選手・指導者向け情報
AEDを使用した救命例について
2015年5月4日、都内で開催されていたフットサル大会での試合中、相手チームの選手のシュートしたボールがディフェンスの選手の前胸部に当たり、心臓震盪(しんぞうしんとう)を起こしました。
しかしながら、周囲の方々の救命措置により、一命をとりとめたというニュースがありました。
チームのトレーナーはAED講習会の受講経験があり、施設にはAEDが設置されていたこと、周囲の人たちの協力があったこと等が一人の生命を救った要因と言えると思います。
心臓震盪とは?心室細動とは?
今回、フットサルの試合中にボールがプレーヤーの前胸部に当たり、心臓震盪を起こして意識を失い倒れてしまいました。
このような状況に陥った心臓震盪とは、特定のタイミング(心臓収縮のための心筋の興奮が終わる直前で、心電図上のT波の頂上から15-30ミリ秒前)で胸部に衝撃が加わった時に、心室細動という心臓の筋肉が痙攣している状態となり、心臓が収縮できずに血液を送り出せない状態、すなわち心臓のはたらきが停止している状態です。
心臓震盪は、硬式野球やラクロスなどの高硬度のボールを使用する球技スポーツに多いとされていますが、今回のようにフットサルでも起きる可能性があること、またサッカーでは、ボールの衝撃だけではなく相手の肘等による衝撃により起きる可能性があることも知っておく必要があります。
心臓震盪の対処法は?
心臓の血液を全身に送り出す場所(心室)がブルブル震えて(細動)、全身に血液を送り出せなくなった状態である心室細動を起こすと、やがて心臓が完全に停止し死亡してしまいます。心室細動を起こすと、1分経過するごとにその救命率は7~10%ずつ低下し、5分を超えると生存率が50%を下回り、後遺症も残りやすくなります。そのため、この危険な不整脈である心室細動をいかに早く治療(除細動)するかが重要なポイントであり、その唯一の方法が自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator: AED)による除細動なのです。
AEDが現場に届くまでは、一次救命処置(Basic Life Support: BLS)に沿った対応、特に胸骨圧迫による心肺蘇生法が重要です。救急隊が到着したら、状況を的確に伝え病院での精密検査や治療を受ける必要があります。
AED設置の必要性、心肺蘇生法の重要性
心臓震盪は、心臓に全く異常のない健康な人でも起きる可能性があります。また、心臓震盪だけではなく、他の原因による心臓性突然死のリスクは “限りなくゼロに” すべきです。そのためにも、多くの人が集まるところにはAEDの設置が必要であり、より多くの方がAEDの使用法を周知する必要があります。
AED設置の普及、サッカーはもちろんのことスポーツ時のAED携行、不測の事態においても常に沈着冷静に救命救急活動を行えるよう医療スタッフのみならずスポーツ参加者さらに一般の人々が定期的に救急救命講習を受講することも大切です。すべてのスポーツで、すべてのスポーツ参加者が、スポーツを安全に楽しむことができるように念じてやみません。
JFA医学委員会委員長 池田 浩
委員 島田 和典