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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第90回 市川重明 カンボジアサッカー連盟 テクニカルダイレクター

2024年08月30日

アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第90回 市川重明 カンボジアサッカー連盟 テクニカルダイレクター

着任から日々の生活

2024年4月よりカンボジアサッカー連盟のテクニカルダイレクターとして着任しました。カンボジアへの渡航は2014年の岐阜県U14引率以来となり、約10年ぶりでした。この10年でカンボジアの街の様子はずいぶん変わったという印象です。プノンペン市内は高層ビルが増え、日本食レストランもたくさんあります。信号も増えました。バイクの5人乗りは見かけなくなりましたが、4人乗りは健在です(3人乗りまではOKとは聞きました)。また、朝夕のラッシュ時には隙間があれば、我先にとばかりにバイクやトゥクトゥクが割り込んできます。交差点では一旦停止せずに入ってくる車、バイク、トゥクトゥクもあり大変です。これまで無事に過ごせていることに感謝です。

テクニカルダイレクターとしての活動:ユース育成について

テクニカルダイレクターとしての私の役割は多岐にわたります。その中で特にユース育成や指導者養成に力を注ぎ、国内サッカーのレベルアップを図ることと東南アジアでの競争力を高めることが私の大きな仕事の一つとなります。そこで私は4月から6月にかけ育成や指導者養成の現場に足を運び、自分の目で現状を確かめるため、様々なコーチや関係者に会い、話を聞き情報を集めること、また出来るだけ私の名前と顔を覚えてもらうよう全国を回りました。こうした活動ではFIFAが提供しているテクニカルダイレクター向けの研修が大変役に立っていると思います。

カンボジアには大きく分けると以下のような3つのユース育成の現場があります。

・カンボジアのNational Training Center(通称Bati)は2013年に設立されました。この施設はU15、U18の選抜された選手約50人が寝食を共にしながら学校に行き、トレーニングする施設です。ここにはJFAより行德浩二氏がU-18代表監督兼FFCアカデミーU-18監督として派遣されています。

・学校の協力により全国25の州にアカデミーが完成しています。ここでは男子U18、U15、U13、女子U15の4カテゴリーが各州のアカデミーコーチの指導のもと、日々活動しています。

・カンボジアプロリーグ(CPL)に所属しているチームのアカデミーもあり、それぞれが寮を作り練習をさせていたり、通い型でトレーニングをしたりユース育成に力を注いでいます。また、CPLアカデミーを中心に今年度よりCambodian Youth League U19とU16も始まりました。

(その他に教育関係機関やクラブが独自に行うリーグ戦や大会などもあります。)

これら3つの育成環境はどれも素晴らしい想いと理想に基づいていますが、一方で課題も多くあります。

特に地方の州ではユース年代(12歳から18歳)の公式戦の数が極端に少なく、年間を通じて継続的にチームを存続させ、子どもの活動を支えるコーチやチームが不足していることが要因と考えられます。更に州アカデミーの指導者でBライセンスを保有しているコーチも少ないことも分かってきました。学校の先生で子ども達にサッカーを教えたいという先生もいるのですが、人材を活用しきれていません。しかし、子ども達のサッカー人気は高く、裸足でサッカーをしている子どももよく見かけます。

今後に向けて

このような現状を改善し、これら3つの育成現場を生かして発展させていくことが当面の課題となります。技術部内でも会議を重ね、選手と指導者の数を増やすこと、またそのレベルを上げなくてはいけないという結論に至りました。キャッチフレーズは『Quantity first, Quality next』です。

質はどうでも良いということではありません。しかし、技術に関わるすべての項目、つまり選手、チーム、指導者講習会(ライセンス、リフレッシュ等含む)、公式戦、理解者、協力者などの数を増やす取り組みを第一優先にしようということです。公式戦を増やすために各州リーグを発足させ、全国規模のリーグ戦に発展させていくこと、リフレッシュ研修会を増やしコーチのスキルアップを図り上級指導者を増やしていくことを目指して取り組んでいきます。指導者養成の内容や運営方法も見直しを図る予定で準備を進めています。おそらくこれらに付随して相当やらなければならないことがあると思いますが、カンボジアの仲間と協力し、楽しみながら来年に向けて計画を練っている最中です。

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