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ブルーノ・ガルシアのフットサル道場 vol.1「柔道で学んだことは今でも役に立っている」
2019年08月19日
必見「フットサル道場」!
機関誌『JFAnews』で連載中のブルーノ・ガルシアフットサル日本代表監督のコラムをJFA.jpでもお届けします。フットサルの魅力や指導法など、フットサルだけでなく、サッカーにも通じるポイント満載です。
※本コラムはJFAnews2017年4月号に掲載されたものです
20歳のときに人生最大の決断
私がフットサルと出会ったのは、確か6歳のときだったと思う。故郷のラ・コルーニャ(スペイン)ではストリートサッカーが盛んで、サッカーやフットサルは人々の生活の一部だった。自分も毎日のようにボールを蹴っていたが、少年時代はフットサルの傍ら、JUDO(柔道)にも打ち込んだ。小学校に入学する前、母と自宅近くの道場に行ったことがきっかけで、柔道にのめり込んだのだ。
自分で言うのもなんだが、なかなかの腕前だった。得意技は双手背負い投げ。10代の頃は日本でいう全国大会のほかに国際大会にも出場した。指導者から「スペイン代表として、オリンピック出場を目指せる」とも言われていた。
フットサルへの情熱も抱き続けていた。柔道の遠征で家を空けることが続き、思い通りに時間が使えない中でも、暇を見つけてはボールを蹴っていた。遠征が終わって家に帰ると、近所で開催されていたマラソン・フットサルという(朝から晩まで行われている)イベントにも顔を出した。
20歳を迎えた大学1年生のとき、人生を左右する転機が訪れる。肩にけがを負い、手術を受けることになったのだ。オペの後は苦しいリハビリの日々。それ以上につらかったのが、けがによって肩の可動域が狭くなり、戦い方を変えなければならないということだった。
「今からスタイルを180度変えることはできるのか」。自分に問いかけ、悩んだ末にフットサルに転向することを決断した。そして、地元のセミプロのクラブ、オ・パウルーロに所属しながら大学に通うことになった。
気持ちは切り替わっていた。というのも、大学では教育学科に在籍しており、教員免許を取得したら団体競技の指導者になりたいと思っていたからだ。大学では、指導者になることをイメージしながら勉強した。サッカーの指導者資格の取得を目指しながらフットサルに打ち込み、クラブではフットサルの指導を学んだ。そして1998年、大学卒業時に所属先のオ・パウルーロから「監督のアシスタントとして働かないか」と打診された。これがフットサルの指導者として第一歩を踏み出すきっかけとなった。
アシスタント時代はクラブの育成部を担当する傍ら、高校の体育教師も務めた。多忙な日々が4年ほど続いた後、26歳のときにスペイン2部のフェネ・エソル・ボアンダンサに監督就任の話を持ち掛けられる。このオファーを受け、指導者として生きる決意をした。
道場からフットサルコートに活動の場を変えて20年以上が経つが、「フットサルへの情熱は全く変わらない」と話す
集団競技で重宝される個人競技のマインド
プロの監督になってから、スペインはもちろん、中国、ペルー、ベトナム、そして今回は日本とさまざまな場所でフットサルを指導する幸運に恵まれている。
国外で生活する上で、自分なりのルールを設けてきた。その土地の歴史や文化をスペインと比較しないということだ。自分の国ではこうだったという考え方を捨てなければ、訪問先の風土を理解することはできない。「郷に入れば郷に従え」ということわざの通り、異なる国や文化を理解しようとする姿勢が人間を豊かにすると思う。
もちろん、国が変わっても変わらないものがある。目標を達成するためには入念な準備が必要で、指導者は「十分に準備できた」と選手に感じてもらわなければならない。指導者にとって、引き出しが多いに越したことはなく、私がこれまでに多くの国で指導してきた経験が日本でもプラスに働くと信じたい。経験といえば、冒頭の柔道もそうだ。
柔道は個人競技なので、フットサルのようなチームスポーツとは全く関係がないように思われがちだが、そんなことはない。チームを形成するのは個人で、柔道のような個人競技は、他人に依存せず、自分の力だけで物事をやり切る力や、言い訳しないことの大切さを教えてくれる。独立心や、やり切る力はチームスポーツにおいて「違い」を生み出す貴重な要素で、それが分かっただけでも、柔道で学んだことは今でも役に立っていると言える。
日本とは縁がある(と思っている)。そこで指導に携わる幸運を感じながら、今後はフットサルの楽しさを伝えていきたい。読者の皆さんに少しでもフットサルに親しみを持ってもらい、それに没頭できるように、余すところなくその魅力を語っていこうと思う。
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