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キャプテンはチームのウェルフェアオフィサー ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.91~
2020年01月24日
最近のサッカー競技規則。キックオフから直接ボールを後ろに蹴ってよくなったり、ゴールキックからペナルティーエリア内にいる味方選手にパスしてよくなったり、これまで「どうしてこんなに制約があったの?」と疑うくらい、理にかなって、分かりやすくなった。
競技規則改正を司るのは、国際サッカー連盟(FIFA)ではなく、国際サッカー評議会(IFAB)。英国4協会(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)とFIFAのメンバーによって構成される。何かお堅い感じもするが、世界が求めるサッカーのために競技規則などを見直している。
IFABが行っているイニシアチブ(戦略)に「PLAY FAIR」というものがある。言葉通り、イニシアチブを通じて、よりフェア(FAIR:公平・公正)やインテグリティーの向上を求め、将来に向けてFIFAワールドカップのみならず、身近な、それも年齢や宗教、文化、障害、性別等にかかわらず、サッカーを分かりやすく、また楽しめるようにしようとしている。
そのイニシアチブの一つに、キャプテンの活用がある。競技規則には「キャプテンは何ら特別な地位や特権を与えられているものではないが、そのチームの行動についてある程度の責任を有している」と記されている。権利も何もないが、責任だけはあるというのも理不尽。しかし実際のところ、キャプテンはただアームバンドを付けて、キックオフ前のコイントスに参加するだけではない。その責任を用い、さまざまに機能する。特に相手選手や審判員を巻き込む事態や物議を醸す状況では、味方選手を落ち着かせ、またポジティブな影響を与えられるように行動する。また、選手の安全を守ったり、チームをうまく機能させ、楽しくプレーできるようにすることも大切な役割だ。
チームがぎくしゃくしてプレーが空回り、ラフなプレーも多くなってきたのを察知し、チームメートに落ち着いてプレーするよう、ファウルをしないように指示する。笛が鳴って、主審がペナルティーマークを指した。ファウルではないと感じているGKが主審に詰め寄ろうとするとき、GKに留まるようにと、前に入って制止する。主審と冷静にコミュニケーションをとることもある。決して異議ではなく、判定をリスペクトし、チームメートを納得させるのだ。
サッカーは熱いスポーツ。一発触発の場面も起こる。両チームが対立するような状況であれば、主審の協力を得つつ、相手チームのキャプテンとその場を収めることも必要だ。クールダウンさせる、あるいは試合がヒートアップしてきたのを察知し、さまざまに“間”をとるようにすることもあるだろう。まさに、試合というピッチ上の社会において、チームの代表として統率し、チームの安心・安全を守り、より快適にサッカーを楽しむ環境づくりをするチームのウェルフェアオフィサーではないだろうか。
一方、審判員も個々の選手との良い関係づくりを大切にしつつ、チームのウェルフェアオフィサーであるキャプテンとのコミュニケーションで試合中に発生するさまざまな問題を解決し、選手が安全で楽しく、また試合が円滑に運営できるようにする。選手がサッカーに集中し、審判員の判定も受け入れ、リスペクトあるフェアプレーをできれば、サッカーのイメージは大きく向上する。
決して大人の試合だけではない。U-18であっても、U-12の試合においてでもだ。キャプテンに指名したとはいえ、そんなことを小学生の子どもに任せて良いのか。イエス!監督は、キャプテンがキャプテンシーを発揮してチームを統率するように求め、審判員も小学生であろうと1人の選手、かつチームの代表として対応する。年齢に応じてできないこともあるだろう。そんなときは援助すれば良い。キャプテンを任された選手は、その場を対応することやチームのことを考え、審判員や監督とコミュニケーションをとることで、一段と成長するに違いない。子どもの成長を考え、日替わりのキャプテンも良いかもしれない。
日本サッカー協会(JFA)のウェルフェアオフィサー(WO)は3つある。各都道府県サッカー協会(FA)や各種連盟などの組織を通じて、サッカー全体のウェルフェアを確保するWOジェネラル、試合現場のウェルフェアを確保するマッチWO、各クラブにおいて監督や指導者、選手、チーム役員、保護者などと調整してクラブのウェルフェアを推進するクラブWOである。
19世紀に現在のサッカーが誕生した。当時のキャプテンは、チームの統率からファウルが起きたときの対応まで行っていたという。基本、現在のサッカーでも同じだ。
試合やクラブでのトレーニング、はたまたオフ・ザ・ピッチの生活においても、明日もサッカーをしたい、見たい、応援したいという環境づくりが大切だ。ウェルフェアオフィサーであるキャプテンにその一躍を担っていただきたい。
【報告者】松崎康弘(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)
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