだ議論が始まった。そんな活発な意見の交換からも、受講者の貪欲な姿勢が現れていた。
受講者の様子
Ugyen Dorjiさん
2003年に引退するまで8年間ブータン代表チームでプレーした。2002年のFIFAワールドカップの決勝戦の日に、202位のブータンと、203位のモントセラトとの間で行われた「アザー・ファイナル」にも出場。ブータンでは育成年代において、今まさに草の根レベルの指導の重要性が認識されており、その一環としてこのコースに参加したのだという。「ブータン協会のみならず、アジア全体にとって意義深いことだと思います」と笑顔で話していた。
Mohamad Chahrourさん
レバノン協会から派遣されてきた現役のレバノン代表選手で、所属するAL-Ansarというクラブチームで下部組織の指導もしているのだという。AFCのライセンスコースにも参加した経験から、このJFAのコースの方が優れていると話していた。
Dominic Tacadina Gapiaさん
グアムから参加したドミニク・ガジアさんは、この「指導者の役割」が特に印象に残ったと述べ、「選手に対して、指導者は大きな責任を担っていることを痛感した。母国ではU-12年代を教えている。今回学んだことを、すぐに実行に移していくつもりだ」と、意欲を見せていた。
Hsueh-hua Leeさん
また、チャイニーズ・タイペイから参加した女性のリーさんは「とてもハードな日程だったが、すべてが良い経験になった。私はU-12年代の子どもたちを教えていますが、今回学んだことを母国に持ち帰って、子どもたちとサッカーを楽しみたい」と語っていた。
総括
日本の講習会での、指導者の方々の生真面目で一生懸命なプレーが日本の強みなのではないでしょうか。このスタイルを基本に、何をどのように組み合わせていくかが発展の鍵になると思います。
わずか一週間の短い期間でありましたが、17カ国からの参加者の方々およびわれわれ日本人スタッフの良好な関係はしっかりと築くことができたのではないかと思います。指導実践で困っている人へのさりげないフォローや、バイキング形式で十分な食事を配慮していただいたJヴィレッジやシェフへの感謝など、日本人が大切にしてきた「思いやり」、「察する」といったことが、われわれ以上にできることに驚きを持ったのと同時に身が引き締まる思いになりました。このコースでできたほんの小さなネットワークがこの先どんどん広がってくれることを願っています。いや、必ず広げなければいけません。
コースの期間中にどんどん高まっていった連帯感から、「みんなでアジアを強くしよう」という思いが強く感じ取ることができました。イランをはじめとし、またアジアの中でも決して強豪国ではない国々であっても、熱いマインドは持ち、サッカーの発展に貢献しようと努力しているのです。われわれも現在の環境に満足せず、努力しなければあっという間に抜かれてしまうのです。そして、アジア全体がレベルアップをし、その中での切磋琢磨から、世界の上位で食い込んでいける力がついていくと考えています。
今回のインターナショナルコーチングコースの受講者の多くは、すでに上位のライセンスを取得している指導者においても、「いろいろな講習会を受講したい、学びたい」という意欲を前面に出し、純粋に取り組んでくれたことが、われわれにとっては新鮮でした。
この基本的なあり方についてわれわれは忘れかけていることがあるのではないかと気付かされました。これもまた、インターナショナルコーチングコースから得られた一つの大切なものだと思います。講習会を開催すること、受講することに互いに慣れてしまうことなく、純粋な気持ちで学び合い、高め合うような環境を、常に持ち続けていたいと思います。
最後に、参加者がそれぞれ国に戻り、コースでの経験を生かして活躍し、そして彼らの仲間をまたこのコースへ送っていただけることを期待しています。
協会 | 名前 | 感想 |
---|---|---|
台湾 | Su-Jean Shieh | 講義では、「女子サッカー」が非常に印象に残っている。 実技では、「ゴールを目指す(コントロール)」が印象に残っている。 スタッフの皆さまに感謝いたします。お疲れ様でした。 |
Hsueh-hua Lee |
「指導者の役割」と「女子サッカー」が素晴らしく、興味が深まった。 |
|
グアム | Joseph Patrick Aurelio Laanan | すべてのインストラクターが慣れない英語に戸惑いながらも、講義・実技と熱心に指導してくれた。この点が非常に良かったと思う。また、取り上げるテーマが良く興味深かったが、もう少しビデオ映像を使っても良かったと思う。 |
