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[特集]GKへの理解 世界のGK育成 みんなで本物の目を養おう フランス・フックJFA GKプロジェクトアドバイザー/元オランダ代表GKコーチ インタビュー 前編
2020年06月10日
日本のGKのレベルをさらに押し上げるために日本サッカー協会(JFA)は昨年、百戦錬磨のメンターを招へいした。オランダのフランス・フック氏は30年以上にわたって世界のトップレベルのGKの育成とその価値向上に力を注いできた。経験豊富な指導者にGK育成論の基本を聞いた。
インタビュー日:2019年12月12日
※本記事はJFAnews2020年2月に
掲載されたものです
運にも恵まれた10代前半 16歳でプロデビュー
――はじめに、簡単な自己紹介をお願いします。
フック 昨年からJFAのGKプロジェクトアドバイザーを務めています。
10代半ばから現在に至るまでサッカーひと筋でやってきた私ですが、実は最初に打ち込だスポーツは柔道なんです。12歳のときにオランダの大会で優勝しました。その後、高校でバレーボールなど複数の競技にトライしましたが、最も情熱を注いだのがサッカーです。GKというポジションが好きで、当時は横っ飛びのセービングがお気に入り。柔道のおかげで受け身も板についていました(笑)。16歳でプロになり、12年間、GKとしてプレーしました。
――なぜ、初めてやったスポーツが柔道だったのですか。
フック 8歳年上の兄の影響です。最初は戸惑いもありましたが、いざ始めると自分の体の構造を知ることができましたし、体をコントロールできるようになりました。柔道は1対1のスポーツですから、相手とどう向き合って戦うかも学びました。
柔道はサッカーにも役立ちました。ストリートでサッカーをしたり、遊んだりしているとき、怖いと思うことがなくなりました。ほかの子どもたちはGKをやりたがりませんでしたが、私は喜んでゴールマウスに入るようなタイプでした。
――16歳でプロ入りとのことですが、オランダでは普通のことですか。
フック いいえ。正直、運も味方しました。私がアマチュアのチームにいた14歳のとき、ある試合の直前で急きょ、正GKに代わって先発することになったのです。試合でまずまずのプレーができ、注目されるようになりました。いくつかのクラブから声をかけてもらい、最終的にはフォレンダムというクラブを選びました。
フォレンダムでもラッキーなことがありました。移籍した当初はユースに所属する予定だったのですが、トップチームのGKの選手層が薄いということで加入早々トップチームに昇格しました。以降、オランダ代表以外、全ての年代別代表に選ばれるなど、それなりのキャリアを歩むことができました。
――1985年から指導者として歩み始めました。
フック けがで一線を退く際、ヨハン・クライフが「アヤックスにこないか」と声をかけてくれました。周知の通り、クライフはサッカー界では特別な存在です。断る理由などなくアヤックスで働き始め、そこで12年間指導にあたりました。
アヤックスではフットボールに関するあらゆることを学ぶと同時に、全てのタイトルを獲得しました。国内のタイトルはもちろん、UEFAチャンピオンズリーグも勝ち取り、95年には日本でトヨタカップ制覇を成し遂げました。
――輝かしいキャリアを歩まれてきたのですね。
フック GKを育成する機会にも恵まれました。有名どころではアヤックスのエドウィン・ファンデルサール(元オランダ代表)、マンチェスター・ユナイテッドではダビド・デヘア(スペイン代表)を指導しました。代表チームでは、オランダやポーランド、サウジアラビア代表のコーチとして活動、それ以外にも教書を執筆したり、講習会用映像をつくったりと、育成に多くの時間を費やしてきました。95年以降はヨーロッパ連盟(UEFA)のスタッフとしてUEFA GK-A級ライセンスのカリキュラムを作成するなど、インストラクターとしても活動しています。
チャレンジは生きがいそのもの
――日本に来ようと思ったきっかけを教えてください。
フック 選手のときから、二つのことに挑戦したいと思ってきました。一つは自分の職業を未来に生かすこと。28歳のときに指導者として歩み始めてから35年、極めて高いレベルで指導に携わることができました。
もう一つは、GKの価値を上げること。そのために教書やGKコーチングコースをつくるなどさまざまなことに挑戦してきました。しかし、同時にトップ・オブ・トップのクラブや代表チームで指導していると、どうしても自分が本当にやりたいことに時間を割けなくなります。そのため、サッカーの強豪国で働くことはやめようと決めました。自分がすべきことを自分でコントロールしたかったのです。
――「本当にやりたいこと」とは?
フック あらゆる指導者に向けた「GK's Way(GKが歩むべき道)」をできるだけ多くの人に広めることです。今回のJFAとのコラボレーションがまさしくそれにあたります。今回の仕事を受けるにあたって、18年11月に藤田俊哉さん(JFA欧州駐在強化部員)にお会いし、JFAのビジョンについて説明されました。新しいプロジェクトに取り組むのは楽しいですし、自分にとってチャレンジは生きがいそのものです。藤田さんの話を聞いた後、日本のことをもっと知りたいと思い、実際に日本を訪れ、JFAのGKグループがどのような施策を打っているか視察しました。日本の指導者が熱心に勉強している現場を目の当たりにすると同時に、彼らが優れたGKを輩出するためによりよい指導が必要だと思っていることも知りました。
――早くから話し合いの場を設けていたんですね。
フック プロの世界では常に結果を求められます。全てが短いスパンで行われがちですが、本来はそうあるべきではありません。物事に偶然はありませんし、成功するために長期的な視点を持たなければなりません。昨年のラグビーワールドカップでも証明された通り、日本にはそれができます。
劇的に変化したGKのトレンド
――日本では、「ヨーロッパではGKが人気」と思われています。事実ですか。
フック 残念ながら、実際はそこまで人気はありません(笑)。子どもがサッカーをするとなったとき、その子はGKではなく、ボールにより多く触わることができる中盤や前線でプレーしたがるでしょう。これが自然なことですが、子どもにポジションのこだわりがあるかというと、それもまた少し違う。そこで、オランダの多くのチームでは、6歳から10歳まではGKを順々に回します。
Frans HOEK(フランス・フック)氏の紹介
1956年10月17日オランダ生まれ
プロ選手として12年間プレーした後、GKとFK専門のアシスタントコーチになる。ヨハン・クライフ、ルイス・ファンハールなど世界トップレベルの指揮官のサポート役として、アヤックスやバルセロナをはじめとするクラブチームからオランダやポーランドといった代表チームまで、幅広く指導にあたった。
【指導歴】
1985年~1997年 アヤックス・アムステルダム
1997年 FCバルセロナ
2000年~2001年 オランダ代表
2003年 FCバルセロナ
2006年~2009年 ポーランド代表
2010年~2011年 FCバイエルン・ミュンヘン
2012年~2014年 オランダ代表
2014年~2015年 マンチェスター・ユナイテッド
2016年~2017年 ガラタサライSK
2016年~2018年 オランダ代表
2018年~2019年 サウジアラビア代表
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