自己管理意識を促すメディカルサポート 〜JFAアカデミー福島男子WEST スタッフ通信Vol.42
2021年08月18日
JFAアカデミーでは「常にどんな時でも(日本でも海外でも)ポジティブな態度で何事にも臨み、自信に満ち溢れた立ち居振る舞いのできる人間の育成」というフィロソフィーを掲げ、真のエリートを目指して日々活動しています。
JFAアカデミースタッフ通信では選手たちの日常の様子や、日々の活動を詳しくお伝えしています。今回JFAアカデミー福島男子WESTのレポートを担当するのは安藤貴之トレーナーです。
JFAアカデミー福島U-18アスレティックトレーナーの安藤貴之です。今回はユースチームにおけるメディカルサポートについてご紹介します。
現在、JFAアカデミー福島WESTのユースには44名の選手が所属しています。選手は全員寮生活をしていることから、トレーナーは練習時のみならず、日常の寮生活まで全般的にメディカルサポートを行っています。そこで今回、現在アカデミー福島WESTで取り組んでいるメディカルサポートをご紹介したいと思います。
選手たちは体調管理ソフトを使い、日々の起床時と練習時のコンディション状態を入力しています。このような取り組みを通して自分の体の変化に関心を持たせると同時に体調管理を習慣化できるよう促しています。例えば、起床時の体重の変化は摂取エネルギーと消費エネルギーの関係、練習前後の体重変化は運動による脱水状況の把握に役立ちます。また心拍数は疲労、尿や便の状態は脱水状態を推察する手がかりにもなります。身体が発する情報の意味を理解しそれに対して適切な対応が行えるような指導を心がけています。また、取り組みの中で大切なポイントを選手たちにまとめてもらい食堂に掲示するなど教育的な配慮も行っています。
アカデミー福島に入校した中学1年の4月から毎月体組成の測定を行っています。中学生は身長が大きく変化しますが、高校生は筋が発達する時期であり筋肉量の推移を観察しています。またユースになると、筋力、パワー、スピードや持久力などフィジカル要素に対する要求度が高まります。そのため、体脂肪の多い選手には各週で体脂肪の測定も行い、食事への配慮(練習負荷・内容に応じた摂取量の調整、脂質摂取を控えるなど)や普段の練習で運動量(エネルギー消費量)を増やすなど、自主的な取り組みを促しています。
成長期における内科的な体調管理として貧血への対応を行っています。成長期は体の発達が著しく鉄の需要量も増加するため貧血になりやすくなります。またアカデミー生は普段から練習で激しい運動を行っており、より貧血になりやすい状況にあるといえます。貧血になると運動パフォーマンスが低下するだけでなく集中力の低下、倦怠感、免疫機能の低下など日常生活にも影響が及びます。そのため貧血の評価を2月と8月の年2回行い、貧血であることが確認された場合は医師の指示に従い、その程度によって食事への配慮(鉄、たんぱく質、ビタミンCを含む食品の摂取)や鉄剤の服用により改善を促しています。また、取り組み開始から3ヶ月後に再評価(採血)を行い、その経時的な変化を確認すると共にその後の対応を再検討しています。
練習により外傷や障害が発生したときは、先ずは怪我に対する応急処置(RICE処置)を自身で行わせています。自己処置によっても練習に支障となる症状が続いたり、受傷初期に強い症状(痛みや腫れなど)を呈している場合はトレーナーが確認を行うようにしています。状態によっては病院を受診し、診断結果に基づいて医師と対応協議しながら加療やリハビリを進めます。
障害予防やリハビリから復帰後の再発予防に対する取り組みは、練習1時間前から自主的に行わせています。怪我により低下した運動機能の回復や可動域の改善、体幹、股関節などの体のコアとなる筋力の強化、片脚での平衡感覚など各々の課題に合わせて取り組ませています。
このようなメディカルサポートにより、成長期の選手たちのパフォーマンスや傷害、体調への配慮を行い、自己管理意識が高まるような教育・指導を心がけています。
(起床時) | (練習時) |
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体重、脈拍、体温、疲労度、睡眠の質 |
体重(練習前・後)、水分摂取量 トレーニング施行時間、トレーニング強度 パフォーマンス、集中力 |
表 体調管理ソフトでのコンディション入力項目