Dominic Tacadina Gapia | 今回のコースのなかで「コーチング法」が非常にためになった。コースのなかで最も重要な講義だと感じた。また、「指導者の役割」の講義についても印象深く、選手に対し指導者は大きな責任を担っていることを痛感した。今後機会があれば、グアムサッカーでも課題となっている、U12年代の育成についても学びたい。 | |
パキスタン | Muhammad Karim | すべての講義・実技が印象的で楽しかった。 メンタル面など指導者としてのより深いパーソナリティに興味を感じ、知りたいと思った。 |
スリランカ | Hector Silva | 講義のなかでビデオ映像をもっと使ってほしいと感じた。特に戦術的・技術的なテーマのもの。 栄養学などの講義も是非受けてみたい。 |
Mariathas Berty Bannister | 今回のコースを通して、すべての指導者にとって一般的な基礎トレーニングが最も重要だと感じた。今後の要望としては、指導法に関するビデオを多く盛り込んでほしいということと、コースの期間をもっと長くしてほしい。 | |
シリア | Samer Akkad | 自分自身がGKの練習に非常に興味があり、GKに関する授業は非常に楽しめた。 今後より充実してほしい授業は、 「シュート」:これは、私のテーマだから 「ディフェンス」:練習が非常に楽しかったから 「パス」:シリアの子供たちのテーマだから 今回コースに関わった指導者・スタッフの皆さまに感謝したいと思います。 これからシリアに戻り、この経験を多くの子供たちに伝えていきたい。 |
イエメン | Ahmed Mohammed Gaser | すべての講義・実技が素晴らしく、非常に良い経験となった。 なかでも、「ゴールを奪う」が興味深かった。 |
協会 | 名前 | 性別 | 役職 | ライセンス | |
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1 | ブータン | Ugyen Dorji | 男 | ユースコーチ | AFC C級ライセンス |
2 | 台湾 | Su-Jean Shieh | 女 | CTFA A級ライセンス | |
Hsueh-hua Lee | 女 | CTFA B級ライセンス | |||
3 | グアム | Joseph Patrick Aurelio Laanan | 男 | ||
Dominic Tacadina Gapia | 男 | ||||
4 | 香港 | Wood Man Chu | 男 | コーチインストラクター U12コーチ |
AFC B級ライセンス |
Wai Keung Kam | 男 | コーチインストラクター | AFC B級ライセンス | ||
5 | イラン | Mahmoud Bidarian | 男 | ナショナルユースコーチ | AFC A級ライセンス |
Masoud Moghim | 男 | ナショナルユースコーチ | AFC A級ライセンス | ||
6 | レバノン | Mohamad Chahrour | 男 | AFC C級ライセンス | |
7 | マレーシア | Azmi Mohamed | 男 | ユースコーチ | B級ライセンス |
8 | モルジブ | Mohamed Athif | 男 | ユースコーチ | AFC A級ライセンス |
Ibrahim Shafiu | 男 | ユース育成コーチ | AFC B級ライセンス | ||
9 | ネパール | Raju Kaji Shakya | 男 | アカデミーコーチ | FAライセンス |
10 | パキスタン | Muhammad Karim | 男 | ユースコーチ | AFC C級ライセンス |
11 | パレスチナ | Bassam Battat | 男 | コーチ | |
Khalifa Khatib | 男 | コーチ | |||
12 | カタール | Abdulaziz Salim Al Jamaani | 男 | ユースコーディネーター | |
Yousif Ahmed Baker | 男 | ユースコーディネーター | |||
13 | スリランカ | Hector Silva | 男 | ユースコーディネーター | |
Mariathas Berty Bannister | 男 | ユースコーディネーター | |||
14 | シリア | Samer Akkad | 男 | アカデミー通訳 | |
15 | タイ | Amon Yuenyong | 男 | U12チームスタッフ | |
Sarot Jaroensuk | 男 | U12チームスタッフ | |||
16 | アラブ首長国連邦 | Hassan Alabdooli | 男 | U11チームスタッフ | B/C級ライセンス |
17 | イエメン | Ahmed Mohammed Gaser | 男 |